6つのコミュニティから見える特徴とは?
ここでは、ある企業の風評に対する反応について、コミュニティクラスタ分析を実施したケースを説明します。今回、データソースにはTwitterのデータを使用します。
まずは、分析対象となる風評に関する口コミデータを抽出します。次に、それらをツイートしたアカウントのリストを作成し、アカウント間のつながり(フォローやコメントの状況など)を基に、つながりの強いアカウントグループをクラスタとして自動分類します。先ほどご説明したとおり、Twitterはインタレストグラフをベースとしているため、生成後のクラスタは同じ価値観や興味関心を持つ者同士の集まり、つまり、コミュニティを形成していると考えられます。
どのようなコミュニティなのかは、プロフィール情報に記述されたキーワードなどから判断し、コミュニティの名前を付けます。分析の結果、全体86,298人について次のコミュニティに分類することができました。
- 「開発者/デザイナー」25,808人、
- 「リベラル」19,667人、
- 「オタク」18,433人、
- 「趣味人」14,264人、
- 「ネトウヨ」4,766人、
- 「トレーダー」3,350人、
風評に関する反応として、ポジティブ/ネガティブの割合を調べたところ、全体としてはポジティブの割合が高く、特に「トレーダー」ではネガティブの割合は非常に小さいことがわかりました。 また、「トレーダー」クラスタ内での具体的なツイート内容を確認したところ、事実に即した冷静な言及が多数であることがわかりました。

一方、「リベラル」や「ネトウヨ」はネガティブの割合が過半数であり、ネガティブな言及は彼らが中心となっていたようです。
このように、コミュニティクラスタ分析を行うことにより、重要なコミュニティのみに絞り込んで、風評に対する彼らの反応や言及を調べることが可能となります。この他、マーケティング施策の反応や、ブランドロイヤリティ、価値観、行動特性などを、コミュニティごとに把握することも可能です。
拡大し続ける、ソーシャルデータの活用範囲
キャンペーンの効果検証など、主に「宣伝・広告」の分野から始まったソーシャルデータの活用は、現在では「市場調査」から「サポート」まで、マーケティングプロセス全体に範囲が拡大しています。

本連載でご紹介した、「複合分析」や「人軸分析」(ソーシャルエスノグラフィ、ソーシャルプロファイリング、コミュニティクラスタ分析)を用いることにより、KPIとの関係性や効果を定量的に確認する、クチコミの発言者の姿をよりリアルに把握する、など、これまでは不可能だと考えられてきた領域の課題にまで取り組むことが可能になりつつあります。
「生活者の本音を知ることができる」、「視点を変えながら、思いついた時に繰り返し分析できる」など、ソーシャルデータならではの特徴から、生活者のニーズやウォンツを把握し、新たな商品やサービスを開発する仮説やヒント、アイデアを創出する、「市場調査」領域での利用が今後拡大するものと期待されます。
おわりに
最後に、ソーシャルデータの活用にあたってのアドバイスを一つ。それは、「時間をかけてでも、口コミ本文を読み込むべき」ということです。テクノロジーの進歩、および、ソーシャルメディアの急激な普及に伴い、リアル世界の口コミをネット世界のデジタルデータという形で、まるで人工衛星のような視点で俯瞰することが可能となりました。

その際、データが意味することをより深く理解するためには、データを正確に処理・分析するだけではなく、そのデータを生み出した生活者の姿や背景などの文脈理解、想像が必要であり、そのためには、時間をかけて口コミ本文を読み込むという、アナログかつアートな作業が欠かせません。その文脈理解こそが、生活者の心をつかんだ新たな価値の提供、社会の変革を可能とするのです。皆様のチャレンジを応援いたします!