セールスソフトウェアとしてのHubSpot
HubSpotは、「人々に見つけられる(get found)」マーケティングを広めた会社である。当のHubSpot自体は、見込み客の集客・育成だけでなく、最近耳にするようになった「インサイドセールス」向けの機能も昨年から提供している。これが「セールスプラットフォーム」である。
セールスプラットフォームもマーケティングプラットフォームも同じHubSpot上にあるので、どちらのプラットフォームにもワンクリックで行き来することができる。さらに重要なのは、見込み客・顧客のデータベースを共有できることにある。マーケティング施策・セールス施策、どちらの情報も同じデータベースに反映されるので、マーケティングと営業でちぐはぐなアクションを起こすことを避け、首尾一貫したコミュニケーションをとることが可能になる。
さて、セールスプラットフォームのアップデートでは、以下の5つの新機能が発表された。
- PROSPECTS
- INSIGHTS
- CONECTIONS
- SEQUENCES
- MEETINGS
「PROSPECTS」は、もともとはサイト訪問者のIP情報から「どの企業からのアクセスか」を把握するマーケティングプラットフォーム側の機能だったが、今回はセールスプラットフォーム側の機能として搭載された。これは日本でいう「会社四季報」のような企業の情報がHubSpot上にプリインストールされてるようなものである。企業規模・業種などのデータをもとにターゲット企業を選別し、セールスプラットフォームに登録。これらの企業からのアクセスや見込み客が獲得できたときには、いち早く知ることができる。
「PROSPECTS」が企業単位でのデータなのに対し、「INSIGHTS」や「CONNECTIONS」は個人のデータをもとに人々のつながりなどを明らかにするツールである。例えばメールアドレスのドメインやLinkedInのデータから企業内のつながりを把握できるなど、営業活動に役立てる情報が自動的にまとめられる新機能だ。
「SEQUENCES」は、どういった順番で、またどういったチャネルで、どのようなコミュニケーションを行うかをテンプレート化し、登録できるツールである。これにより、営業が都度、見込み客や顧客ごとに新しいメールを起こす必要もなく、またSEQUENCES=流れがテンプレート化されるので、新たにインサイドセールスの立場についた人もその流れに応じて活動をすればいい。そのような新規担当者の支援ツール的意味合いも持つだろう。
最後の「MEETING」というのは、HubSpotによる「Sidekick Calendar」などのカレンダーアプリを指す。これは、お客さんとのミーティング時間を管理するところに重きを置いたスケジュール管理ツールとなっている。
さて、HubSpotの今回の発表は、「INBOUND 2015」に同席した他のHubSpotパートナー間でも、「大きな発表はなかったよね」という話になっていた。しかし、すべてが小粒のアップデートであったとしても、次のアップデートへの道につながっている。2016年にはこれらを土台にしながら大きなアップデートがあるだろう。HubSpotがマーケティングや営業の「Hub」となるツールに成長する過程を実感した次第である。
