BBCは、10月15日、国際ニュースサイト日本語版を新たに開始した。ローンチ記者会見では、BBCグローバルニュースリミテッド 最高経営責任者のジム・イーガン氏は、「日本では、3人に1人が『オンラインサイトが主なニュースソース』だと答えている。この数は前の年から50%も増えている。だからこそ私たちは今、新しい国際ニュースサイト日本語版BBC.jpを開始する」とし、「日本語版公式YouTubeチャンネル、Twitterアカウントに続き、日本市場でのBBCのデジタルサービスをさらに提供するため、BBCニュースの選りすぐりコンテンツを日本語で配信する」と述べた。
今回のサイトローンチ記者会見にあわせて、日本のメディア業界で活躍するジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田氏、スマートニュースの藤村氏、LINEの田端氏がゲストとして招かれ、「ニュースメディアの未来」についてのパネルディスカッションが行われた。
ニュースメディアを取り巻く状況の変化
ニュースメディアを取り巻く状況は、スマートフォンなどのデジタルデバイスの普及により近年大きく変化している。その変化について、LINEの田端氏は「回転寿司」化していると例えた。旧来のニュースメディアというのは、昔ながらの寿司屋のように「これが旬だ」というものを職人の方が選び、お勧めのコースが1本しかなかったようなものだ。それが今では、情報の受け手である読者・視聴者の方が、自分が欲しいものを選び取っているのだ。この様子を田端氏は「回転寿司」と表現した。「回転寿司が出てきたとき、寿司業界の人たちは『あんなのは寿司じゃない!』と言ったと思う。だが、消費者にとっては回転寿司が寿司かどうかという議論はどうでもいい話で、好きなものを好きなだけ食べられたほうが大事なのではないか。良くも悪くもデジタルやスマートフォンというのはアラカルト、回転寿司だというのは事実」(田端氏)
ニュースの受け手の変化について、BBCのイーガン氏も「DEMANDING(=要求が高い)。十分に品質の高いニュースが提供できなければ視聴者が離れてしまう」とし、「視聴者も一方的にニュースが提供されるだけでは満足しなくなってきている。ニュースへの参画意識が高まっている」と語った。
一方、スマートニュースの藤村氏は、ニュースの定義自体が変化していることに言及。SmartNewsで提供している星占いやファッションの話など、従来のニュースという定義に入らない情報も、ニュースとして発信することで、旬の情報として積極的に読んでもらえる人が膨大にいるためだ。ニュースのアウトラインが広がっている時期であり、藤村氏はそれを積極的にチャンスとして受け止めている。
ここまでの話を受け、津田氏はジャーナリズムの大きな機能の一つとして「国民が議論するアジャンダ、議題を設定すること」を挙げ、メディアがニュースの編成をすること、何が重要なニュースであるか重み付けをすることに価値があったと語る。しかし、そのアジェンダセッティングに対する反発が「回転寿司」に繋がる。何が重要なニュースかという重み付けに、ユーザーが直接的な影響を持つようになってきている。
ニュースの価値、重要性をユーザーが決めるとなると、特にデジタルメディアにおいては「アクセス数」というわかりやすい指標にばかり目を奪われがちだ。アクセス数の多い記事こそがユーザーが求める情報であると考えることもできるし、記事やその書き手の評価基準にすらなり得る。しかし、アクセス数を偏重したり、ユーザーの求める情報だけを提供していくことがニュースメディアに求められる役割と責任なのだろうか。