「ニベアの青缶」の再注目に見る「知覚品質」の大切さ
近年でその好例となるのが、スキンケア商品である「ニベアの青缶(以下、青缶)」の再ヒットです。
この商品、品質の確かさでロングセラーブランドとして安定的な地位を獲得してきましたが、数年前「青缶」のベネフィットを「高い知覚品質」で伝える2つのストーリーが登場したのをご存知でしょうか? 結果、「青缶」は再注目を集め、売上を拡大させているのです。ではそのストーリーとはどういうものなのでしょうか。
一つはネット上で拡散した「“青缶”の成分は、実はあの“クレーム・ドゥ・ラ・メール”とほとんど変わらない」というもの。“ドゥ・ラ・メール”は海外の高級スキンケアブランドで、マドンナなど海外のセレブや日本の著名芸能人が多数使っているということで有名です。実は「青缶」の成分がこの“クレーム・ドゥ・ラ・メール”と酷似しているという情報がネット上に流れ、一気に注目度が上がりました。
続いてのストーリーは、健康・美容系の情報波及力では指折りのTV番組「NHK ガッテン!(旧ためしてガッテン)」で「40代の高額なスキンケア商品を使い続けている女性」より「80代の青缶のみ使っていた女性」の方が肌の状態が良かったというストーリーです。そもそもは安心できる品質から派生した「母親の愛情のシンボル」という情緒的なアプローチで展開してきた「青缶」ですが、この2つの「知覚品質の高い=ブランドの価値が伝わりやすい」ストーリーが展開されることで、ブランドのリバイタルに成功したのです。
「赤ちゃんのストレス」の見える化で知覚品質を高めたベビーカー
もう一つの好例として「通気性の良さ」をセールス・ポイントとしたベビーカーブランドのケースがあります。

この商品に関して「買っている人の“買っている理由”」と「買っていない人の“買わない理由”」をデプスインタビューで明らかにしたところ、その商品を買っている人は「暑いと“赤ちゃんがかわいそう”」と考えていることが想像でき、買わない人は「暑いといっても“そこまで赤ちゃんに悪影響はない”」と感じていたという状況がわかりました。
そこで、そのブランドは、商品を買っていない人に「通気性の悪さが、赤ちゃんに与える悪影響」をいかに「知覚品質高く」伝えていけるかがポイントだと判断。通気性の悪さによる「赤ちゃんのストレスの“見える化”」に着手しました。つまりターゲットにとっての「課題の顕在化」を行ったのです。
具体的には、通気性の良いベビーカーと、そうでないベビーカー(自社商品)との間で、赤ちゃんが感じるストレス値の違いを比較実験。通気性の悪いベビーカーに乗っていることは「オムツが汚れている」「お母さんが不機嫌な顔をしている」時と同じぐらいのストレスを感じていること、そして通気性の良いベビーカー(自社商品)は、そのストレスがぐっと下がるという結果を得ました。広告・PR・店頭でこの結果を発信することで、自社商品の購買者数を大きく高めることができたのです。