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「あのキャンペーン」の担当者に直撃!

「あえて車から離れることで、はじまる関係もある」日産が“手を叩けば自動で戻るイス”を作った理由

数ある技術からわかりやすいものを選んで、ウケる形にする

 インテリジェントパーキングチェアの制作が決定するまで、検討には半年ほどかかったという。そもそも、同社が持っている技術は豊富だ。車のカメラの死角に近づいてきた子供や動物などを知らせてドライバーに注意喚起を促す移動物検知の技術や、自動ブレーキなど沢山の候補のなかで、どの技術を選ぶのかにも時間がかかる。今回採用した技術はインテリジェントパーキングアシスト(Intelligent Parking Assist)という、ボタンを押せば縦列駐車や車庫入れなど、面倒であったり難しい運転がアクセル操作のみでほぼ自動でできるというもの。なぜこの技術を選んだのか。

 「日産の技術を伝えるこの取り組みは、長期的に継続させたいと考えていました。その第一回となる今回は、一番わかりやすいものにしたいと考えました。また、日産がお客様にアピールしているものに“電動化”と“知能化”で目指す自動運転がありますが、自動駐車は現時点でお客様に提供できている実体験可能な技術です。この二点からインテリジェントパーキングアシストが相応しいと考えました」(冨井氏)

 コンテンツの内容については、多くの人に広く共感してもらえるところに、難しい技術を上手く合わせて、おもしろいと思ってもらうことを目指した。しかし、何をおもしろいと思ってもらえるかは、予測が難しいと冨井氏は語る。

 「これは確実に情報拡散するだろうと思う時でも、意外と広がらないケースもあります。例えば今では多くの方に知っていただいている“猫バンバン”も、2014年に初めてこのアクションを呼びかけた時は大きく拡散はしませんでした。そのため、インテリジェントパーキングチェアがここまで世界規模で広がったことに驚きを感じています。もちろん、イスが勝手に片付くというシチュエーションには、老若男女関わらず注目していただける自信はありましたが、予想外の規模でした。“このイスを販売しないのか”というお問い合わせをいただきましたし、社員からも好評でした」(冨井氏)

 動画を公開したところ、ソーシャルやwebにとどまらず、マスも含む国内外の様々なメディアに取り上げられた。さらに、イスの展示会に取材に来た海外メディアもあったという。また、社内に対しても、今回の方式が技術を伝えるために有効な一つのアプローチだという認識が広がったことも大きな収穫だったと冨井氏。

 「実はこのイス、自動駐車の技術に触発されてはいますが、まったく同じ技術を使っているかというと、そうではないんです。ですから、開発部門からは“違うものじゃないか”と指摘も受けました。ですが、技術的には完全に一致していなくても、その技術のベネフィットをわかりやすく伝えることで興味を持ってもらうことができればこういった方法も必要だと、多くの社員に理解してもらえました」(冨井氏)

技術の比較

動画再生数は1200万回、シェアでターゲットの非購入検討層に伝える

 具体的に、今回のキャンペーンではどのような成果が出たのか。動画の再生回数は1200万回にのぼり、同社の動画コンテンツ史上、最も多い数字を叩き出した。また、来店を促す体感キャンペーンの特設ページを用意していたが、同サイトへのCTRは通常のアドの数字と競るほどだったという。

 動画の拡散は、Facebook、Twitter、YouTubeで行ったが、公開後1か月でFacebookのシェア数は55000、いいね!が80000、Twitterのリツイートが12000、お気に入りが12000、YouTubeも11000ほどシェアされた。

 「ソーシャルメディアの公式アカウントをフォローしているファンの皆さんは、もともと日産のことを好きでいてくださっているわけですが、シェアされることで、その周りにいる日産非購入検討層、クルマの無関心層へ伝えることができます。今回はそこを目指していたので、シェア数が多かったのは狙い通りで嬉しかったですね」と冨井氏。

 さらにキャンペーンは国内外でも高い評価を得ており、カンヌライオンズのPromo & Activation部門でブロンズ受賞、アジアで最大の広告賞であるスパイクスアジアでもDigital部門でグランプリとゴールドを獲得し、国内のコードアワードでもマーケティング的な効果が評価されるグッド・イフェクティブを受賞している。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/10/06 10:00 https://markezine.jp/article/detail/25237

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