主張が苦手な日本人
なぜ英会話において、主張が重要なキーになるのだろうか。
その背景には文化的な理由がある。日本は「察し」の文化で、状況を通じて周りへの理解を期待する。欧米は「自己主張」の文化で、状況を言葉で周りに理解させる。このように真逆な文化なのだ。
日本は単民族で同じ言葉を話し、価値観の共有が容易なため、全てを言葉で伝えなくても「空気を読んで察する」という文化が育まれてきた。
一方で、アメリカは移民大国。違う言葉や文化をもつ人々が集まった多民族国家のため、「英語」という共通の言語を通じて、言いたいことを明確に伝え、自分の正当性や希望することを理解してもらう必要がある。
一つ例を挙げよう。日本語のメールでよく、「○○していただけると幸いです」という表現をみかける。例えば、「原稿を明日までにお戻しいただければ幸いです」などのように、やわらかく伝えながらも相手の行動を期待する表現だ。これを英語に直訳すると意図は伝わるのだが、状況は動きづらい。
「原稿を明日までにお戻しいただければ幸いです」
─ It is much appreciated if you could give us feedback on the article draft by tomorrow.
「幸いです」を表す“Appreciated”、 “Wish” や“Hope”などの表現は、この文章では相手への期待しか表現されていない。相手には、期待された行動を取らなくても本人の自由として伝わるので、行動の重要性が理解されないのだ。
具体的にアクションとして何をして欲しいのかをはっきり伝え、それがないとどのように困るのか明確にしておかないと、英語のコミュニケーションでは相手を動かすことはできない。つまり、英語を通じて人を動かすことは、日本語とは違うテクニックが求められるのだ。そのテクニックとは、文化的な違いを理解した上での主張である。
習得の近道は“マーケティングで使う言葉の習得”
今回のコラムの対象読者は、日々現場で活躍するマーケティング担当者と想定している。マーケティングにおける主張の範囲は、その業務の裏返しといっていい。まず、「モノ」としてのマーケティング手段がある。例えばキャンペーンや広告展開、製品のローンチ。そして、そこに関わる「人」がいて、制作やプロジェクトを進めるための「情報」が必要となる。最後は、実施するための「お金」である。マーケティングにおける“主張”は、この要素の組み合わせでできている。

主張における例を2つ挙げよう
1.情報提供を依頼する
例えば、あなたがWebサイトの担当者で、新製品をローンチする話を耳にしたとしよう。その情報提供を製品担当者へ依頼する会話はこうなる。
あなたの主張:「新しい製品が発表されると聞きました。製品やローンチ時期について情報を提供してください」
─ I heard that there is a new product coming soon. Would you please provide information about the product, and when we are launching that product in our market?理由:「Webサイトを制作するのに2週間かかるため、前もって準備しておく必要があります」
─ Since it will take at least 2 weeks to create the launch web site, we need to prepare in advance.
2.プレゼンのサポートを取りつける
VIP顧客へのプレゼンが控えているとしよう。プレゼンにおける重要な役割を依頼する会話はこうなる。
あなたの主張:「VIPのお客様へのプレゼンが控えています。つきましては、会社のケイパをプレゼンする際の、メインプレゼンターをお願いします」
─ There is a big presentation coming for our VIP customers. Please play a main role in this presentation to show them our corporate capabilities.
全ての会話を、この“主張構造”を元に展開していく。英語を話す際は、そこに必要な表現やアクションを促す方向性で、言い回しや言葉を鍛えていけばいいのである。英語をしゃべる近道が見えてくるはずだ。