SVOD最大の差別化ポイントとは
MZ:読者の方にとって一番疑問となるのは、「他社のサービスとの違い」という点だと思います。御社がどのように差別化を図っているか教えてください。

高谷:SVODの場合、コンテンツ量の豊富さで勝負しても、他サービスとラインナップにかぶりが出てくるので、そこで差別化するのは難しい。つまり、自社オリジナルのコンテンツをいかに用意できるかが重要になってきます。海外では、SVOD事業者が制作したオリジナルコンテンツがTVドラマ界の有名な賞を受賞するような事例もあるので、我々もそのくらい影響力のあるコンテンツを制作していくつもりです。今年は皆さんを驚かせるような大作も、数多く準備しています。
また、制作する以外にも、海外で流行っているドラマなどのコンテンツをどこよりも早くお届けするのも一つの差別化です。
須田:宣伝面では、日本テレビの編成局や制作局、宣伝部等の各部署に協力を頂き、事業レベルで連携できているのがとても大きいです。Hulu内の人気コンテンツを日本テレビの情報番組内で紹介したり、日本テレビとオリジナルコンテンツを制作し、地上波での放送後に続きのエピソードをHuluで配信したりすることで、会員数を伸ばしています。
SVOD事業者でも、コンテンツ制作の面でテレビ局と提携を行っているケースはありますが、宣伝面など含めて事業拡大のために、ここまで連携できているのはHuluならではの強みと言えます。
テレビ局は対立ではなく協力すべき存在
MZ:日本テレビの傘下に入っていることによるメリットを教えてください。
須田:コンテンツ面でのメリットは大きいですね。19時から23時のプライムタイムと呼ばれる時間帯のドラマやバラエティの中で、配信に関する権利がクリアになった番組については、すぐキャッチアップして配信しています。ドラマやバラエティなどが放送後、すぐ視聴出来るのはユーザーの方々にとっても良い取り組みであると考えています。また深夜番組のキャッチアップ配信にも力を入れており、夜遅くて見られない視聴者に喜んで頂いています。
高谷:地上波で放送される番組に合わせて配信を開始できるのもとても大きいです。年末の恒例番組となっている「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! 笑ってはいけないシリーズ」の過去作品の配信を、2015年12月初頭に始めたところ、視聴数の伸び率がすさまじく、歴代デイリー視聴者数の記録を塗り替える結果となりました。この結果は、番組のパワーはもちろん地上波で年末に放送される番組に合わせたからこそ生まれたと思っています。
須田:どうしてもテレビ局とSVODのような動画配信サービスは対立軸で見られがちです。しかし、日本テレビは早い段階からインターネットにおける動画配信事業に取り組んでいたこともあり、テレビ放送と動画配信が上手く連携し、日本テレビとHuluという2つのチャンネルが協力し合えていると思います。
例えば、昨年夏に公開され大ヒットとなった映画「バケモノの子」のプロモーションに際しては、細田守監督の過去作3本を日本テレビの金曜ロードショーで放送し、毎週放送直後からHulu独占で配信しました。テレビ放送中はTwitterが視聴ユーザーのツイートで溢れ、放送後はHuluで再度視聴するユーザーや、テレビ放送を見逃してしまったユーザーのツイートで盛り上がりました。
結果として、映画の公開を盛り上げるとともに、Huluの新規ユーザー獲得に成功しました。また、映画の公開に合わせた「バケモノの子展」というイベントが渋谷のヒカリエで開かれていたため、無料でお試しできるプロモーションコードを記した、各作品のポストカードをイベント内で配布させて頂いたのも功を奏したと思います。
MZ:事業単位で連携しているからこそ、ネットと地上波の循環が図れているのですね。