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競争優位だけではもう売れない!「マーケティングセオリー」のワナ

“買われない理由探し”ばかりしていませんか? 売れるヒントは「買ってくれる」理由にアリ

 本連載では、「モノが売れない時代」に市場と格闘するマーケターが陥りがちなワナと、そこから脱出するためのいくつかのルールを示します。3回目のテーマは、“買ってくれない理由を見つけ、充足すれば売れる”というセオリーからの脱却です。マーケターはつい、自社の商品を「買ってくれない理由」に目が行きがち。そのネガティブ探しは最終的に商品を「買いたい」という認識形成に本当につながるのか、考えてみましょう。

商品が「買われない理由」ばかり探ってはいないか

 連載のなかで何度も申し上げましたが、日本のマーケターの方は、あらゆる手をつくして自社商品の売上改善のヒントを見つけようと、日々奔走していると感じます。例えば定量調査で、競合商品と比べて「自社商品に足りないイメージ」が何かを分析し尽くすケースや、グループインタビュー・デプスインタビューを何グループ・何十人と実施し「自社商品を買わない背景にある、価値観・ライフスタイルは何か」を探索し尽くすケースがあるでしょう。

 最近ではテクノロジーの高度化により、生活者の行動が精度高く特定できるようになってきたことで、自社商品の認知から購買までのプロセスである「カスタマージャーニー」を整理し、各段階でのボトルネックを特定し、プランニングの精緻化を目指しているクライアントにも数多く出会います。

 これらの分析にかけるマーケターの熱意や分析精度の高さに感心させられるケースは非常に多いのですが、同時に私が感じるのは、大半のクライアントが自社商品を「買ってくれない人=ノンユーザー」の「買わない理由探し」にのみ注力しすぎているのではないかということです。

 カスタマージャーニーの分析に関しても、各段階での「ボトルネックは何か?」の解明に注力するケースが大半ですが、果たしてボトルネックの解明だけで、最終的に「その商品を買いたくなる、新たな認識づくり」に本当につながっていくのでしょうか。

 売上をつくっているのは「間口(ユーザー数)」×「奥行き(リピート頻度・量)」であり、大抵の商品は1人当たりの「奥行き」には限界があります。そのため「間口」の拡大、すなわちノンユーザーのユーザー化がマーケティングのメインテーマになりがちです。すると必然的にノンユーザーのボトルネックである「買わない理由」を明確化し、解消することがマーケティングの優先課題になりがちなのは無理もないと思います。ですが、そこに落とし穴があるのです。

スルーが珍しくない時代、選ばれる理由こそ重要

 私が所属するインテグレートでは「ノンユーザーの買ってくれない理由」からだけでは「その商品を買いたくなる新たな認識づくり」に十分な示唆は得られない。むしろ、「買っている人=ユーザー(特にヘビー・ロイヤルユーザー)」の「買っている理由」の明確化が重要であると考えています。

 確かにノンユーザーが商品情報に接触し、キチンとベネフィットを評価してくれているならば、“買ってくれない理由”にも示唆があるかもしれません。しかし、これだけ競争が激化して、情報量が爆発的に増えている時代ですから、そもそも商品の情報を知らない・知っていても名前とパッケージレベル、ということが数多くあります。商品に接触したとしても、モノが欲しくない時代には「あえてこの商品を検討する必要もない」と思われ、大してよく見ずに“スルー”されることも増えています。

 このような状況のなかで「買わない理由」を尋ねたとしても、その回答にどれほどの価値があるでしょうか。またスティーブ・ジョブズの生前の有名な口癖で「生活者に欲しい物を直接たずねても、その答えは得られない」にある通り、ノンユーザーに「何があったら、欲しくなるのか」を聞いても有効な情報が得られないことは、インタビューなどを数多く実施しているマーケターであるほど、痛感しているのことと思います。

 一方「買っている理由」はどうでしょう。事業会社の方も、前述の「売上の構造(間口×奥行き)」や、LTV(顧客の生涯価値)の観点から既存ユーザー(買っている人)の重要性は理解しているものの、マーケティング戦略へ反映できているのは、CRMなど「既存ユーザーのロイヤル化」という側面に留まっているのではないでしょうか。

 すなわち「買っている人の買っている理由」を「買っていない人」にどうやったら当てはめられるのか、という視点でのマーケティングプランニングが、あまりなされずに来てしまったのではないかと思うのです。多くのクライアントが「買っている人のことはわかっている=リサーチは必要ない」と決めつけがちな傾向にあります。

 しかし、実は「買っている人」の価値観・ライフスタイルはどんなもので、どんな情報をどんな状況で受け取って、どんな意識変容をして購買に至ったのかを知ることが非常に重要です。そして「買っている人」と「買っていない人」の違いは何かを明確にし「買っていない人」を顧客化するにはどうしたらよいかを考えていくことが、実は突破口になるケースが少なくありません。

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この記事の著者

三宅 隆之(ミヤケ タカユキ)

 株式会社インテグレート執行役員 消費者行動アナリスト/プランニングディレクター  大手広告会社に17年間勤務後、2008年株式会社インテグレート入社。食品、衣料品、化粧品、自動車等多くの商材に関する消費者行動分析~統合マーケティング戦略立案・実施を行い、クライアントが抱える様々な課題の解決を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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