クライアントニーズは検索を“より深く”する方向へ
MZ:では続いて、アイレップに企業事例をうかがいます。ご担当の業務から教えていただけますか?
芝野:私はメディア本部の統括として、運用型広告のメディアと企業を全般的に担当しています。営業部門などにメディアのアップデートをブリッジして後方支援をしています。長谷川はその広告運用部門でプロジェクトマネージャーとしてクライアントに相対しつつ、広告運用に関するR&Dチームで日々ナレッジの開発・蓄積も担っています。元良は営業の一部門の責任者で、ヤフー商材を担当するメディアチームも兼務しています。
MZ:本題に入る前に、まずデジタルを牽引する検索連動型広告の活用状況などをお聞かせください。どういう位置づけになっているのでしょうか?
芝野:クライアントからの評価は引き続き高いですね。動画など新しい広告も出てきていますが、検索行動が起こった瞬間のユーザーを捉えられると再評価されている状況です。その上で、表現ももちろんですがユーザーの訪問履歴やエリア、時間帯など、システム側でカスタマイズしたいというニーズが増えています。端的に言えば“検索をより深くする”ニーズですね。
MZ:その中で、今回の拡大テキスト広告についてはどんな所感を持たれましたか?
元良:運用者として今動かせる変数は入札とクリエイティブですが、入札は自動化が進んでいるので、現場ではクリエイティブがメインになっています。表現する文字数が増えるのは、クリエイティブの幅が広がるので、腕の見せ所ですね。
表現の仕方そのものを見直すきっかけにも
MZ:では、施策を実施してみた感想はいかがでしょうか?
長谷川:企業によりますが、CTRがすごく上がりました。倍くらいの上がり幅です。テキストが増えて文章としても使いやすくなり、表現が具体的になったことが、効果の要因だろうと思っています。R&Dを担うチームも兼任しているので、タイトルと説明文の関係など、まだまだ研究の余地がありますね。運用の負荷も、以前と変わりなく進められます。
元良:表現の幅が広がったことは、そのままテストマーケティングの幅が広がったことに繋がります。文字数の制限が緩くなり、新たなチャレンジができていると感じています。
一方で、コンバージョンが上がっているかというとまだそうでもないケースもあるので、クリエイティブによっては獲得ユーザーの質を下げてしまっている可能性もありそうです。そこは、的確なクリエイティブを生み出すという我々の課題で、さらにノウハウをためているところですね。
MZ:なるほど。具体的な企業事例をうかがえますか?
長谷川:たとえば人材業界C社では、ほとんどがスマートフォンユーザーなので、サービス導入した当初は特にスマートフォンでCTRが2倍以上、しかしCPCも15%増でした。現在はCTRは約3倍になりつつも、CPCは他の広告と変わらず、しかも広告の掲載順位は上昇しています。
これはPDCAを回してチューニングを実施したことによるものですが、CTRが上昇した結果、媒体からの評価が高まったことがCPC低下に寄与していると考えられます。言葉の入れ替えや、自然検索で上位に出ているテキストを入れて試したりして媒体の仕様の理解を深める軸と、時間帯などによってユーザーが何を検索しているかなどのユーザー軸の二つで、最適解を探ります。
その他、大手ECサイトの案件ではCTRが1.5倍向上する一方で、CPCは30%もアップしています。いずれの案件においても、試行錯誤しつつ絶え間ないチューニングをしていきたいですね。
芝野:情報量とプラットフォームの相性はもちろん、単に情報量が多ければ多いほどいいというわけではありません。たとえば、「俳句は短いけれど季語をフックにしていて、短歌はその決まりがない分、長いフォーマットの中で表現を工夫する……」みたいな違いでしょうか。今までの延長上ではなく、情報の選択や表現の仕方を見直す必要があるかもしれません。広い意味で広告表現を見直す時期に入ってきていると思っています。
KPIを可視化して、さらなる最適化を
MZ:文字量が増えたことで、なかなか奥深い効果の追求ができるんですね。今後もスポンサードサーチをはじめプロダクトのアップデートを重ねられると思いますが、最後にヤフーの齋藤さんから、広告サービスにおけるビジョンをお聞かせいただけますか?
齋藤:スマートフォン中心の世界で最適な広告を最適なユーザーに届けていくために、今ビジョンとして掲げているのは、KPI取得の改善です。今よりもっと有効性の高いKPIを可視化してわかりやすく、広告主の皆様がさらに最適な広告を出稿できるように促進していきます。
また、現在β版として提供中のリターゲティング機能の正式ローンチも目指しています。今後も、ユーザーの変化やメディアの進化にあわせて、最適な広告を最適なユーザーへ配信する機能を拡充し、提供していきます。