独自性高いコンテンツで広告効果を向上
倉持:続いて土井さんからもお伺いしたいと思います。
土井:弊社では10数媒体を運営しておりますので、媒体ごとにリーチできるターゲットはそれぞれ異なります。ただ、基本的な年齢層は30代半ば以上がメインです。この世代の大半は、テキストや写真を中心に閲覧しています。ただ、動画や動画広告に興味がないわけではなく、コンテンツにマッチした動画や動画広告が配信されると視聴する傾向があります。
そして、これに合わせて心がけているのはWeb、紙を含めてオリジナリティのある記事を掲載すること。具体的には、モバイルで長めのコンテンツを出すことに挑戦しています。
例えば、『iRONNA』というオピニオンサイトでは、1万文字の原稿を入れています。モバイルでは長い文章は読まれないという通説がありますが、1万以上アクセスがあるような記事で、平均滞在時間が10分になったものもありました。当たり前ですが、読者ニーズに応えたものを出せば、読まれるのです。そして長いコンテンツにしたことで、文脈の中で複数の動画広告を間に挟めるため、広告効果の向上にもつながりました。
倉持:コンテンツと動画のマッチングを重視されているのですね。末政様はいかがですか。
末政:新たなリーチというところでは、別の記事を読んでいる人にも動画を見て頂ける機会を作れるという点が大きいですね。新たなエンゲージに関しては土井さんがおっしゃっていたように、オリジナルのコンテンツを作ることが、広告主に返すことができる価値の一つではないかと考えています。
実際に『ELLE ONLINE』や『ELLEgirl』では、それぞれでインフルエンサーを抱えています。彼女たち自身が動画のプロデュース能力を持っていますし、デジタルネイティブ世代なのでスマートフォンで動画をあっという間に制作します。オリジナルのコンテンツを彼女たちの目線や文脈、言葉で伝えることで、クライアント様の広告商品をユーザー目線でオーディエンスに魅力的な形で紹介することができる。つまり、より深いエンゲージをクライアント様とユーザーの皆様の間に築けるのです。
動画広告の掲載は慎重さが不可欠
倉持:最後に、動画広告はディスプレイ広告と違いフォーマットなどの規定が厳しいかと思うのですが、広告の掲載基準、ユーザビリティに関して配慮している点がございましたら、教えてください。
菊地:広告掲載については、問い合わせの段階からクライアント様の確認を徹底しています。動画の内容からリンク先のホームページまで確認し、クライアント様のブランディングに寄与できるかを徹底的に検証しています。
土井:動画広告では、通常のディスプレイ広告以上に事前の広告審査を入念にしています。クライアント様にもユーザー様にも迷惑がかかってはいけませんからね。また、日本の動画広告が市場に出てきたころは、まだクリエイティブなども発達しておらず、ユーザーからの信頼も薄かった。そこで我々のようなパブリッシャーが良い動画広告プラットフォームを作っていくことが重要だと考えています。それに合わせ、動画広告のクリエイティブも進歩していけば、信頼も改善されていくのではないでしょうか。
末政:私どもも、動画広告の審査は編集、営業共に必ず目を通しますが、一番課題に感じているのが掲載位置です。インリード広告という言葉が示しているように、記事を読んでいる間に閲覧できるのが特徴ですが、文脈に合っていない動画広告は拒絶されやすい。掲載位置の調整はいまだに試行錯誤している状態です。
倉持:2015年は動画広告元年と呼んでもいいくらい、注目も集まり、事例も多く出てきました。2016年はアウトストリーム型動画広告元年として、動画広告はますます盛り上がりを見せると予想しています。ユーザビリティの配慮など改善しないといけない点はありますが、メディアのブランドや信頼感を活用し、クライアントとユーザーのエンゲージを深めるという点で、アウトストリーム型動画広告は今後大きな期待ができるのではないでしょうか。