いきなり無茶ぶり、予算はない、結果的に拡散しない……
上司からオンライン動画を活用したマーケティング施策に取り組むように命じられた担当者。
何をどうすればいいのか見当もつかない中、とりあえず「面白い動画CMを作って拡散を狙う」という趣旨の企画書をつくって、取り急ぎ小さめに予算を確保。知り合いの会社を呼んで、とにかく面白い企画を出すように依頼する。
制作を依頼された会社は、予算も無いので工数を割けず、よくあるCMやテレビ番組的な企画を予算に合わせスケールダウンして持ってくる。担当者は、他に選択肢もないので企画を承認。
自分なら絶対にシェアしないよな、と思いつつも制作を進める。動画完成後は、拡散したいなら、というアドバイスから、上司を説得して追加予算を用意、メディアへの露出を狙う。
しかし、動画や掲載記事に対するSNS上の反応は驚くほど無く、再生数もかけた費用のわりにまったく伸びない。散々な結果に上司は怒り出すし、動画をみた他の部署からも訝しげな目線が飛んできて、担当者は自分がいるあいだはもう二度とオンライン動画なんかやるものか、と心に決める……。
これは、動画マーケティングを開始する際に陥りやすい状況を集めた、バッドケースの一つです。ここまで状況が悪化することはなかなかないとは思いますが、動画マーケティング施策に取り組む方々の多くは、部分的に類似した状況に直面したことがあるのではないでしょうか。
拡散の正しい意味
このような不幸を起こさないために前回、動画の使い道を5つに整理した動画活用戦略モデル「SHHIP」をご紹介しました。
SHHIPに基づいて動画の種類と役割をわけて考えることで、マーケティングシナリオの中で動画をどこに配置するのか、どのような内容の動画をつくるのか、それにいくらかけるべきか、などといった大きな方針を決めることができます。もしも上記の物語の冒頭で、SHHIPに基づいたプランニングが行われていれば、その後の展開は大きく変わっていたでしょう。
しかし、SHHIPにおけるStar動画を作ろうということを決めて、適切な目的、内容、予算を組んだとしても、実はまだ大きな落とし穴が残されています。
それは「拡散」という言葉です。
動画施策の枕詞のように安易に用いられがちな「拡散」ですが、その意味を正しく理解しなければ、Star動画は成立しません。今回はその点について解説していきます。