今、求められるデータドリブン型の“KAIZEN”的なアプローチ
わずか創業2年余りというスタートアップでありながら、すでに800社を超える企業のサイト改善を行ってきたKaizen Platform。A/Bテストのソリューションだけでなく、グロースハッカーと呼ばれるデザイナーやエンジニア約1,400名を束ねたネットワークを有し、社内にリソースがない場合でも、継続的なサイト改善を提供している。
「今は多額を投資して大規模なリニューアルを行っても、それをやっている間に、新しいデバイスが次々に投入されて、当初の想定がどんどん覆されていく。ロングタームの投資は当たりづらくなってきている中で求められているのは、消費者の反応を試しながら、何が当たるのかを細かく検証していく“KAIZEN”的なアプローチなのではないでしょうか」と須藤氏は語る。
スマートフォンアプリやソーシャルメディアなど流入経路が多様化し、PCだけでなく画面サイズの異なるスマートフォンやタブレットなどにも最適化が求められる中で、Webマーケティングの限界を感じているマーケターも多いのではないか。これらの「マーケティングの不都合な真実」について、Kaizen Platformで蓄積されたデータをもとに検証を進めていこう。
不都合な真実1〜予算を2倍にしても効果は2倍にならない
「予算を2倍に増やすから、効果も2倍にしてくれ」と求める企業は多いが、現実では“1顧客獲得コストの原則”というものがあり、単に予算を増やしても、必ずどこかで獲得効率は落ちてしまうことがわかっている。これを打開するためには、「LTVを上げて獲得単価を上げる」か「 CVRを上げて全体のカーブを下げる」かの2択しかない。
不都合な真実2〜予算の4割はCVの最後の20%にあてられている
各施策に対する予算の使い方とCV獲得数をグラフ化してみたものであり、青色の面積がマーケティング予算となっている。つまり、どの企業も平均すると予算の40%は、20%のCVに使われていることがわかり、逆に言うと、仮に同数のCVを獲得するためにCVRを20%改善すると、予算を4割削減するインパクトが与えられるということだ。
不都合な真実3〜CVRを改善するとマーケティング予算はなぜか増える
Kaizen Platformでは、CVRなどお客様のゴール改善率として、平均24%の実績をあげている。
「CVRを改善したらマーケティング予算は削減できるのか」と問われることが多いので検証したところ、実際にはマーケティング予算を本当に削減した企業はゼロ。ほぼすべての会社で予算は増える傾向にあることがわかった。獲得効率が向上し、売上から見る投資インパクトが明確化できたためだろう。
「マーケティングという言葉には“集客”の文脈が強いが、我々が提供しているCVRを改善する“KAIZEN”的なアプローチと組み合わせながら、費用対効果を最大化させることが重要だと感じています」(須藤氏)
なぜグロースハックが求められるのか
消費者の変化が早い理由のひとつとして、iPhone6の爆発的な大ヒットが挙げられる。
画角が大きく両手で使うUIと、従来の片手で使うUIは、変えなければならないことは言うまでもない。デバイスによって大きく異なる“タッチできる範囲”を意識したボタンの配置や、ゴールデンゾーンを考慮したUIの設計が必要なのだ。
また、ほとんどの企業はPCサイトからスマートフォンサイトに変換しているだけだが、このやり方ではスマートフォンサイトがコンテンツ過剰になっているケースが非常に多い。成功している企業では、スマートフォン用にコンテンツを減らして、リライトするという作業をしている。
スマートフォンではじっくり読むことがないため、直感的になればなるほど良く、少ない情報量でも“いかに早く判断してアクションに繋げられるか”を追求しなければならない。
「これらのトレンドの変化はスピードが速いので、“いかにミートさせ続けるか”ということが重要になる。集客に依存したマーケティングだけでは、限界がある。これこそが、グロースハックがホットな領域になっている所以だ」と須藤氏は説く。
グロースハック成功の秘訣は“早く×たくさん”
グロースハックの重要性は理解したが、成功するためのキモになるものは何なのか。須藤氏は2つのポイントを挙げた。
CVRの改善は成長率に複利的に響いてくることを理解している
たとえば10万人のユーザーがいるサービスで、週次の成長率が2%だった場合と3%だった場合では、1年後には1.7倍もの開きが出てくる。したがって、グロースハックを始める時期が早ければ早いほど効果的だということだ。
打席数(改善の手数)をとにかく増やす重要性を理解している
成功していく企業は、シンプルにたくさん改善しているところだ。数千回のテストをすべてプロットしてみると、たくさんのチューニングをかければかけるほど、パフォーマンスが良くなることがわかる。
マーケティングもコラボレーションの時代に
さらに須藤氏はグロースハックの必要条件に次の3つを挙げる。
- ツールを使いこなすための十分なリソースがある
- 機能の多さを比較するのではなく、目的に応じた適切なツールを選んでいる
- ツールを活用するための効率的なワークフローがある
そして須藤氏は、不都合な真実の4つ目として、マーケティングツールがマーケティングにおける課題をなんでも解決してくれる魔法の杖ではないことを挙げる。
「マーケティングツールは、マーケティングの本質的な問題を解決してくれはしません。解決してくれるのは、限定された一部だけ。魔法ではないので、使う側の資質が問われることを理解していただいた上で、どんな体制を組んで、どんなPDCAのサイクルを作っていくのか、入念な打ち合わせをさせてもらいます」と語った上で、「当たり前のように聞こえると思うが、これらがきちんとできている企業は、感覚値で3割ほどしかいない」
グロースハックの成果は、CVの数値という目に見える結果として表れるが、これはあくまでも氷山の一角であり、実際には見えないところにある「組織(文化・風土)」「意識・メンタリティ」「行動」といったものが、重要な下支えとなっていることを、忘れてはならない。
スピード感のあるアクションが鍵となるグロースハックでは、現場に裁量権がなく施策の意思決定に時間がかかる組織は足かせとなる。また、数々のトライ&エラーを繰り返しながら改善していくため、新しいチャレンジを容認してくれる風土も必要だ。加えて、トップダウンで政治色が強い組織では、数字に基づいた検証に支障をきたしてしまう。
「継続的な改善のキモは、“何が問題で、何を変えなければいけないのか”ということをきちんと伝えながら、現場をエンパワーし続けることです。マーケターがひとりで奮闘する時代は終わった。グロースハックが成功する企業では、マーケターだけでなく各部門の人たちが、良いUXを提供することを優先させている。こんな組織に変えることが、マーケティングの不都合な真実を覆すための、唯一の方法だと信じています」と語り、外部もうまく活用しながらチームでグロースハックを進める重要性を説き、講演を締めくくった。