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「日本に足りないのは実践的学習」、海外と日本のマーケター向けイベントの差に迫る

 2016年6月29日から7月1日までラスベガスにて開催された、「Experian CLIENT SUMMIT 2016」。世界各国からエクスペリアンのクライアントやパートナー企業が招待され、主にアメリカでのデジタルマーケティングの最新トレンドや、同社のソリューションで成功した施策事例などが紹介された。本記事では、エクスペリアンジャパンの常務取締役である橋本勇人氏に同イベントの詳細や開催する意義、同イベントに参加したファッション・コ・ラボの代表取締役社長とワールドの執行役員を務める中嶋築人氏に感想を聞いた。

世界と日本の差を肌で感じ、具体的なメソッドも勉強

 エクスペリアンのマーケティングサービスでは、メールなどデジタルマーケティングの支援サービスに加え、マーケティングオートメーション(以下、MA)のプラットフォーム提供開始をきっかけに本格的にMA中心の事業展開も行う。そんな同社が、クライアントやパートナー向けに10年前から毎年開催しているのが「Experian CLIENT SUMMIT」(以下、クライアントサミット) だ。

 クライアントサミットでは、データ統合の重要性や顧客理解など、その年々のマーケティングトレンドを意識したテーマを取り上げている。そして、記念すべき10回目を迎えた今回は“レベルアップ”をテーマに、一段上のコミュニケーション実現のためのロードマップやシナリオ、さらなる成功を得るための新しい市場トレンドなどが提示された。

 この注目のイベントに参加してきた日本人社長がいる。ファッション・コ・ラボの代表取締役社長、そして多数のアパレルブランドを持つワールドの執行役員も務める中嶋築人氏だ。

 ファッション・コ・ラボは、自社でファッション通販サイト「FASHIONWALKER」「OUTLET-WALKER.com」を運営。さらにECサイト運営で蓄積したノウハウを活かし、ファッションブランド向けに公式ECの立ち上げから集客・販促までを支援するソリューション「コマ助くんNEO」を提供しており、同ソリューションはSTRASBURGOを販売するリデア株式会社など26社、54ブランドに活用されている。EC事業者、支援企業という2つの顔を持った企業だ。

中嶋氏
株式会社ファッション・コ・ラボ 代表取締役社長
株式会社ワールド 執行役員 中嶋築人氏

 同氏に今回のイベントに参加した最大の目的を聞いたところ、「自己のレベルチェック」だという。グローバル単位で見たときに、自分達がどれくらいのレベルのデジタルマーケティングを行えているのかは、普段実務を行っているとなかなか見えづらい。加えて、デジタルマーケティングで最先端を走るアメリカの最新トレンドと、具体的な活用事例も知ることができるため、今回のイベントは良い機会だったという。

 「日本のイベントのほとんどが概念論に終始してしまうことが多く、じゃあ実際どうやるのか、っていうことが抜けているセッションが多い。一方、アメリカのイベント、特にクライアントサミットは極めて実践的で、かつ日本よりも先進的な事例を知ることができる。イベントに出てくる事例も実証とデータに基づいていて、講師もその企業のマーケティング担当者なので説得力もあります。参加する中で日本とアメリカのレベルの差を痛感しましたね」(中嶋氏)

各店舗でエリアマーケティングを最適化

 クライアントサミットの中で興味深かったセッションを中嶋氏に尋ねたところ、全米でアウトドア用品の小売をチェーン展開するバス・プロ・ショップスの事例に関するセッションを挙げた。同セッションでは、マーケティング責任者がエクスペリアンのソリューションを使い、実際に店舗でどういったオペレーション、エリアマーケティングを行っているのか、そして組織上の意思決定はどの部署が行っているのかまで、極めて実践的に詳しく紹介された。

 例えば、各店舗にマーケティング担当者がいて、店舗近隣エリアの顧客に向けてカスタマイズされたメールを配信している。この他にも様々な実践施策やそれに対する効果を聞いて中嶋氏は驚愕したという。

 「話が具体的なので“あ、そういう活用法で、組織を組み立てるにはこうすればいいのか”と、実践のヒントが多く得られました。エクスペリアンのソリューションを入れた動機も、担当者が語っているので共感できるし、自分ごととして捉えやすいなと思いました」(中嶋氏)

 さらに中嶋氏は、イベントの講演資料が極めて具体的な点もクライアントサミットの特長だと続ける。例えばクリエイティブに関するセッションの資料には、HTMLメールでボタンをどこに配置したら効果的なのかなどの細かな点まで、実践例を交えて様々な事例が紹介されている。

 「もらった資料をそのまま自社の担当者に渡せば、明日からすぐできることが書いてある。ここまで詳細な資料を提供されているのは、さすがだなと思います」(中嶋氏)

 それにしても、なぜここまで実践的なセッションが設けられているのだろうか。クライアントサミットを主催するエクスペリアンの日本法人であるエクスペリアンジャパンにて常務取締役を務める橋本勇人氏はその理由についてこう語る。

橋本氏
エクスペリアンジャパン株式会社 常務取締役
マーケティングゼネラルマネージャー 橋本勇人氏

 「私たちがクライアントサミットで大切にしていることは、参加者同士がつながる場を提供することです。同業他社はもちろん、他業種においてもベンチマークとなる企業を知る機会を提供したいと考えているからです。事例でケーススタディを学ぶセッションはもちろんですが、ソーシャルメディアやデータなど、テーマをいくつかに分けて実践論を語るセッションも用意しています。今後はもっと理解しやすくなるよう、業界別にトラックを分けることも検討しています」(橋本氏)

日本に足りないのは実践的学習

 中嶋氏は日本のマーケター向けイベントのセッションが概念論に終わってしまうのには、日本と海外の考え方の違いにあるという。具体的には、海外のマーケターはプラクティカル(実践的)であるのに対し、日本のマーケターはコンセプチャル(概念的)であると指摘する。

 「アメリカは実践的な思考で、結果として実施施策が会社の収益にどのように貢献するのかを必ず問われます。MBAでも概念論の時間は少なく、ほとんどがケーススタディです。対して日本では、概念論に終始し、実施施策も目的や期待される効果がぼんやりとしたものが多い。イベントでも、概念として正しいことは言っているものの、それ以上得られることがないものが多いんです」(中嶋氏)

会場の雰囲気
クライアントサミットの模様

 中嶋氏によれば、日本で特に多いのは、流行のキーワードに飛びつくだけで、目的をはっきりさせず失敗するケース。例えばビッグデータにしても、概念的な話を聞いて、目的なしに取り急ぎ玉石混交のデータを集め分析を行っても、すでに予測できたような分析結果しか生まれない。

 そのコンセプチャルな日本の状況は、支援する側が提供するツールの市場成長を妨げる一因になっていると橋本氏は語る。

 「市場で新しい技術や手法が広まるときにありがちなのが、その技術や手法が単なる流行りのキーワードになってしまうこと。これでは、広告主に対しても本当の意味で浸透しているとは言いがたい。なぜなら具体的な活用法が明示されていないからです。現在、MAもキーワードとしてもてはやされていますが、弊社も含めてベンダー各社が議論し、具体的な活用法を伝える義務があると考えています」(橋本氏)

MA成功の秘訣は、リアルから導きだす仮説と明確な目標

 では、MAを成功に導くためにはどうすればいいのか、MAに関するセッションも同イベントにて学んできた中嶋氏に伺ったところ、重要なのは「収益目標も含めた、目的関数の設定」だと語る。

 「何を課題として解こうとしているか、明確に記述できるレベルで行わない限りは、MAはもちろん、マーケティング施策は上手くいきません」(中嶋氏)

 例えば中嶋氏が執行役員を務めるワールドでは、60以上あるブランドのうち、相互に関連性の高いブランドがあるという。その関連性がわかったとき、ブランドAを買っている人はブランドBも買う可能性が高いという仮説ができ、そこで初めてMAなどのソリューションで相互にオファーをかけるなど一歩踏み込んだ施策が可能となるのだ。

 「こういった施策は、目的関数を設定し仮説を立てたから見えたことで、MAを導入しただけではできない。最初の仮説は、やはり人間の知能と知恵が必要で、その上で施策を行い、効果があればMAで自動化するフローを踏むべきです。間違っても、顧客を新規・既存・休眠にざっくり分けてメールを自動的に送るだけで終わってはいけない」(中嶋氏)

エクスペリアンの手厚いサポートで、MAの成果をさらに高める

 イベントを通して中嶋氏は、エクスペリアンが展開するグローバルな事例を、今後もさらに学びたいとした。

 「海外事例をもっと知ることができる機会をもらえたら嬉しいですね。そして、今後のイベントでも実践的なケーススタディ中心のセッションが聞きたいです」(中嶋氏)

 さらに、今後MAをもっと活用していくために、エクスペリアンへの期待や要望を聞いたところ「今以上にパートナーとして支援してほしい」と中嶋氏。例えば、エクスペリアンの社員をファッション・コ・ラボに出向させ、MAの活用ノウハウを現場で実践的に学べるようにするのもありだという。

 「ツールを提供するだけのベンダーではなく、さらに一歩踏み込んだ支援の形でパートナーになってほしいです」(中嶋氏)

 これを受けて橋本氏は、企業のそういったニーズに応えていきたいとした。橋本氏としても、データドリブンで実践的なマーケティングを行うには「ハードワーク」、つまり実践し続けることが大変重要だと考えている。「ツールを導入するだけでなく、実際に支援側の人間がノウハウを共有すべき」と中嶋氏の意見に賛同した。

市場拡大に必要なのはクライアントが成果を感じること

 さらに中嶋氏はエクスペリアンが信頼できる理由を補足した。

 「ベンダーによっては、安価にするためにどの企業でも一定レベルの機能を提供する、いわば金太郎あめのようなソリューションを導入して放置ということもあります。でも企業に合わせたものを提供しないと最終的に投資対効果が下がってしまいます。一方でエクスペリアンさんは、クライアントのニーズに合わせたカスタマイズをきめ細かく行ってくれるため、投資に見合ったリターンが返ってくる印象があります」(中嶋氏)

 橋本氏にも今後のエクスペリアンの展望を聞いたところ、クライアントにきちんと成果を実感してもらい、MA市場を拡大させていきたい考えを示した。そのために同社は、他社とは違い、データの品質管理からセグメンテーション、クリエイティブに至るまで、ワンプラットフォームで行えるようにするという。

 「また、現状MAのチャネルはEメールが中心になっていますが、今後はその知見を活かしてLINEやプッシュ通知などにも幅を広げていきたいですね。また、ソーシャルメディアの分野では、アメリカより日本が進んでいる部分もあるので、日本が海外にノウハウを共有して、日本と海外市場とを共に拡大させたいと考えています」(橋本氏)

ケンタッキーをはじめ、複数企業がMA活用事例を紹介

 今回記事に登場したエクスペリアンジャパンによるセミナーが10月25日に開催されます。セミナー内では日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社をはじめ、エクスペリアンジャパンのMA「CCMP」を活用している企業が事例を紹介します。MAに関心のある方は必見です! 詳細はこちら

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/09/29 08:00 https://markezine.jp/article/detail/25169