カスタマージャーニーを可視化して“育成”を評価する
MZ:今おっしゃった危機感は、いつごろから感じられていたのですか?
岩田:1年ほど前からですね。マーケターがオーディエンス単位の評価と育成を考え始めて、カスタマージャーニーの概念が重視されつつあるのに、そこでアドエビスが“ファネル輪切り”のような測定ツールを提供しているままではいけないと。
私たちはこれまで10年以上かけて、ユーザーとのコンタクトポイントのすべてを計測してきました。企業のニーズに応じて、それを部分最適化した形で提供していたので、結果的にソリューションが分断した状態でした。そこで、今までのツールを一気通貫し、カスタマージャーニーを可視化して「育成をフローで評価する」というコンセプトを立てたんです。
MZ:具体的に、どのように「育成を評価する」のでしょうか?
岩田:これまでは、コンテンツマーケティングなどを行っても、最後に接触した施策がコンバージョンしたかどうかのCPAでのみ評価していました。オーディエンスが潜在層から顕在層へと移行するフロー全体で、どの施策がどう効いていたのかは、捉えられていなかったのです。
そこで、オーディエンスエビスでは、カスタマージャーニー分析の機能を確立しました。ほかのすべての施策が同じで、あるコンテンツだけ接触/非接触の違いがあるオーディエンスを比較すれば、そのコンテンツの効果が分かります。これによって、潜在層向けのマーケティングをフローで捉え、全体のROIを最適化できるのです。
楽天およびGMOと連携した「アドエビスリサーチ」
MZ:一気通貫のソリューションが必要だという危機感を持たれたことと、昨年春に「マーケティングプラットフォーム構想」を打ち出されたのとは、時期が重なりますね。プラットフォームという概念に込めたお考えをうかがえますか?
岩田:「オーディエンスエビス」を提供するだけなら、これまで通り当社は自社開発ツールのメーカーに留まります。でも、このソリューションの可能性を最大限に引き出すなら、それぞれ強みを持つサードパーティーベンダーと組むべきだと考えたのです。
MZ:たしかに、御社が各種の効果測定ツール提供を通して蓄積されているデータは、相当な量ですね。これを活用して、各ベンダーと組んでまた新たなサービスを展開していくということでしょうか?
岩田:ええ。コンタクトポイントの把握と計測は、アドエビスですべて行えますが、施策の実行や可視化の仕方に対する企業のニーズはさまざまなので、それらに応えるソリューションを我々だけで網羅的に提供するのは難しいです。
先行して、今「アドエビスリサーチ」では楽天リサーチおよびGMOリサーチと連携したサービスを展開しています。アドエビスで取得した行動ログデータと、2社が有する調査対象者データを紐づけることで、たとえば離脱したユーザーに「なぜ離脱したのか?」というヒアリングをすることができます。