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MarkeZine Day 2016 Autumn レポート(AD)

MA導入・活用に潜む3つの落とし穴~新規獲得の負のスパイラルを打破するために必要なこととは

 本記事では、2016年9月9日に開催された「MarkeZine Day 2016 Autumn」でのセッション『ここがおかしい、日本のマーケティングオートメーション〜MA導入に潜む3つの罠〜』の模様をお届けする。登壇者のフロムスクラッチで代表取締役社長を務める安部泰洋氏は、「データ統合の罠」「ツール分散の罠」「運用不全の罠」の3つを軸にマーケティングオートメーション活用に必要な考え方を解説した。

CPAが下がらず企業が陥る、負のスパイラル

 日本でも多くの企業が注目し、導入を始めているマーケティングオートメーション(以下、MA)。2010年頃に日本のマーケットに入ってきたその市場規模は、2020年には150%以上の成長が予測されている。次世代型マーケティングプラットフォーム「B→Dash」を開発・提供するフロムスクラッチにて代表取締役社長を務める安部泰洋氏は、日本の企業がMAツールの導入を始める背景に、これまでのリスティングやDSP、ソーシャルメディアなどを中心とした新規獲得施策が、以前に比べて上手くいかなくなってきていることを挙げた。

株式会社フロムスクラッチ 代表取締役社長 安部泰洋氏

 「年々、デジタルマーケティングに注力する企業が増えています。結果として競合が増え、これまでと同じ運用ではCPAが下がらなくなってきています。つまり、新規獲得が難しくなってきているのです」(安部氏)

 さらに安部氏によれば、新規獲得に苦労している企業が陥りやすい “負のスパイラル”があるという。

 新規獲得が難しい場合、最初に思いつくのは既存顧客や見込み客へのアプローチだ。しかし、実際に様々なセグメントに合わせたコンテンツの作成や複数のチャネルを横断したメッセージ配信を行う場合、担当者数人のリソースで実行するのは難しい。

 工数が足りなくなると細かくセグメントを分けることができない。結果、画一的なメッセージを一斉配信することになる。その後も収益化せず「新規獲得をするべき」と振り出しに戻り、CPAは下がらずコンバージョンも取れないという負のスパイラルに陥ってしまうのだ。

 安部氏は、この負のスパイラルから脱却しようと生まれたのがMAであるとし、企業にもたらすメリットについて述べた。

 「MAであればターゲティングも、30代男性で商品情報のページを2分以上閲覧して、特定のメルマガに登録し、再度HPに訪問したユーザーなど、属性・行動双方による複数のセグメント情報をかけあわせたセグメンテーション、ターゲティングが可能になります。そして、ターゲットに合わせた複数のコンテンツを、メールやLINEなどターゲットに合わせたチャネルで自動的に出し分けることができます。つまり、限られた工数でも、パーソナライズされた施策で顧客への訴求力を高め、収益を向上させることができるのです」(安部氏)

新規獲得偏重で見逃しがちな宝の山とは

 では、MAを導入することでどれほどの効果があるのだろうか。安部氏は新規獲得を目的とした広告投資と比較して説明した。

 例えば、あるECサイトでは月に1,000万円、新規獲得を目的としたネット広告を投下しているとする。そこからのサイト流入が10万PV、サンプル購入のCVRが2%で2,000件あり、さらに20%の400人が本購入、本購入者のうち40%にあたる160人がリピート購入をした。商品単価が15,000円の場合、月間売上は840万円となり、ROI(投資対効果)は84%となる。後にリピート購入者が増えれば、いずれ投資は回収できるというわけだ。

 一方、MAを活用すると、この一連の流れの裏に隠れているユーザー、サンプル購入後に本購入しなかったユーザー1,600人と本購入したもののリピートしなかったユーザー240人に対しても、アプローチできる。

 「このユーザーたちは宝の山といっても過言ではありません。サンプル購入や本購入を1度でもしたということは、商品やサービスに何かしら共感や興味を持っているということですから。日本のマーケターは新規獲得に重きを置きがちですが、新規獲得の過程で埋もれたユーザーにアプローチした方がはるかに効率的です。しかし、多くの企業ではこのユーザーに対するアプローチを一斉メール配信だけで済ませていることで、取りこぼしている。非常にもったいないと思います」(安部氏)

MA活用がもたらすROIの大幅増加

 ここからは実際にMAを活用すると、ROIにどのような変化が見られるのか、先ほどの広告投資の例を元に、安部氏は解説した。

 仮にMAツールに月額60万円のコストをかけたとする。サンプル購入後に離脱した顧客に対し、セグメントを細かく設定してアプローチできるようになったことで、本購入は通常時の20%から25%に上がり、放置しているユーザーから400人を新たに本購入へと導くことができる。

 リピート購入も同様に、通常時の40%から45%に向上し、MAによって本購入したもののリピート購入しなかったユーザー400人のうち180人、さらに通常の広告投資で非リピート顧客となった240人のうちの60%にあたる144人が獲得できる。合計すると本購入が400名、さらにリピート購入が324件、先ほど同様15,000円の商品単価とすると、月間売上が約1,100万円、ROIは約1,800%となり、MAを活用しない新規施策の約22倍となる。

 「実際に、こういったことが起きるのがMAの世界。広告投資に比べて、極めて高い費用対効果で収益を向上させることができるのです。もちろん、新規施策で見込み客などを生み出す必要はありますが、新規獲得施策の過程でこぼれ落ちたユーザーに対する施策も検討すべきなのです」(安部氏)

MA導入・活用に失敗する企業が陥る3つの落とし穴

 安部氏はここまで、新規獲得を目的とした施策だけでなく、MAの活用が今後のマーケティングにおいて重要であることを解説した。ただ、MAの導入・活用が上手くいっている企業は少ないという。安部氏は、上手くいかない企業の悩みとして「ターゲットセグメントが、期待通りの細かさで切れない」「ツールの追加導入で、予想外のコストがかかった」「使い方がわからず、運用に乗らない」などがあるとし、その原因に当たるMA導入に潜む3つの罠を挙げた。

 1つ目のデータ統合の罠に関して、安部氏は「もっとも気をつけなければいけない罠」だと語る。

 「断言しますが、10年以内に、皆さんの会社でもデータ統合しなければならない時が絶対に来ます。なぜなら、データ統合しなければマーケティング効率が上がらない時代が既に来ているからです」(安部氏)

 しかし、勘違いしていけないのは、MAを提供するベンダーはあくまでMA領域だけのサポートしかできないということだ。通常、各データを取り込んで統合させるフェーズは、SIerやコンサルティング会社が行う構造になっている。そのため、一般的な企業はMA導入後にそれに気づき、イメージしていたターゲティングができず、追加でデータ統合するためのコストが発生してしまうのだ。データの複雑性が高い場合、億単位のコストになることもある。

 「例えば、広告Aから流入後、商品Bのページを閲覧し、かつ商品Cを購入したユーザーに対して、最適なコンテンツをLINEで送る、このように様々な情報を掛け合わせて施策を届けていくことこそがMAの本来あるべき姿です。データ統合ができていない場合、このような施策は実行できません」(安部氏)

 次に、ツール分散の罠に関して、MAの効果を最大化するためには、MA以外のツールも導入しなければならない点を安部氏は問題視した。例えば、広告データを活用するには効果測定ツール、アクセスログを取るにはサイト解析ツール、ビジネスデータを管理するには顧客管理ツール、データ統合を行うには基盤が必要となり、他にも様々なツールを活用しなければならない。しかし、複数のツールを様々な企業から導入すると、当然コストがかさんでしまう。

 最後に運用不全の罠だが、MAは新しいテクノロジーのため運用ノウハウを持った人材が少ない。そして「初心者にとってはUIも使いづらい場合も多い」と安部氏は語る。そこで運用を上手く行うために必要となるのが、自社企業のITリテラシーとリソースの状況にあわせてベンダーとツールを選ぶことだという。安部氏が掲げるツールおよびベンダーの選定ポイントは以下の通りだ。

 くわえて、安部氏は運用に乗らない事例として、ツール利用に関する説明が少ない場合や、外資系ツールでありがちな、外部パートナーや日本法人が間に入るために、本国ベンダーに質問しようにもコミュニケーションに時間がかかってしまうケースを紹介した。

データ統合を容易に、そして多機能で対応

 続いて、これらの課題の背景に生まれた同社の次世代型マーケティングプラットフォーム「B→Dash」が紹介された。安部氏は同製品の特徴として、「データの接続性」「機能の網羅性」「サービスの利便性」の3つを挙げた。

 1つ目に挙がったのは「データの接続性」。データの取得・統合・活用には、前述の通り、本来であれば様々なツールが必要となるが、B→Dashであれば他のツールの導入がいらない。データの接続による顧客への訴求力の最大化や収益向上が、全てワンプロダクトで行えるのだ。安部氏はデータを接続できるメリットを改めて伝えた。

 「これまで広告配信ツールのデータのみだとCPAベースで見てしまうことがほとんどでした。一方で、様々なデータを接続できると、再流入やリピート購入の結果も含めたLTVベースで見ることができます。すると、例えば広告AはCPAベースで見ると、もっとも効果が良いが、LTVベースで見ると広告Bが良かった、ということもわかるようになるわけです。CPAが安くても、そこから収益が上がらなければ意味がない。LTVドリブンのマーケティングをすることで、ムダな広告費用をおさえて、ROIを最大化できるわけです」(安部氏)

 2つ目の「機能の網羅性」も大きな特徴だ。全てのツールがオールインワンで実現できるため、金銭と工数の両面から、大幅なコストダウンが可能になる。

 「ツール同士の連携が上手くいかない結果、手作業したり、管理画面や代理店のレポートを見たりする時間を大幅に削減できるわけです。代わりにクリエイティブや戦略の改善に集中できます。売れ筋商品の確認からターゲット、ならびにアプローチ手法の選定など、皆さんの貴重な時間はそういったところに投資しなければなりません」(安部氏)

ツールだけでなく人もMA活用を大幅サポート

 さらに同社はプロダクトベンダーでありながら、販売や納品も代理店などに任せず自社で行うことで、クライアントの満足度やリピート率を上げている。さらに、自社コンサルタントによる使い方のレクチャー、マーケティングやシステムのサポートを手厚く行っている。

 「非常に難しいとされているデータの設計や統合に関する業務もコンサルタントがサポートしますし、どの時期にどういった施策を行うかといった年間のマーケティングカレンダーも提供しています」(安部氏)

 同社は、外資系コンサルティング会社出身のコンサルタントなど、マーケティングとシステム両方を理解する非常に優秀な人材を多く擁している。安部氏は「我々と同様のサポートをコンサルティングファームに依頼すれば、フィーはおそらく数千万円はかかるでしょう。ですが当社であれば、コンサルタントの稼働フィーはかかりません。B→Dashというソリューションでフィーをいただいているため、コンサルタントの稼働による売上を意識しなくていいからです」と語った。

 最後に安部氏は、MAが決して魔法の杖でないこと、気をつけなければならない罠があることを改めて述べるとともに、「少なくともデータ統合を早く行うことをおすすめします。データが増加する前に行った方が効率よく行うことができますので」と語り、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/11/16 10:00 https://markezine.jp/article/detail/25406