電通は、日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2015年(平成27年)日本の広告費」を発表した。同社は、2015年の大きなトピックに、以下3点を挙げている。
- 2015年の総広告費は前年比100.3%に
- インターネット広告費が前年比110.2%と全体をけん引
- 21業種中6業種が前年を上回る
2015年の総広告費は6兆1,710億円、前年比100.3%と、4年連続で増加。「新聞広告費」(前年比93.8%)、「雑誌広告費」(同97.7%)、「ラジオ広告費」(同98.6%)、「テレビメディア広告費」(同98.8%、地上波テレビと衛星メディア関連の合計)と全て前年比マイナスを記録した。結果、「マスコミ四媒体広告費」は同97.6%となった。
「インターネット広告費」(同110.2%)は、スマートフォン・動画・新しいアドテクノロジーを利用した広告が堅調に伸長し、全体をけん引した。「プロモーションメディア広告費」(同99.1%)は、4年連続の増加とはいかなかったものの、屋外広告、POP、展示・映像ほか、は増加する結果となった。
業種別(マスコミ四媒体、ただし衛星メディア関連は除く)では、全21業種中6業種が前年を上回った。主な増加業種は、「精密機器・事務用品」(前年比109.7%)、「情報・通信」(同105.1%)、「エネルギー・素材・機械」(同104.1%)、「食品」(同102.7%)、「交通・レジャー」(同102.2%)などが挙げられた。
インターネット広告費の伸長理由とは
全ての媒体の中で唯一伸長を見せたインターネット広告費(媒体費+広告制作費)は1兆1,594億円となった。内訳をみると、インターネット広告媒体費が9,194億円(同111.5%)、インターネット広告広告制作費が2,400億円(同105.5%)となっている。
インターネット広告媒体費はスマートフォン広告市場の継続的拡大や動画広告市場の急成長に加え、「プログラマティック広告取引」の浸透が進んだことが市場の伸びを後押しした。そして9,194億円のうち、広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法である運用型広告費(※)は、6,226億円(同121.9%)と大幅な伸長を見せた。
その運用型広告では、モバイル領域での検索連動型広告の伸長は大きいものの、PC領域ではやや成長が鈍化。一方で、DSPなどのプラットフォームを活用した運用型ディスプレイ広告は順調に拡大した。他にも、ソーシャルメディアや動画ポータルメディアにおいて運用型動画広告のシェアが拡大したことも成長の要因となった。なお、検索連動型広告、ディスプレイ広告、動画広告ともにデバイス別ではスマートフォンが著しく伸長した。
また、この運用型広告の新たな市場動向として、注目されたのが、限定された売り手と買い手が自動広告取引に参加する「プライベート・マーケットプレイス」(PMP)の活用だ。加えて、ユーザ―の位置情報や地域情報、行動ログ等のデータを元にターゲティングを行う新たな広告配信モデルも続々と誕生し、注目された。
枠売り広告は、ポータルサイトの中面(トップページを除く第二階層以下のページ)や一部のトップ面に加え、ソーシャルメディアでも運用型広告へのシフトが進んだこともあり、前年より減少。ただし、コミュニケーションアプリ系メディア、キュレーションメディア、専門領域特化型メディアなどでは持続的な成長が見られた。デバイス別では、こちらもスマートフォンが着実に伸長した。また、動画コンテンツの視聴環境のクロスデバイス化や多様な動画広告メニューの登場により、動画広告市場が急伸した。
インターネット広告制作費に関しては、制作単価は低下したものの、案件数が増加したことで今回の結果となった。特にモバイルアプリ、ウェブ動画、ソーシャルメディア連携ページなどの制作案件が増加した。
※「運用型広告」とは、膨大なデータを処理するプラットフォームにより、広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法のこと。検索連動広告や一部のアドネットワークが含まれるほか、DSP/アドエクスチェンジ/SSPなどがその典型例として挙げられる。なお、枠売り広告、タイアップ広告、アフィリエイト広告などは、運用型広告には含まれない。
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