日本アプリディベロッパーが海外進出した理由
MarkeZine編集部(以下、MZ):最初に深見さんのプロフィールを教えてください。
深見:2006年にサイバーエージェントに入社し、広告事業本部での営業やSEM組織のマネジメントを経て、自社メディアの事業責任者になりました。2011年のスマートフォン黎明期からスマートフォン広告に携わり、各社と商品開発等も積極的に取り組んできました。
2012年春にCyberZにジョインし、そのままCyberZ USAの立ち上げに携わっています。現在は、広く海外マーケティングに従事し、アジア以外の国でのイベント登壇や出展なども積極的に行っています。
MZ:なぜ米国に拠点を立ち上げるに至ったのですか。
深見:2012年当初、同じサイバーエージェントグループのCygamesが開発、運営しているゲームアプリ「Rage of Bahamut」が北米のアプリストアで1位をとったのがきっかけですね。
このヒットは、日本のアプリディベロッパーが海外でも成功することを証明しました。これがきっかけで多くの国内アプリディベロッパーが海外進出を始め、私たちも一気に組織を立ち上げるに至りました。
MZ:2012年から2013年に米国で主流だったアプリプロモーションを教えてください。
深見:当時の大きい広告メディアとして挙げられるのは、クリック課金型のアドネットワークですね。現在でもそうですが、アドネットワークは大きい力を持っています。
そして1インストールあたりの単価、いわゆるCPIをいかに抑えるか、というのが最大のミッションでした。各アドネットワークが保有する配信面の特徴を把握し、いかに効率よく獲得を最大化させられるクリエイティブを作成し続け、アプローチ出来るかが重要でした。また、各アドネットワークに細かく配信面毎のパフォーマンスを開示してもらえないのが課題になっていましたね。
アクティブユーザーの獲得できるメディアを意識するように
MZ:2014年からの変化はいかがですか。
深見:2013年から2014年にかけて、アドテクノロジー、そして動画広告のフォーマットが伸長していきます。また、DSP(Demand Side Platform)やSSP(Supply Side Platform)の登場で配信メディアのチューニングも可能になり、盛り上がってきたのが2014年の大きな変化だと思います。
MZ:広告パフォーマンスを上げるために意識することも変化しましたか。
深見:在庫を販売しているメディアは全世界対象に買付けを強化しました。当時のアメリカでは、広告配信可能な面が一気に広がり、海外のパートナーから北米の在庫を買付けた方が効率的でボリュームが取れるという構造が出来ていたんです。弊社もイスラエルやオーストラリア、ヨーロッパ等のパートナーとの取引があり、パートナーの4割は北米以外の企業でした。
また、集客が複雑化してアプリディベロッパーも増え、ストアにランクインするのも簡単でなくなり始めました。更にこの頃から、計測に関する技術も発達してきて、インストールしたメディアごとのアクティブユーザー比率や課金額が計測可能になりました。これにより、設定したCPIを支払う価値があるメディアへの広告露出を行うようになったんです。
その後、配信面やクリエイティブごとの継続率やARPU(Average Revenue Per User:ユーザー1人あたりの平均課金額)といったKPIの計測も可能になり、より細かい運用に踏み込んでいきました。
MZ:新たなプロモーションの目標設計、そして動画のような新しい広告フォーマットが浸透していったのですね。
深見:新たなプロモーションという観点では、現在日本でトレンドとなっているリターゲティング(リエンゲージメント)も2014年中頃には本格的にスタートしていました。
インストールしたユーザーの再起動を促す施策で、休眠ユーザーの掘り起こしやエンゲージメントの向上が目的で、いかに売上につなげるかが重要となります。セグメンテーションと各KPIの設定は容易ではないものの、リエンゲージメント経由のユーザーはROASが良い事から、積極的に取り組まれているプロモーション手法です。