アトリビューション分析を実施しないデメリットは?
では、アトリビューション分析を実施しないと、どういったデメリットがあるのでしょうか。先述の例にあるように、アトリビューション分析を実施しない場合、CVへのラストクリックで接触した広告Cのみが評価されてしまいます。広告A、広告BがCVへ貢献している可能性があるにも関わらず、これら広告の貢献がなかったことにしてしまうのは間違った判断といえるのではないでしょうか。
また、日本の広告業界においては、ラストクリックのCV計測が一般的であったため、CVに近いところで効果を発揮するリターゲティング広告などに評価が集中しています。その結果、CPAは見合うがCV件数は伸びないなど、広告の最適化を阻む弊害が問題視されてきました。このような背景もあり、アトリビューション分析の必要性が高まってきたという歴史も存在します。
一方、米国ではアトリビューションの考え方が一般的となっている印象が強く「広告をクリックするのは小さな子供と高齢者の割合が高く、実際の購買者はクリックせずに後で検索する傾向が高い」といった調査結果なども存在します。クリックされる広告に対し過度な評価をすることなく、広告のビュー(閲覧)を含めたアトリビューション分析の考え方が浸透しているのです。
アトリビューション分析、実施に向けた3つの課題
最後に、なぜ日本ではアトリビューション分析がまだ一般的になっていないのか考察します。日本でアトリビューション分析が浸透しない理由として、3つの課題が挙げられます。
1.分析の手間
CV直前のラストクリックの広告のみを計測していた時と比べ、アトリビューション計測後の分析が複雑になる模様はすでにお話しました。分析の手間が増えることは想像がつくと思います。その複雑なイメージが、取り組むのに足踏みしてしまう要因の1つとなっています。
2.オフライン広告を含む計測環境の構築
昨今、アトリビューション分析はオンラインにとどまらず、テレビをはじめとしたマス広告などのオフライン広告の計測にも広がっています。このオフラインとオンライン広告の計測環境を構築することに対するハードルの高さも課題となっています。
3.分析結果をアクションにつなげる
最後は、分析後のアクションについてです。現状では、分析そのものに時間を要するだけでなく、導いたインサイトをアクションに移す際にも工数がかかるという課題を抱えています。
今回は、日本におけるアトリビューション分析の現状、そして課題を明らかにしました。ラストクリックのみを評価指標とした効果測定では、今後の広告施策の最適化は難しくなってきます。そのことを本記事でつかんでもらえたら幸いです。
次回は、米国のツールや事例を紹介しつつ、上に挙げたアトリビューション分析の実施・普及に向けた課題がどの程度まで解決可能な状況にあるのかについてお伝えできればと思います。