売り上げやMAUではない本当に大切なKPI
押久保:現場では、数字やデータとの向き合い方をどう捉えてますか。
奥谷:前職の無印良品(良品計画)などのリアルがメインの業界だと、数字というと売り上げなんですね。だけど、それ以外はあまり見ないという感じでした。それが、モバイルショッピングアプリの「MUJI passport」などに取り組むようになると、1時間ごとにデータを追っていく必要が出てきます。ビジネスモデルによって、見るデータもスピード感も違うんですよ。Webをやっているなら、お客様は常に来ているわけですから、データには敏感になるべきですね。
金山:店舗だったら売り上げ、WebサービスだったらDAU(Daily Active Users )というものが最重要項目にあげられやすいのですが、現場にとってそれはまったく意味がない数字だと思います。「売り上げを上げろ」と言われても、現場の個人レベルでは何もできないからです。自分が影響範囲を持って取り扱えないデータを渡されても、まったく何もできないということです。ですから、マネジメントをする経営層は、売り上げを分解して、部署単位で取り扱いできる数字まで落とし込む。例えばアプリ部門だったら「翌日の起動率」とかにし、それをKPIとして結果的に売り上げに結びつける必要があります。うちでは一人一KPIみたいな感じでやっています。
押久保:一人一KPIですか!(笑) なるほど、自分事にするわけですね。
小川:そのKPIの細分化について疑問がありまして。ダウンロード数を上げたら、起動率が落ちるという矛盾が生じて、部署や担当者間でのKPIの対立が起きるのではないでしょうか?
金山:すばらしい質問ですね! 実際、一人一KPIにすると潰し合いになることはあるんですよ。ではどうするかというと、上の階層でどのKPIを優先するか判断するのです。現場でKPIの潰し合いが起きたら、上のマネージャーが意思決定をするいうことです。その意志決定が間違っていれば、さらに上の経営層が判断するいう形ですね。
山本:僕も個別にKPIを持つというやり方をしています。MAU(Monthly Active Users)だけ見ても何もわからないので、何が要因かを調べ、KPIにしていっています。
奥谷:会社や店舗の売り上げを把握しているだけで数字に強いと思ってしまうのは、反省を含めてやめた方が良いと思います。それらは結果の数字なんですよ。問題はそこに至る説明変数の方をちゃんと見ることです。
押久保:どうやったら説明変数の方をちゃんと見られるようになるでしょうか? 自分事として説明変数をデータで捉えられるようになるかどうかって、データドリブンでもキーになるところかなと。
小川:データ分析をする側の人が、施策を実行する人に寄り添ってあげる必要があるでしょうね。そして、デザインや機能の改善といった施策のお陰で「ユーザーの気持ちがこう変わって、こういうことする人が増えたんですよ」というフィードバックをちゃんと伝えていくことがスタート地点だと思います。
奥谷:フィードバックに関しては、前の会社でまず欲しかったのが解析ツールですね。僕からすると店舗の売り場というのはわかりやすいんですよ。ネットではユーザーの動きを目で追うことはできませんから、主動線がわからない。だから、みんなどちらかというと感覚的にやりたがる。リアルでできることがなぜネットでできないのか考えたときに、じゃあ、まずは解析をちゃんとやろという話になりました。

解析ツール選択の基準
押久保:データドリブンの必要性や成果がわかったとしても、仕組みが整っていないとうまく結果に繋がりませんよね。優れたツールはいろいろ出てくると思うのですが、ツールは何を基準に選んでいますか?
奥谷:僕はミーハーでツールオタクなので、高くてもその時一番良いものをというだけです(笑)
金山:僕らの場合はエンジニアの会社なので、ツールはぶっちゃっけなんでもいいです(笑) ツール(道具)なんで。一番安いので良いです。
小川:ツールベンダーが提供するツールは、日々ユーザーの声を聞きながら切磋琢磨して進化していっています。自社で完全に作れるならそれを徹底しても良いのですが、それができないなら専業でやっている企業の力を借りて、知見が反映されたツールを選ぶのが良いでしょうね。
山本:自分たちが何をしたいのかを考えて、それを実現できるツールを絞ることからです。それから、直感的に触りたいか、使いやすいと感じかも大事ですね。「Optimizely」はトップページからURLを入れると管理画面に飛んで、すごく直感的に操作ができました。そこに感動して今も使っています。
