ドリンクの未来を考える基盤、「キリン オンラインショップ DRINX」
――まず、「キリン オンラインショップ DRINX」(以下、DRINX)や丹羽さんの担当されている業務内容について、教えてください。
DRINXは当社が2014年4月1日に開設したECサイトです。WEBを介して直接商品を販売するだけでなく、顧客と双方向のコミュニケーションをとって商品開発に反映させる試みなど、飲み物を通じた生活の楽しみ方を広げる提案プラットフォームとしても運営しています。
未来を考えるということで、量産が難しいプレミアムな商品を中心に取り揃えています。当初はウイスキーの飲み比べセットの販売からスタートし、2014年7月にはクラフトビール、2015年10月からはワインもラインアップに加えました。これらは量産が難しい数量限定商品や企画商品が大部分です。
私達は社員12名で、各グループ事業会社への商品開発の依頼、Web制作やデジタルマーケティングの施策立案・運用などに加え、BtoCに関する物流やお客様対応、決済・代金回収といったフルフィルメント基盤の構築・整備も担当しています。
――まさに、全員でひとつの会社を運営している感覚ですよね。
おっしゃるとおり、事業部で事業予算を預かり運営しているため、生まれたばかりの小さい1つの会社を全員で運営している感覚です。物流・システム・お客様対応に関しても、DRINX専用の外部パートナーに開発・運用を委託しております。ゆくゆくはノウハウを社内に蓄積して、自社で構築するという選択肢もあるかもしれませんが、自社組織ですべて連携し、構築するのは時間がかかるため、現状はこのような形で運営しています。
――新商品のテストマーケティングの場という役割も担っているのですか。
はい。まずは新商品のプロトタイプを作り、お客様に開発した商品における飲み方や味覚などの意見・フィードバックをいただき、その声を反映して再販するという取り組みをする場にもなっています。
DRINXを運営する目的は2つあります。1つはキリンの提案性の高い“モノづくりへのこだわり”を情報提供、体験、イベント参加、商品の購入を通じてお客様に理解して頂き、企業価値の向上につなげていくこと。もう1つは、DRINX上でお客様が商品を購入する中で、お客様なりの新たな飲料の楽しみ方を発見してもらうことです。
したがって、収益も上げることを目指すとともに、新規性ある当社の企業活動の認知拡大・話題拡散できているかも重視しています。そのため、単なるEC事業にとどまらず、キリンとお客様のつながりをより強固にするための「統合マーケティングのハブ」として、DRINXを機能させていきたいと考えています。
食への関心高いユーザーを取り込む
――事業においてどんな指標を重視されているのですか。
現時点では商品の供給量が限られていますので、売上というよりも、顧客間口の拡大に重きを置いています。具体的には、会員獲得数や購入者数ですね。
――そのために、現状行っているデジタルマーケティングの施策を教えてください。
現在のところ、キリングループのメール会員に対するメールマーケティングが中心です。これまではキャンペーンの案内にとどまっていましたが、最近では商品の購入までを含め、シナリオを設計しています。そして、商品を食事や飲用シーン別に合わせて楽しむためのコンテンツも含めて提供することで、新しい飲料がある暮らしを提案しています。
また、DRINXを“体験価値”を売るためのプラットフォームにするため、オフラインでのマーケティング活動にも注力しています。例えば、キリンで開いているビール造りの有料体験教室やホップの産地へ行く遠野ツアーを企画し、生産者・醸造家などの作り手とお客様をつなげる取り組みをしています。
――自社で持っているリソースを、DRINXのコンテンツとして活用しているのは面白い取り組みですね。
その通りですね。商品関与・知識が深いお客様は通常とは違う体験を求められるケースもありますので、ウイスキー蒸留所見学では普段の見学では見ることのできない熟成庫にも入ってもらい、樽の香りを感じてもらうなど、通常ではできない体験を企画しています。
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