ブランディング目的でのデジタル広告への投資が加速している
ブランディングを目的としたデジタル広告(以下、デジタルブランド広告)への投資が加速しています。直接購買につながるダイレクトレスポンス目的での活用はこれまでも盛んでしたが、同時にブランディングの価値を高める目的での活用が注目されているのです。
ニールセンとCMO Councilによる2014年の調査では、購買の具体的なアクションにつながるダイレクトレスポンス広告よりも、ブランド広告を利用するという回答が上回りました。全体の70%の回答者はブランド広告に予算を増加させる意向があり、前年度比で15%増加しています。このようなデジタルブランド広告を重視する傾向は、日本でも同様といえるでしょう。
しかしながら、課題もあります。その課題とは、デジタルブランド広告に投資するための“指標”が定まっていないこと、あるいは広告代理店が「誰にどれだけ見られたのか(リーチ)」「消費者の意識はどう変化したのか(レゾナンス)」というデータを提供できていないことです。
ネイティブアドの活用をはじめ、デジタルブランデド広告の活用に積極的な企業は、従来のマス4媒体と同じ指標をオンライン媒体に求めています。マーケティング予算の配分を最適化するためにも、オフラインとオンラインの広告を押し並べて評価できる“指標”を求めているのです。
また、すべてのキャンペーンでリーチ測定指標を提供している代理店は17%、レゾナンス測定指標を提供している代理点は21%に過ぎないことを、ニールセンとCMO Councilは指摘しています。測定結果を「ある程度信頼している」企業が49%ある一方で、「わからない/信頼していない」企業は40%。第三者に検証を求める声も35%に達する回答がありました。つまり、成果に数値的な確信が持てないのです。
数字で可視化できる指標の価値と落とし穴
これまでのデジタル広告の歴史を振り返ってみると、データが取得できるという特性を活かし、精緻なインプレッション・CPC・CVRといった指標で費用対効果が測定しやすいことがメリットとされてきました。これは他媒体と比べ圧倒的な利点でしたが、その利点ゆえに数字で可視化できる施策にのみ予算が投下されてしまうという現象を引き起こしました。オンライン上でコンバージョン(売上ないしは明確に売上に直結する成果)が発生し、費用投下から売上までつなげて計測しやすいビジネスモデルであれば、ROIが証明しやすく、予算を投下しやすいでしょう。
ちなみにわかりやすい効果指標が重視されすぎたあまりに、記事広告などが過小評価されるという歴史もありました。今でこそ少なくなりましたが、記事体広告の表示をインプレッション、記事広告からのリンクのクリックをCPCで計算し、ディスプレイ広告と同列で比較するという時期もあったのです。