デジタルマーケティングに熱心な企業ほどぶつかる「壁」
フロムスクラッチは2010年の創業から、マーケティングコンサルティング事業を行ってきた。この5年間で約5,000社に対し調査やヒアリングを実施したところ、デジタルマーケティングに力を入れる会社であるほど、ひとつの課題に直面していることに気付いたと、同社代表取締役社長 安部泰洋氏は語る。「デジタルマーケティングに真剣な会社ほど、様々な施策やツールを運用している。結果としてデータの読み取りなどの作業に追われ、クリエイティブな仕事に時間を割けなくなっています」(安部氏)
なぜ、このような状況に陥ってしまうのだろうか。安部氏は、昨今のデジタルマーケティングが抱えるいくつかの問題を指摘する。
ひとつが“どの施策が収益につながっているのか分からない”ということだ。もちろん、多くの会社が各チャネルやキーワードごとの「CPA」は把握している。しかし、そのデータからはあくまで「コスト効率」しか分からない。収益を生む施策を特定するには、別データも合わせた分析が必要だ。だが、マーケターが利用するツールは、販売促進や顧客管理など多岐に渡っている。各種のデータ解析は難しいうえに、時間も要する。加えて、ツールの使用法や設定方法も複雑だ。「結果として、マーケターは逼迫しているのです」(安部氏)
各ツールの分断がCPA至上主義を生んでいる
そもそも、現在のマーケターはどのような施策を行っているのだろうか。利用しているツールも含め、オンライン上で収益を生むまでのステップを、安部氏は次の3ステップに分けて整理する。
- 集客施策
- 販売促進
- 顧客管理
集客においてはSEOやDSPなどの施策を投じ、その結果をGoogleアナリティクスなどのアクセス解析ツールで分析する。また販売促進もメールマガジンやセミナーといった施策を打ち、CRMツールなどで顧客管理を行う。
そして現在、各施策やツールが分断されて、データ間の断絶が起きてしまっている。それ故に、施策について間違った評価を下してしまうリスクもあるという。テレアポ業務を行う会社を例に挙げて説明しよう。
社員Aのアポ率は10%、社員Bのアポ率は1%というデータが出た。多くの場合、社員Aを高く評価するだろう。しかし、売上額に目を向けた時に社員Aの売上は100万円で、社員Bの売上は1,000万円だったとしたら、評価はどうなるだろうか?
このような早計な判断が多くの企業で行われているのだと安部氏は指摘する。「各ツールが分断され、データ間の断絶が起きているため“CPAは下がっているのに、売上は上がらない”といった問題が見えても原因分析ができない。結果としてCPA至上主義になっているのです」(安部氏)
日本企業のマーケティングに必要なのは“最新鋭の体重計”
課題を抱える日本企業のマーケターに足りないものは何だろうか。今度は「ダイエット」を例に考えてみよう。
大学時代は体重が65キロだったAさん。就職後の暴飲暴食がたたり、80キロまで太ってしまった。そこで、毎月3キロ体重を落とすことを目的に、「食事制限」「サプリメント」「運動」に1万円ずつ投資することにした。結果、目標通り1か月後に3キロ減に成功した。
だが、ここで考えてほしい。はたして、3つの施策すべてが有効だったのだろうか? Aさんが「最新鋭の体重計」を使って効果測定を行ったところ、減量の理由はジムでの運動だけだと判明した。他の2策に効果はなかったということだ。そこで、Aさんは「食事制限」や「サプリメント」に投じていた2万円をカットし、2ヶ月目からはジムだけに投資をすることにした。つまり、ROIの向上に成功したわけだ。「日本のデジタルマーケティングには、このような最新鋭の体重計が必要なのではないでしょうか」(安部氏)
ROIが1.56倍に向上、「B→Dash」のポテンシャル
この“最新鋭の体重計”を実際に使い始めている企業が既に存在する。ECサイトでアパレル販売を行うA社(社員数:約80名)は、SEOやDSPなどのマーケティング施策に平均で毎月1,500万円の予算を投下していた。しかし、何が収益に貢献しているのか分からなかったという。A社が課題解決に活用したのが、フロムスクラッチが開発したプライベートマーケティングプラットフォーム「B→Dash」だ。
※プライベートマーケティングプラットフォーム(PMP):集客施策から販売促進、顧客管理までデータを一気通貫で一元管理し、それぞれの施策の収益インパクトを可視化するプラットフォーム。マーケティングにおける次の一手の再投資効率を最大化させるマーケティングテクノロジーツールで、近年新たに登場した話題の概念。
「B→Dash」はアトリビューションからLTVまで、マーケティングデータを統合的かつ一気通貫で、分析・管理が可能。そして、接続性・網羅性・利便性という3つの特徴を持っている。
ひとつ目の特徴が、集客・販促・顧客管理という3ステップの活動結果を、一気通貫で確認できる「接続性」だ。LTVが年間10万円の顧客はどのような人物なのか、20代女性はどの程度LTVを稼いでいるのか、といったデータと、最も獲得効率の良いプロモーションチャネルを一気通貫して分析を行うことで「ベストプラクティス」が抽出できる。今まで分断されたCPAやLTVといった管理指標を、ワンプラットフォームで管理できるのが最大の利点だ。
また、分断されていた各種ツールをひとつのプラットフォームで利用できる「網羅性」も兼ね備える。一般のマーケティング部門が利用するツールが持つ機能を多く実装しているため、ツールが増えることによるコストアップや作業負担も発生しない。さらに、追うべき指標を見やすくレポートに落とし込む「利便性」も配慮されている。
A社の場合は、まず社内の基幹システムとのデータ連携を行った。API機能を使って基幹システムと「B→Dash」と繋げることで、施策やチャネルごとに収益貢献度が見えるようになった。次に、リソースを投下すべきチャネルを明確にしたところ、ROIは1.56倍にも向上したという。
3週間の作業が数分、システムコストが半分に
「B→Dash」を活用して、マーケティングの効果を高めた例はまだある。全国で約100教室のスクールを運営するB社は、事業係数(集客成果および無料体験申込数)を経営会議で定期的に確認していた。そのためマーケター2名は、複数のシステムや各教室から入手したデータをローカルで管理し、3週間かけて集計をする必要があったという。システムやツールの利用には月110万円以上かかっており、業務の手間や利用料の抑制が強く望まれていた。
そこで「B→Dash」を導入したところ、データの収集・統合の作業が不要になった。極端に言えば、3週間分の作業が、システムを立ち上げて確認するだけで済むようになったわけだ。システム等の利用料も50万円と半減。顕在コストの削減に加え、業務効率という「潜在コスト」も改善できた。
また「B→Dash」は企業・担当者ごとに管理画面をカスタマイズできる。例えば「細かいCPAより、全体予算に対する投資対効果が分かればいい」という経営者もいれば、「施策別に投資対効果を把握したい」担当者もいる。各社、各担当者が最も見たい指標を表示することで「見やすさ」を追求できるのだ。
例えばB社は「B→Dash」を経営者向けにカスタマイズした「エグゼクティブサマリー」を用意した。これにより、経営者は自身でデータのチェックが可能となった。結果としてB社では、不要な会議が減り、コミュニケーションコストの削減にも成功した。
「B→Dash」は、デジタルマーケティング時代のベストパートナーとして、事業の成長に伴走しているという。「変化の激しい現代において、プライベートマーケティングプラットフォームのような、事業の成長にコミットする新時代のツールがまさに求められているのです。」(安部氏)
最後に、安部氏は「マーケターは『作業員』から『戦略家』へ変わるべき」だと語った。マーケティング先進国のアメリカでは、CMOの設置率は47%にも上るという。一方、日本の場合はCMOを置く企業は非常に低い。ここからも、マーケティングの重要性が低く見られ、マーケターは作業に忙殺されている、という現状が推察される。「マーケターが忙しいと、次の一手は生まれません。煩雑な作業は機械に任せる。これも一つの戦略ではないでしょうか」(安部氏)