2日でリーダーレベルになれるヒントが満載
――渥美さんは2日間のセミナーのうち一つ講座を担当されていますが、5年間続いてきたこのセミナーの立役者でもあります。今回はぜひ、セミナー全体についてお話しいただけますか?
渥美:「2日で分かるWebマーケティング基礎講座」は、CMOのような今後マーケティングの中心になる人を育てなければならないという思いが翔泳社さんと一致して立ち上げることになりました。個人的には、企業内研修をお手伝いさせていただく中で、大企業であってもWebマーケティングを体系的に学ぶ場がない、ノウハウを持つ先輩がいないのでその継承もできない、ということを実感してきました。
多くの方からお聞きしたのは、表面的な知識ではなく実践的なノウハウを学びたいということでした。そこで、様々な著者・スピーカーにネットワークを持つ翔泳社の方と打ち合わせを重ね、2日間で10テーマを扱うセミナーを作ったんです。
どんな形であれWebマーケティングに携わるのであれば、本セミナーで扱う10個の項目は万遍なく知っておきたいところです。社内ですべてやるわけではないとしても、アウトソーシングしたり発注したりするときに自分たちに知識があるかないかで仕事の質が変わりますからね。
講師も、最前線で活躍していて、書籍を出版できるほど造詣が深く、スピーカーとしても経験がある方々を探しました。内容も1社の考え方に縛られないよう、なるべく中立的な立場をお願いしています。ここまで長く続けることができたのは、質の高い講座を行ってくださった講師の皆さんのおかげでもあります。
これまで1,000名以上の方に受講していただいてきたので、セミナー自体にはやはりニーズがあったのだと思います。社内で人材を育てたいけれど、マーケティング業界のスピードに対応できず、まとまったノウハウやマニュアルもないという状況で困っている企業は多いのだと思います。
――「2日で分かる」というセミナー名ですが、実際に受講者はどういう状態からどのくらいのレベルまで到達することができるのでしょうか。
渥美:初日は戦略編、2日目は戦術編としています。戦略部分のみの知識でよければ初日のみ、2日間とも受講すれば戦術分野も含め広くマーケティングの全体像を網羅できるようになります。マーケティングに関して誰かと仕事をするときに話が通じるようになりますし、意見を伝えやすくもなるはずです。2日間とはいえ、社内のWebマーケティングの会議に出ても問題なく意思疎通できるくらいの知識は得られると思います。用語解説に留まらず、視点や気づきが多い講座ですので未来のリーダーになるためのヒントがたくさん詰まっています。
受講する際は、マーケティングの基本的な知識がなくても構いません。何らかのビジネスに関わったことがあれば、どの講座でも理解できるように構成しています。Webマーケティングの用語集を用意しているので、講義内で消化できなかった用語は復習もできます。本セミナーは企業の社内研修の一環としても利用されていますから、本当にこれから学びたい方のための内容になっています。もちろん足りない領域の知識を補完するために受講される方も多いです。
とはいえ、そうした想定どおりに企業のマーケティング担当者に受講いただいているばかりではなく、個人事業主の方がいらっしゃることもあります。遠方から最先端の情報を学びに来る方や、普段会えない講師に実務上の悩みごとを相談するために来られる方もいますね。
BtoBマーケティングを学べる機会は多くない
――その中で渥美さんは「BtoBのWebマーケティング戦略」を担当されています。どんな課題で悩んでいる方が対象なのでしょうか。
渥美:そもそもBtoBマーケティングを俯瞰できるセミナーは少なく、得意分野のはっきりしているツールベンダーなどがセミナーを主催していることが多いんです。ですから、具体的なツールやノウハウを知りたい方には参加できるセミナーがいろいろあると思います。逆に、BtoBの企業の方で、「Webサイトを使ったマーケティングはどうすればいいんだろう」「いざWebマーケティングを推進しなければならなくなったが何から手をつけたらよいかわからない」とぼんやりした課題で悩んでいるときに受講していただきたいですね。
実務上は個々のツール導入だけでは課題が解決しないことがたくさんあります。同様に、ウェブサイトのリニューアルだけ、リスティング広告の出稿だけではなかなかうまくはいきません。個々の施策を繋ぎ合わせ、BtoBのWebマーケティングとして捉えなければならないことが俯瞰的にわかるという意味で、この講座は貴重な機会になるのではないでしょうか。
BtoBのWebマーケティングを推進するには組織を貫く必要がある
――BtoBとBtoCのマーケティング、大きな違いはどこにありますか?
渥美:最も異なるのは、買う側の購買プロセスです。BtoCでは個人で意思決定しますから、個人に訴えることが重要になります。ですが、BtoBでは集団で検討することになるので、合理的な説明、稟議のための見積もりや資料作成など、法人における意思決定に寄り添ったマーケティング活動が必要です。
売る側の企業内でも異なるポイントがあります。BtoCでは消費者に直接販売することができるので、施策やプロジェクトの結果がすぐに反映され、施策の評価や次の企画への移行を行いやすいんです。
しかし、BtoBでは数日数週間で結果が出ることは少なく、商材によってはリードタイムが1年以上かかります。そのため、どんな施策が効いて成果に繋がったのかがわかりづらく、スピード感を出したり正確な分析をしたりするのが難しいんです。また、自分の部署だけで営業プロセスを完結させられず、様々な部署を説得して協力してもらう必要があります。Webサイト一つとってもそうですよね。
――BtoB企業がWebマーケティングにおいて抱えている課題には、他にどんなものがあるのでしょうか。
渥美:たくさんありますが、示唆的なお話では社内の組織に関する問題があります。Webマーケティングが頑張れば頑張るほど、どこまでがマーケティングでどこまでが営業か、その境がわからなくなってくるんです。マーケティングオートメーションツールを導入することになれば、ますますその傾向が強くなっていきます。マーケティングでリードをほぼ購入直前にまで育てたとしたら、営業がすべき仕事がなくなりますよね。
Webマーケティングを突き詰めていくと、マーケティングとは本来何をすべきか、営業とは本来何をすべきか、と存在価値を再定義する必要が出てきます。今までは当たり前に領域が分かれていたにもかかわらずです。Webマーケティングに本腰を入れるなら、企業ごとに営業プロセスを再構築しなければならないんです。
講座ではそこまで踏み込まないかもしれませんが、そもそも何をすべきかということをお話しします。受講したあと、会社でWebマーケティングをより推進していくことになったら意識しておいていただきたいですね。
スタートは自社の課題を知ること
――講座の内容についても教えてください。
渥美:まずはトレンドをお伝えすることです。たとえば、営業の環境が変わってきていること。今までは飛び込み営業が成立しましたが、顧客側に会う価値があると判断されなければそもそも会ってすらもらえません。
一昔前は、些細な情報を知りたくても自分でタウンページを開いて情報を持ってそうな企業を探していました。ですから、飛び込み営業だとしても情報収集という意味で価値があったんです。
ところが、今ではネットにほとんどの情報が掲載されているので、営業が会って情報を提供する必要性が失われました。カタログを説明し、見積もりを作るだけの営業には存在価値がなくなります。そうなると、営業はコンサルティング的にならざるをえません。相手の課題を早めに見つけ、いいものを選んでコストを抑えて提供するという役割です。
そうした状況を認識していただいて、受講者の方の会社では営業にどんな役割を持たせていますか、Webマーケティングはその中で何をすべきでしょうか、と問いかけます。そこで、参考になる一般的な事例を紹介しています。
――では、講座で一番伝えたいことは何でしょうか。
渥美:講座では私自身の失敗例を最初にお話しします。以前、Webサイトを改善して問い合わせ件数を8倍にしたんですが、営業にはまったく喜ばれなかったことがありました。なぜかというと、受注に繋がるか判断のつかない問い合わせが増え、手間が大幅に増えてしまったんです。
営業には問い合わせが8倍に増える心構えをしていなかったとも言われました。増員したわけではないので、結局手が回らず放置してしまった案件もあったようです。
そのとき私が学んだのは、Webからリードを増やすだけではダメで、営業と一体になって計画を立てないと売上に繋がらないということです。たしかに、自分が営業だとしていきなり「問い合わせが8倍になったから全部行ってこい」と言われても困りますよね(笑)。
Webマーケティングを始めるとなると、Webサイトのリニューアルやリスティング広告といった施策からやってしまいがちですが、今自分たちの会社や営業が抱えている課題を知ることが最も大事なことなんです。普段から頑張っているであろう営業に、単に問い合わせを増やす作戦が本当に有効なのか、一度立ち止まって考えてみてください。実際に困っていることに対応しないと協力もしてもらえませんから。
そうした考え方を持つことがBtoBのWebマーケティングのスタートですので、ぜひこの講座で学んでいただければと思います。