バイアスと3Vに対応するために必要な要素
では、これらの問題をどう対処すればよいのでしょうか? Prof. Pauwelsは、Big Dataの問題に適用すべく、リーンスタートアップの要素を提示します。
1.Identify&Test,Hypotheses Fast(素早い仮説検証)
例えば、ザッポスはオンラインでの購入体験をよりよくするためにビジネスの再定義を行い、仮説検証を素早く行いウェブサイトの最適化を実施した。
2.Visualize&Simulate the Right Metrics(正しい指標の視覚化とシミュレーション)
ソーシャルメディア、調査情報、各種データを統合した指標を作成することで、現状の視覚化とシミュレーションによる予測を行う。
3.Loop in Build-Measure-Learn(構築‐測定‐学習のループ)
顧客の問題を解決する最低限実行可能なプロダクトを作成した上で、ループサイクルを回すことでサービスの向上を図る。
チャレンジする際に注意すべき点
データの種類が豊富になった現在、特にオンラインデータの取得は比較的容易になりました。上で紹介したチャレンジも行いやすくなっています。このような状況を踏まえ、氏は注意点も提示します。
- ソーシャルリスニングの担当者が素晴らしい洞察を得ることができても、分析対象者がどんな文脈で何故そのような発言をしたのかは不明である。
- 顧客レコードのデータを使用する分析の限界は、ブランド認知やブランドイメージといった重要な態度データが抜け落ちている点である
- オンラインデータでは、我々は顧客の検索行動、クリック等から洞察を得ることができるが、これらの背景に何があるか考えを巡らせなくてはならない。
データの裏側にある人々の行動や態度、感情をすくいあげる必要があるわけですね。
消費者態度変容速度の違い
続いて、Prof. Pauwelsは人々の行動にある文脈をつかむために必要となる、リアル領域であるオフラインデータとオンラインデータを統合した消費者の態度変容を説明します。

KNOW:Cognition(認知)―Aware(気づいて)―Consider(検討する)
LIKE:Affect(影響する)―Prefer(選好する)―Loyalty(ロイヤルティ)
オフライン領域において態度変容のスピードは緩やかである一方、オンラインでは素早く態度変容が起こるとのこと。これは、普段の自分の生活を思い浮かべると、実感に合うものではないでしょうか。
オンライン、オフラインを統合した消費者の態度変容について興味がある方は、こちらのワーキングペーパーが詳しく解説していますので、読んでみてください。
「Do Online Behavior Tracking or Attitude Survey Metrics Drive Brand Sales? MSI Working Paper 2013」
まとめ
最後に、氏はデータを意思決定に変える方法について下記表を用いて解説を行いました。

Big Dataの特徴である3Vと引き起こされがちなバイアスの3Cに加えて、リーンスタートアップによる対処方法を提案して講演を終えました。
さて、2回に分けてご紹介してきたEMAC2016レポートですがいかがでしたでしょうか?個人的にはBig Dataブーム後の振り返り箇所における問題点の指摘は面白いと感じました。15年ほど前の「データマイニング」ブームから「ビッグデータ」ブーム。そして「統計学」ブーム、「機械学習」ブームを経て、現在「人工知能」ブームの只中にあるように感じます。
サービスのビジネスマーケティング上、流行に乗ることも大切ですが品質が伴っていなければユーザーの期待に応えられず何れ見捨てられてしまうでしょう。アカデミック領域を含め多面的な視点を持ちつつ、時に冷静に見極められるよう日々研鑽していきたいものです。
この度は、記事をご覧いただきありがとうございました!

(ついうっかり、Treasure Dataのパーカーを着ていますが回し者ではございません。)
