CVRの向上 ― それはユーザーを捕まえる仕掛け
最後に、CVR向上の秘訣について考えてみます。筆者は、それは媒体構築者が良い意味で「仕掛けを作ること」だと思うのです。つまり、結果として申し込み率(購入率)が高ければOK、ではなく、意識して高くするための「捕まえにいく」手法を構築することだと考えているのです。わかりにくい話ですので、ちょっと例え話で面白おかしく説明してみます。
日本には「スズメ採り」という仕掛けがあります。典型的なものでは、ザルを地面に伏せて中にエサである米粒を置き、片端をつっかい棒で少しだけ持ち上げておきます。スズメが米粒に釣られてザルの真下に入ってきたときに、つっかい棒に結んだひもを思い切り引っぱることで、ザルがスズメの上にかぶさって逃げられなくなる…という仕組みです。
このシステム全体をWebサイトだとします。米粒は商品そのもの、スズメは潜在顧客です。彼らは米粒を見て、半信半疑ながら近づいてきます。このとき、ザルの置き方、つっかい棒の高さなどは、高からず低からず、バランス良く配置しなければなりません。高すぎると棒が目立ちすぎますし、低すぎると米粒があることがわかりません。これらが「デザイン」であり、スズメを呼び寄せるために「エサがここにあるよ」と周囲のスズメにアナウンスしたり、庭を掃いたりすること(=バナーやリスティング広告、キャンペーンからの誘導など)が、いわゆるAcquisition施策だと思ってください。
さて、スズメがその身をザルの下に入れ、米粒をついばむ…このとき、タイミングよくつっかえ棒にくくってあるヒモを引くと、棒がはずれて、ザルの中にスズメが閉じこめられる…これでConversionの完成です(捕まえたスズメはリリースするのがマナー!)。

ここで言いたいのは、ザルと米粒をただ置いておくだけでは、スズメが自ら入ってくれることは絶対にない、ということです。スズメは常に賢いですから、彼らが自ら「ザルに入ってみたいな」と思える雰囲気と明確な目的、誘導指示がなければ、絶対に入ってはくれません。一日中ひもを握りしめて「待つ」だけでは、何も成果は得られないのです。
CVR向上ということは、実はこのレベルの話。「待つ」のではなく「捕まえる」だけのことなのですが、残念ながら、多くのWebサイトはこの意識が希薄なように見えるのです。
筆者が結論めいたことを言うとしたら、こうなります。
「WebサイトにおいてCVRを高めることは、最後に自ら逃げようとする潜在顧客をつなぎ止め、商品を味わってもらうために、捕まえる仕掛けを作ることである」
「捕まえる、なんて物騒な!」と思われるかもしれませんが、実は深層心理では、こういう仕掛けをユーザー側も望んでいるものです。その商品が高額であればあるほど、決定には時間が掛かりがち。だからこそ、自分が迷っているときにザルが落ちてきて、背中を押してくれれば、ユーザーだってすっぱり割り切れるものなのです。