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企業の存在感はトリプルメディアのパワーバランスで決まる/「Webマーケティングの考え方」講座開催

 編集部が開催するマーケターのためのMarkeZine Academyでは、2日間にわたる「2日で分かるWebマーケティング基礎講座」を定期的に開催しています。今回は講座最初のテーマ「Webマーケティングの考え方」の講師である大橋聡史さん(デジタルインテリジェンス)に、Webマーケティングを俯瞰するために必要なことについてうかがいました。

2日で分かるWebマーケティング基礎講座
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トリプルメディアをバランスよく活用することが重要

――今回、2日間あるセミナーの中で初日の最初に行われるテーマが「Webマーケティングの考え方」です。5年目となる本セミナーの中でもかなり幅広いテーマを扱われますが、射程としてはどう考えればいいのでしょうか。

大橋:Webマーケティングという言葉は狭く捉えると自社サイトに集客して購買に繋げて……となり、かといってデジタルマーケティングと言うとかなり広範な領域を指すことになります。

 この講座はその中間を見据えたもので、いわゆるトリプルメディアを俯瞰できる視点を提供することを意図しています。トリプルメディアとは、広告を出すペイドメディア、自社サイトなどのオウンドメディア、そしてユーザーによる評判などの口コミ効果を狙うアーンドメディアをいいます。

 マス・マーケティングの中心にはテレビを始めとしたペイドメディアがありました。ですが、Webマーケティングのフィールドではトリプルメディアそれぞれが持つパワーは拮抗しています。オウンドメディアがビジネスのプラットフォームになっている場合もありますし、アーンドメディアが企業やブランドの価値を左右するような力を持っていることは誰もが実感しているでしょう。

 Webでは必ずしもペイドメディアの影響力が最大というわけではないので、この三角形を俯瞰できないとマーケティングを考えることはできませんし、偏った判断で予算を非効率的に投じてしまう危険性もあります。

 トリプルメディアをどのように自社に適した割合でバランスよく活用するか。これが「Webマーケティングの考え方」の主軸です。マーケターに必要な基礎的な能力ですね。

大橋聡史さん

大橋聡史さん:株式会社デジタルインテリジェンス シニアコンサルタント

Webマーケティングの要は「存在感」

――講座では「存在感」がキーワードとして取り上げられていますが、これはなぜですか?

大橋:僕はトリプルメディアでの情報発信、情報量がバランスしたところにブランドの存在感が成り立つと考えています。Webで形成する存在感は、企業やブランドの声の大きさに比例するものではありません。オウンドメディアで役立つ情報やブランドの考えを伝え、アーンドメディアでユーザーに評価してもらう。そのうえで、ペイドメディアで適切な接点を提供していく。それらがポジティブにバランスしてこそ存在感が生まれます。

 存在感は検索数や言及数、その内容を調べればある程度把握することができます。ですが、こうした検証をせず、タスクとして仕事をこなしているだけだと、なかなか意識することができない感覚ではあります。だからこそ、2日間の講座の最初で存在感という言葉を実感していただこうと思っています。

 たとえば、ペイドメディアで広告を展開していないブランドでも、我々はWebをメインにして様々なレベルで情報を得ていますよね。名前だけ知っている、日本初上陸ということを知っている、はやっていることを知っている、という具合です。

 世間では盛り上がっていても自分はまったく知らなかった、あるいはその逆に、自分の目にはよく留まる情報なのに世間は反応していないということもありますよね。マーケティング担当者としては、そうしたギャップが生じたときにはその理由を調べることが大切です。自分はどういうときにその情報を得たのか、あるいは世間ではいつどんなメディアで盛り上がっていたのか――存在感が形成されたメカニズムを掴むことができれば、どのように情報を発信すればいいのか、自社でも応用できるかもしれません。

 また、ペイドメディア、アーンドメディア、オウンドメディアでのバランスが重要とはいえ、スマートフォンの利用時間が拡大する今、ユーザーが日常的に接しているメディアにどうやって情報を出すかも考える必要があります。企業がいくらオウンドメディアに来てほしいと思っていても、ユーザーは自分の中で存在感の小さい企業やブランドのサイトに行くことはありません。ですから、彼らが普段目にしているSNSにネイティブ(馴染んだ)な形で情報をフィードしていかなければ、ユーザーの時間と注意を払ってもらうことはできません。「時間と注意を振り向けてもらうこと」がどんどん厳しくなっている現状を理解することが重要です。

三つのメディアのパワーは拮抗している

――Webマーケティングに取り組んでいても、まだペイドメディアが最も効果的で重要だと捉えている企業は多いかもしれません。わざわざ大金を出して広告を打つのだから大きな効果がある、もしくは効果がないといけないと考えてしまうのでしょうか。

大橋:企業側から考えても、存在感はペイドメディアへの出稿量とは必ずしも一致せず、アーンドメディアやオウンドメディアとのバランスで決まります。十分に広告を打ったと思っていても、ユーザーの中に存在感を残せていないことが意外とありますよね。

――テレビなどかつて言われた4マス媒体にまったく接しない方もいます。

大橋:そうなんです。それに、ペイドメディアに出稿し続ける体力のある企業は限られていますから、疲弊せずにユーザーとエンゲージするためにはトリプルメディアを効率よく利用するしかありません

 旧来の「広告宣伝」という枠組みに区切られたマスコミュニケーションに力を入れている企業はそこに大きな予算を投下しますが、Webマーケティングにはそれほど予算をかけないことが多いでしょう。それはWebマーケティングにはまだ小さいパワーしかないと捉えがちだからです。

 ですが、トリプルメディアそれぞれが持つパワーは拮抗しているんです。とりあえずテレビだけで広告しておけばいいと考えている企業より、Webマーケティングにも均等に注力している企業のほうが巨大なパワーを持っているかもしれないと言えるわけです。もちろんそのパワーと対峙して味方にしなければなりませんが、Webマーケティングはそこがおもしろいんですね。

 この講座では、会社の中で小さなパワーしか持っていないという前提を与えられがちなWebマーケティング担当者の方々に自信を持っていただくことを第一に考えています。

Webマーケティングが持つパワーを感じてもらいたい

――では、具体的にどういった方に受講していただきたいとお考えでしょうか。

大橋:ペイドメディアのパワーを信じてやってきた方や、ペイドメディアを重視している企業のWebマーケティング担当者の方にこそ、Webマーケティングの世界を覗き込み、そのパワーを感じてもらいたいと思っています。小さいと思いがちだった世界が実は大きく、むしろペイドメディアを超えるようなパワーも持っているのだと肌感覚で知っていただきたいですね。

 もちろん、Webマーケティングで何をすればいいのかわからず不安な方、これから勉強したい方も大歓迎です。Webマーケティングに取り組むうえで欠かせない基礎の部分を重点的に扱いますので、2日間のセミナーを受ける準備になるように構成しています。

――受講した方にはどんなことを持ち帰ってもらいたいですか?

大橋:Webマーケティングについてはもちろんですが、それを実践するためにはマーケターとして多様な視点を持つことが必要だと意識してもらえるようになると嬉しいですね。

 企業の中にいると仕事のモードでタスクをこなすため、自分たちの都合に順応して生活者の目線になれていないことがあります。その企業とは関わりなく生活している方からすると、「本当にそうなのか?」と思うはずなんですよね。そのギャップをどう埋めればいいのか考える必要があります。

 先ほどお話しした存在感は、そういった企業と生活者のギャップも含めたうえで成り立ちます。企業側が繕ったことがアーンドメディアで発揮される本音のパワーで暴かれてしまうことは往々にしてあります。会社のルールに自分を最適化し、「これでいい」という気持ちで仕事をしていると必ず限界がやってくるんです。

 存在感を育てるには、本当に様々な考え方や価値観がせめぎ合う中でバランスを保たなければなりません。そのために多様な視点を持つことが必要なんですね。

――この講座ではWebマーケティングの実践的な手法というよりも、それを最大限に活用するために必要な考え方を学ぶことできるわけですね。

大橋:そのとおりです。誰でも、SNSを使っているとき、友人といるとき、家族といるときなど、それぞれの状況に応じたキャラを使い分けていると思いますが、マーケティングを行うのであれば、仕事をしているときでも多様なキャラ、すなわち視点で考えられるようにならないといけません

 また、講座でもお話ししていますが、マーケターは必要な場面で会社の論理に対してNoと言える人になるべきです。もちろん、Noと言うときは自分の感覚を論拠にするのではなく、SNSでの言及数などデータを提示し、「世間が」「ユーザーが」と主語を工夫する必要があります。

 こうした考え方を持ち帰っていただいて、普段の業務に活かしていただければと思います。

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2日で分かるWebマーケティング基礎講座

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/07/07 13:36 https://markezine.jp/article/detail/25566

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