重要なのは要件定義と高品質
サービスを作るにあたり、同社では3つ意識した点があるという。1つ目は「雰囲気とは何か」という点。しかし、雰囲気というものがあまりに漠然としているため、同社ではユーザーに調査した上、以下の3点が必要だと定義した。
- 店舗の内観……席の配置や席数が把握できれば、自分が働く動線や忙しさの度合いをイメージしやすくなるため。
- 一緒に働くスタッフ……働く上では、やはり人間関係も気になるため。
- 営業風景……若年層のユーザーは就労経験が浅いことから、仕事のイメージがわきにくい。働いている姿を見れば“これならできそう”や“楽しそう”などと想像しやすくなるため。
上記の定義のもと、2つ目に意識したことは「高品質を保つ制作組織の編成」だという。
「動画を制作する施策を当社のようなメディアで行う場合、動画再生のプラットフォームのみを提供し、動画制作はお客様や営業担当者にお任せする方法もあります。しかし、この方法ではお客様に負担もかかりますし、クオリティの高い動画を制作することも難しいという課題がありました。
そこで当社では、撮影チームを派遣し、編集は別でチームを編成して行うサービス設計にしました。そうすることで、制作後のクオリティチェック、改善を行えるようにしています」(染谷氏)
そして3つ目に関して、鹿島氏は「フォーマットを用意し、制約を設けることを意識した」と語る。
「30秒の短時間で字幕付きというフォーマットに統一しています。この尺は学生が通学途中にアルバイトを探すシーンを想定して、電車の一駅間でも動画を見ることができる長さを意識しました。
またコンテンツの内容に関しても、動画を見て利用者が比較検討しやすいように、訴求内容別に4種類のフォーマットを用意しました。その中から、出稿するお客様に選んでもらっています。制作するコンテンツも、作り込みすぎると、求職者の方は職場のリアルな雰囲気を感じられないため、多少雑音を残しておくなど、自然な形に仕上げています」(鹿島氏)
クラウドソーシングの活用により、制作体制を確保
ここまでで、雰囲気動画におけるサービス設計については理解できた。しかし、動画制作・編集チームを編成するのは容易なことではないはず。両氏に尋ねたところ、クラウドソーシングの活用がそれを可能にしているという。
「クラウドワークス様と提携して、スタッフをアサインしています。クラウドワーカーのクオリティ担保のために、事前の撮影指示書を常に用意し、あらかじめ勉強会を行うなどしています。また、撮影現場に私たちは同席しないこともあり、求人企業や求職者の方が気にされるポイントをご理解いただけるような支援を心がけています」(染谷氏)
ちなみに、撮影と編集を経て質の高い動画が完成しても、ユーザーに視聴を促すサイトやアプリの設計、またその機能に関するプロモーションが必要になる。それに対して、鹿島氏はこう語る。
「まず、動画の認知を広めることを目的に、動画が載っている求人ページをピックアップした特集を行う、一般的な一覧でも動画情報はわかりやすく表示するなど、動画で求人に関する情報が得られるという訴求を行いました。
ここでポイントになるのは、あくまでユーザーが見たいと思うタイミングで提供することです。具体的には、従来の求人情報を見た後に動画を見るという、ユーザーの自然な行動を考えて配置しました」(鹿島氏)