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マーケティングを“経営ごと”へ テクノロジーへの投資とリターンのバランスが重要

 7月6日(水)、マルケト主催によるイベント「THE MARKETING NATION SUMMIT 2016」が開催された。複数のセッションのうち、freee、リクルートライフスタイル、コンカーの3社からパネリストを迎えた「TOMORROW’S MARKETER ~日本を代表するマーケターがテクノロジーを駆使したマーケティングの未来を語る~」を紹介する。皆、経営視点を備えたマーケターだけに、話題はテクノロジーの費用対効果やデータを軸とする経営戦略などにも及び、ハイレベルなディスカッションとなった。モデレーターはMarkeZine編集部 編集長の押久保が務めた。

マーケティングにテクノロジーが不可欠の時代

押久保:マルケトは今年で創業10周年だそうですが、この10年で企業のマーケティングを取り巻くテクノロジーは大きく進化し、もはやテクノロジーなくしてはどうにもならない状況になっています。そこで今回は、マルケトのユーザー企業から3社のパネリストを迎え、次の3つのテーマでお話をうかがいたいと思います。まずは、お三方から自己紹介をお願いします。

  1. 今なぜ、マーケティングオートメーションなのか?
  2. テクノロジー活用を推進するためのポイント
  3. マーケターの未来
写真左から、freee株式会社 VP,Marketing 伊佐裕也氏 株式会社リクルートライフスタイル 執行役員 牛田圭一氏 株式会社コンカー マーケティング部 部長 柿野 拓氏
写真左から、freee株式会社 VP,Marketing 伊佐裕也氏
株式会社リクルートライフスタイル 執行役員 牛田圭一氏
株式会社コンカー マーケティング部 部長 柿野 拓氏

伊佐:グーグルでのSMBマーケティング統括などを経て、昨年7月にスタートアップのfreeeに入社し、クラウド会計ソフト「freee」のマーケティング責任者を務めています。当社は「スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動にフォーカスできるよう」ということをミッションに、バックオフィス業務の効率化を推進しています。

牛田:じゃらん』や『HOT PEPPER グルメHOT PEPPER Beauty』などのWebサイトや、店舗向けのスマートデバイスで使えるPOSレジアプリ『Airレジ』などを統括しています。その他、オイシックスやロイヤリティーマーケティング(Ponta)などの社外取締役も務めています。

柿野:米に本社を置くコンカーは、Concur Travel & Expenseという出張・経費管理のクラウドソフトを全世界で約4,000万人・4万社に提供しています。日本法人は2011年に設立、私は外資系ERPベンダーを経て2013年にマーケティングの最初の社員として参画し、日本のT&E(Travel&Expense/出張・経費)市場の創造に取り組んでいます。

より見込みの高い顧客に優先的にアプローチする

押久保:MarkeZineでもマーケティングオートメーション(以下、MA)関係の記事の注目は高いのですが、まず、なぜ今MAなのか、ツール導入の目的などを教えてください。柿野さん、いかがでしょう?

MarkeZine編集部 編集長 押久保
MarkeZine編集部 編集長 押久保

柿野:導入のいちばんの理由は、売上向上ではなく業務コストの圧縮でした。その後、セールスフォースとつないで顧客情報をリアルタイムで把握できるようにし、そこから積極的にデータ解析を行って、マーケティングに活用するようになりました。

押久保:同じくクラウドサービスを扱う伊佐さん、いかがですか?

伊佐:導入時の課題のひとつは、先行してセールスフォースを導入して立ち上げていたインサイドセールスチームの活動に、優先順位をつけることです。毎月数千規模の資料ダウンロードの中から、より興味関心の高いユーザーに優先的に営業活動を行いたいと考えました。

 もうひとつは、画一的なマーケティングはもう効かない、One to Oneマーケティングが必要だと思っていたことです。それぞれのユーザーが必要とする情報をOne to Oneのコミュニケーションで届け、freeeの価値をより理解いただきたいと考え、MAツールを導入しました。

押久保:freeeだと、個人向けと法人向けでツールの活用方法は異なりますか?

伊佐:法人様だと個別の営業サポートが付くので、マーケティングとしてはいかに見込みユーザーの意識を醸成し、営業から説明する機会につなぐかがポイントになりますね。個人事業主様には現段階では営業サポートが付かないので、MAツールを使ってメールベースでアプローチし、理解を促して、最終的な契約までを完結するのが目標です。

「離脱しそう」なクライアントもデータで可視化

押久保:牛田さんは、MAツール導入の背景は?

牛田:今、僕らが注力しているのは『Airレジ』の事業で、店舗やスモールビジネスなど現在23万アカウントを突破しています。このアプリは単にレジの簡易化だけでなく、売上分析や顧客管理、それまで構造化されていなかった情報もデータ化できるので、僕らからマーケティングや経営まで加味した提案・支援が可能なんです。

 ただ、当社の3,000人の営業スタッフと23万アカウントの管理は相当難しく、最適なコミュニケーションを可視化するために、MAツールを導入しました。

押久保:その効果はどうですか?

牛田:現時点で、かなり解決しています。営業スタッフの勘や経験も大事ですが、やはり「このクライアントが離脱しそうだ」といったことがすべて見えるので、より適切に支援しやすくなりました。僕からお二人に質問ですが、MAツールのような仕組みの導入における費用対効果を、どうお考えですか?

伊佐:僕らはマーケティング費用に対する効果をCAC(カスタマー・アクイジション・コスト)、見込みユーザーの醸成にかけられる費用と、LTVで見ています。MAツールも、これらとのバランスですね。ツールの導入や運用の費用対効果は測れない部分もありますが、測れるところは徹底的に測り、あとはインフラコストとして、全体の売上と比較して捉えています。

柿野:当社は外資ということもあって、細かく測るというより、年間5つほどのクラウドサービスを試しては絞り込んでいくのが普通ですね。最後まで残るのは、ひとつくらいです。

ディープラーニングにより96%の精度で売上予測

押久保:今のお話は2つ目のテーマ、テクノロジー活用推進のポイントにも通じますね。もはや事業全体を見通して「経営資源をどう使うか」という発想が必要になり、ますますマーケティングが“経営ごと”に近づいてくると思います。牛田さんはどうお考えですか?

牛田:先ほどのコストの考え方も含めて、まさに経営がすべきことが変わってきていると感じています。もっとも大きいのは、情報の活用です。

 今、営業スタッフが積み上げる数字をシステムにディープラーニングさせて、広告売上を予測していますが、約96%の確率で当たるようになっています。手計算より、圧倒的に精度が高い。すると、1カ月や3カ月後の数値を踏まえて打ち手を考えられるので、起点が具体的な分、その内容も深まります。

 さらに、営業担当が個別に話した内容など、非構造情報のデータ化も進めているので、当社はますます「データありきの経営」に近づいています。それを受け入れられるか、あるいはデータ活用が当たり前の現場マーケターを正しく評価できるかという、経営に求められる素養も変わっています。

伊佐:経営でも、いちマーケターでも、テクノロジーの活用には人の素養も非常に重要ですね。すごいスピードでの進化にも、前向きになれないと。

柿野:同感です。私はマーケティングとは「プロセス全体におけるボトルネックポイントを解消すること」だと思っていますが、そのボトルネックは一般的なマーケターの管轄以外にも各所にあります。なので、マーケターは幅広い知識を備えた上で、営業やサポートなど各セクションに入り込んで問題を解決しなければいけない。プラットフォームも大事ですが、コミュニケーション力も必要。そのバランスですね。

新たなチャレンジを後押しする環境が大事

押久保:コミュニケーション力といえば、BtoBでは特に、マーケティングと営業との障壁が課題になります。ツールの費用対効果のところで、伊佐さんは全体売上との比較と言われていて、マーケティングが“経営ごと”にリンクしている印象ですが、マーケティングと営業の会話の基本になるのはやはりデータですか?

伊佐:そうですね。元々「ゴールはひとつ」という意識がありますし、毎週のミーティングでマーケが興味関心を高めたユーザーに対して、営業がフィードバックしているので、ちゃんとつなげてくれているという信頼関係も生まれます。あのときの見込みユーザーはどう再現できるのか、など話も深まるので、数値をベースにしたミーティングは強い組織をつくるひとつの秘訣かもしれません。

押久保:データとコミュニケーション、人の部分もやはり大事なんですね。最後に、育成の観点も含めたマーケターの未来について、牛田さん、いかがでしょう?

牛田:僕は今後のマーケターは「自己否定」に向き合わざるを得ない、と思っているんです。なぜなら、非構造情報まで含めてデータ化し、意思決定するプロセスを構築していくと、そこに人の手が介在するほど失敗する確率も高まるかもしれないからです。システムの精度が高まるほど、従来のマーケターの仕事はなくなるかも。そんな首を絞めるようなことを積極的に行いながら、自分の役割を新たにつくれるか、迫られていると思いますね。

伊佐:深いですね。役割を新たにつくるチャレンジのために、失敗を許すチームやメンバーも大事ですね。ただ、そうした環境づくりのような中長期的な投資と直近の売上のバランスは、経営視点では重要なので、その判断はかなり意識しています。

数値化したデータはごく一部、非構造化情報にも注目

押久保:自社の成長段階に応じて、その判断もやはりデータが基本になりますか?

伊佐:そうですね。ただ、データだけ見ていると行き詰まったりする。営業と顧客の会話をひたすら聞くと、気付きがあることもあります。

柿野:数値が集まるのでそればかり見ようとする、デジタルマーケティングのある種のワナですね。でも実際は数値化されない情報の方が多く、そちらがむしろ重要なこともあるので、デジタルを横目で見つつ、顧客の期待を超えるような活動をどう生み出せるかを柔軟に考えていく必要があると思います。

牛田:今後、お二人の指摘する非構造化情報も、IoTなどの発展でどんどんデータ化が可能になります。人の感覚まで、経営やマーケティングの客観的な意思決定材料になっていくでしょうね。

押久保:お三方の話から、マーケティングとテクノロジー、そして経営がますます密接になっていることを強く感じました。最後に、今後への挑戦をひとことお願いします!

伊佐:freeeでスモールビジネスの方々を創造的にしていくことはもちろん、さらにBtoBマーケティングの好事例としても、freeeが際立つ世界観を目指したいと思います。

柿野:コンカーは、領収書の電子保管に関する規制緩和を政府与党に働きかけていて、2017年から領収書ののり付け提出が不要になります。デジタルマーケティングで事業を発展させながら、よりよい日本にしていく、社員一丸となってそんな会社にしていきたいですね。

牛田:ずばり、日本のGDPを底上げしたいです。Airレジを通して店舗や企業がIT化すれば、事業の生産性の向上に寄与できるので、その積み重ねで日本の活性化を図れればと思います。

登壇後の一幕
登壇後の談笑風景

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/08/05 11:00 https://markezine.jp/article/detail/24810