「HubSpot」はどこへ向かおうとしているのか
5回目となる、HubSpotの年次イベント「INBOUND」が9月8日から4日間にわたって開催された。参加者数は14000人に達し、世界最大級のB2Bマーケティングイベントといっても過言ではない。私は2012年から参加し、今回で4回目。世界70か国で使われているツールだけあり、会場ではさまざまな国の言葉が耳に入ってくる。
今回は創業者の2人、ブライアン・ハリガンとダァメッシュ・シャアのキーノートから、HubSpotのプロダクトアップデートと、その背景にあるものを紹介したいと思う。新機能についての詳細はHubSpotのサイト(http://www.hubspot.com/new)で見ることができる。
「セールス」と「マーケティング」、2つのプラットフォームを内包
まず最初に、HubSpotの現在についてお話をしておこう。2009年に創業者2人が発表した著作『インバウンドマーケティング』を通じて、その核となるコンセプトが世に知られるところとなったが、従来の企業側からの一方通行なアプローチではなく、ネットを使って提供するさまざまなコンテンツを通じて自社製品に興味を持ってもらう手法は、現在ますます重要なものとなってきている。
HubSpotはその後、機能を拡充し、現在は「マーケティングプラットフォーム」と「セールスプラットフォーム」の2つで構成されている。前者はマーケティングファネルにおける「Top of Funnel」と呼ばれる「見込み客の集客」と、「Middle of Funnel」の中でも「見込み客の育成」に関する部分を担うマーケティングのツールである。
「マーケティングプラットフォーム」の中には、パーソナライゼーション可能なコンテンツマネジメントシステムやブログ機能、メールマーケティング機能、ソーシャルメディアのマネジメントツールも含まれる。また、見込み客リストの管理ツールのほかマーケティングオートメーションやリードスコアリングの機能も備えている。このようにHubSpotはオールインワンなツールとなっており、「マーケティングオートメーション」ですら、HubSpotの中では一機能にすぎないのである。
「セールスプラットフォーム」では、HubSpotの営業支援ツールはエグゼクティブではなく、営業の現場を意識してデザインされ、顧客とのコミュニケーションの効率化に重きが置かれている。最近、日本でもよく耳にするようになった「インサイドセールス」向けにデザインされているので、これを実施したい企業は注目すべき「営業支援ソフトウェア」としてHubSpotを認識しておくべきだろう。
インサイドセールスとは
「インサイドセールス」とは、マーケティングと従来型の対面営業を埋める、新しい「内勤営業」だと言える。マーケティングチームと営業チームの間にある確執は、「営業が、渡した見込み客データをちゃんと使ってくれないし、フィードバックもくれない」というマーケティングチーム側の愚痴と、「マーケ側が渡してくる見込み客リストは全然営業に使えない」という営業チーム側の愚痴で表される。その両者のギャップは見込み客の”温め度合い”によるものだ。インサイドセールスとは、電話やメールを使い、見込み客のアクセス状況やメールの開封率などのデータを使い「デジタル御用聞き」をしながら、お客さんの購買機会をつかむことにある。
HubSpotは「マーケティングプラットフォーム」のほうで見込み客データを蓄える術を企業ユーザーに与えたが、そのデータをもとに新たな営業活動=インサイドセールスができるようにしたのが「セールスプラットフォーム」の役割である。