BtoBでは具体的なアクションマッピングが重要
こうしたステップを踏み、具体的なコンテンツやキャンペーンの内容を考案するのが3つ目のステップだ。ここでカスタマージャーニーの設計に取り組む。ただし「BtoB向けの市場においては、カスタマージャーニーで一般的に使われるフローチャートは効果的ではないと思います」と福田氏は注意を喚起する。
「BtoBは製品やサービスを長期検討するケースや、定型かつ単純なフォローだけでは顧客のセグメントを次段階へ移行させられないケースが多い。そのため、プロセスを順序立てて示したフローチャートは役に立ちません」(福田氏)
では、どうすればよいか? 福田氏が推奨するものが、セグメントで分類した顧客に対し、どんなコンテンツやメッセージを配信するのが適切かをマッピングする作業だ。自社に対する顧客の反応を「認知」「関心」「評価」「コミットメント」などで分類し、各セグメントに適するコンテンツやキャンペーン内容を埋めていく。分類する方法は、自社からのアプローチに対してどんな行動を示したかで判別すればいい。
加えて、どのチャネルを使って顧客にリーチするのかも検討したい。メールや電話、SNS、イベント、ブログなど、さまざまなチャネルがあるが、「まずは単一チャネルからスタートするのが望ましい。徐々に範囲を広げていくのが適切なアプローチです」と福田氏は語る。
このとき、コンテンツやキャンペーンの特性を踏まえ、どのチャネルに展開するのが効果的かを考慮することが大切だ。モバイルに適したわずかな時間で閲覧できるコンテンツがある一方で、PC等でじっくり閲覧したいコンテンツもある。チャネルの利点を加味したコンテンツ作りも求められる。
「顧客のセグメント別に適切なコンテンツやキャンペーンをマッピングした表に、展開するチャネルも追記するといいでしょう。マーケティング担当者は、作成した表をチェックするだけで施策内容や展開チャネル、顧客層を把握できるようになります」(福田氏)
効果測定にツールは有効、運用しながら組織を変える
最後のステップでは効果を測定する。特にはっきりとした効果が現れるまでは、エンゲージメントを測定することが大切だ。たとえば、自社のWebサイトへの訪問数が多かったり、さまざまなコンテンツをダウンロードしたりする顧客なら、セグメントを「認知」から「関心」、もしくは「評価」から「コミットメント」などへ移行させるようなコンテンツの作成に注力する。
顧客のアクションが不十分なら、認知を向上させるイベントやセミナーなどの施策に予算を割り当てるようにする。広告の閲覧数やサイトの訪問数、獲得リード数、商談数などを指標として測定するのが望ましい。
効果測定にはツールの利用が有効だ。「効果指標となる各種データを手作業で収集するのは難しいです。ツールを活用することで作業を簡略化できますし、測定結果をダッシュボードに可視化することで経営層の意思決定を早期化するメリットも見込めます」と福田氏。ただし、「高」「中」「低」程度で評価するなら、ツールではなくワークシートを作成して測定してもいいという。
顧客の検討ステージ(初期、中期、後期)に応じて確認したい項目もある。例えば初期ならWebサイトに何人訪問したか、コンテンツのダウンロード数、コンバージョンなどがどう推移しているのか確認したい。後期なら営業担当者がCRMに案件として登録する割合が高い。そこでCRMに蓄積する商談内容を確認し、今後のマーケティング活動にフィードバックする。営業担当者から顧客の反応をヒアリングするのも有効だ。「マーケティング施策の修正、精度向上のためにも、測定結果を反映できる体制づくりが不可欠です」(福田氏)
福田氏は、最後にツールの位置付けについて次のように述べ、公演を終えた。
「マーケティングと営業部門が連携する体制を整備した後にツールを導入するのではありません。体制が整わない状況でツールを導入すれば、両部門を連携させるきっかけになります。ツールを導入するために組織や体制を変えるのは大変なこと。ツールを導入すれば、そのメリットを最大化するために各部門が同じ目的に向かって取り組めるようになります。自社の変革をもたらす触媒としてツールを位置づけることが理想的でしょう」(福田氏)