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第106号(2024年10月号)
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Yahoo!広告活用の今を追う(AD)

進化を続ける検索連動型広告「スポンサードサーチ」、クリエイティブの幅が広がり効果向上を実現

 スマートフォン版やアプリ版Yahoo! JAPANトップページの刷新、それにともなう広告ソリューションのリニューアルと、近年まさにドラスティックな変革を続けているYahoo! JAPANによる本連載。今回は、相次いで機能アップデートを重ねているプロダクトの中から、特にスポンサードサーチに注目。直近で追加された「拡大テキスト広告」と「デバイスごとの入札価格調整率の設定」を解説いただくとともに、そのうち拡大テキスト広告を既に活用するサイバーエージェントおよびアイレップに、企業の事例と実際の効果を聞いた。

スマホシフトが牽引する検索体験の進化

MarkeZine編集部(以下MZ):以前の記事では、YDNの機能アップデートとスポンサードサーチとの併用による効果向上について紹介しましたが、齋藤さんが担当されているスポンサードサーチも着々と進化を続けているのですね。11月には二つの新たな機能もリリースされました。

ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズカンパニー 検索広告事業本部 サービスマネージャー 齋藤菜津子氏
ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズカンパニー
検索広告事業本部 サービスマネージャー 齋藤菜津子氏

齋藤:スポンサードサーチはユーザーの検索行動と深く結びついているので、ユーザーの行動や期待するものが変わればそれに応じて変わるべきだと考えています。今、進化の背景として大きいのは、スマホシフトです。スマートフォンの小さい画面の中で、短時間で検索結果を知りたいというニーズが強くなれば、当然ながら検索に連動する広告であるスポンサードサーチも、短時間で期待により近い答えを提示する必要があります。

MZ:検索連動型広告は、ディスプレイと違ってユーザーの「これが知りたい」という期待にダイレクトに応える性質上、ユーザーの変化やメディアの進化と密接なんですね。特にスマホファーストの流れは、已然として強いと。

齋藤:はい。スマートフォンでのスピード感や、たとえばメニューの位置といったUIの見やすさが、PC画面でも求められるようになっています。この小さい画面で上から下に読んでいく構成を前提に、いかにユーザーが自然に情報を摂取できるかを追求しています。

拡大テキスト広告、さらにユーザーの目にとまりやすく

MZ:では早速ですが、二つの機能アップデート「拡大テキスト広告」と「デバイスごとの入札価格調整率の設定」について教えていただけますか?

齋藤:まず「拡大テキスト広告」は、PC、タブレット、スマートフォンでの広告タイトルの文字数を約2倍に拡大したものです。タイトルに続く説明文も設定できる文字数が少し増えました。より多くの情報をユーザーが見やすい状態で広告に盛り込むことができるので、広告主様が製品やサービスの魅力をもっと豊かに表現できます。またユーザーにとっては、自分が探している情報をもっと探しやすくなります。

デバイスごとの入札価格を調整、スマホ限定の広告出稿も可能に

MZ:シンプルな改変ですが、やはりタイトルは目立つので、そこでの訴求内容を豊かにできると効果も上がりそうですね。

齋藤:ええ、オーガニックの検索結果と近い見え方になるので、広告の内容がよりユーザーの頭に入りやすくなります。実際の施策でも効果が上がっています。

MZ:もうひとつの「デバイスごとの入札価格調整率の設定」は、どういう内容でしょうか?

齋藤:これも、スマホシフトと結びついているものです。実は今まで、スポンサードサーチの入札はPCの入札価格をベースにデバイスごとの価格を調整する仕組みになっていました。要はPCへの出稿が前提になっていて、スマートフォンだけに出稿することができなかったのです。これを解消してデバイスごとの運用を可能にするとともに、調整率の上限も300%から900%に引き上げました(※)。

MZ:では、たとえば「ターゲットがほぼスマホユーザーだから、スマートフォンに振り切る」といった出稿もできると。

齋藤:そうですね、スマホ限定キャンペーンも可能です。このアップデートによって、本当はこうしたいという理想的な出稿の振り分けも実現できるようになるので、ぜひ広告設定を見直していただきたいと思います。広告主様が設定するターゲティングの最適化が進むということは、検索ユーザーにとっても、大きなメリットです。自分が探している情報とのマッチング性が高くなるということだからです。

MZ:なるほど。では続いて、代理店サイドの取材を通して、率直な使い勝手や効果などをうかがっていきたいと思います。

入札価格調整機能とは

クリエイティブで付加価値を生み出す一手に

MZ:既に拡大テキスト広告を活用しているサイバーエージェントから、3名にご登場いただきました。まずはご担当の業務をお教えいただけますか?

写真左から、株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 第2本部 統括 蜷川親将氏同事業本部 第1本部2局 舟橋健人氏同事業本部 第2本部Search戦略局 本間悠也氏
写真左から、株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 第2本部 統括 蜷川親将氏
同事業本部 第1本部2局 舟橋健人氏
同事業本部 第2本部Search戦略局 本間悠也氏

蜷川:ネット広告のうち、SEMを扱う部門を統轄する傍ら、最近部内に立ち上げたサーチ戦略局の局長も兼務しています。今回のテーマの拡大テキスト広告や、クリエイティブ開発などをサーチ戦略局で取り扱っており、本間はそのメンバーです。舟橋は私の部門とは異なり、クライアントに相対する営業部門でコンサルタントを務めています。

MZ:現在の市場でどういった点に注目されているか、全体感からお話いただけますか?

蜷川:トレンドとして注目しているのは、クリエイティブです。拡大テキスト広告もしかりですが、入札をはじめ自動化や機械化が進む分、コンサルタントが自動化しにくいクリエイティブの部分で付加価値を出していくのが大切だと考えています。

MZ:たとえば拡大テキスト広告でいうと、表現の幅が広がることで、やはり試せることも増えてきますか?

舟橋:そうですね、従来の短い広告のタイトルにはキーワードを入れて終わりでしたが、入れられる文字数が増えた分、ジャンプする表現を探れるようになっています。運用は今までどおりなので、ストレスはありません。

本間:スマートフォンからの流入が増えている中、拡大テキスト広告で幅を持たせてクリエイティブも様々な観点から試せることは、ユーザーのスマホシフトの側面から見てもいい流れだと思います。

スマートフォンの小さい画面でインパクト、CTR140%にも

MZ:では、具体的な企業事例をご紹介いただけますか?

舟橋:効果からいうと、驚くほど向上しました。たとえば人材系のA社だとCTRが130〜140%となり、結果的にCPAも85%まで下がりました。検索結果として表示されるタイトルの訴求力は大きいので、施策の実施前から一定の効果はあるだろうと思っていましたが、想定以上でした。

MZ:増えたテキスト部分で、どういった工夫をされたのですか?

本間:旅行系のお客様B社では、新たな訴求ポイントをタイトルの2行目に追加しました。その結果、全体の件数に直接跳ね返ってコンバージョンが1.8倍になりました。

MZ:なるほど、すごく手応えがあったんですね。先ほどスマートフォンの話も出ましたが、そのあたりの相性も感じられましたか?

本間:そうですね、スマートフォンの小さい画面の中だと文字数が増えるだけでも専有面積が広がるので、そのインパクトはPCよりも大きいのではと思います。

蜷川:現状では単純にこれまでのノウハウを適用しただけなので、まだまだ工夫の余地があると思います。A社B社だけでなく全体でもスマートフォン経由のCTRが伸びている状況なので、150%まではいきたいです。

MZ:それは大きいですね。では、機能やヤフー自体へのご要望をうかがえますか?

蜷川:我々としては自動化できる部分は機械に任せて、コンサルタントの業務をよりクリエイティブに変えていきたいので、今後もヤフーならではの表現の仕方を提案していただきたいですね。たとえば人材や旅行、自動車など業界ごとにUIの見せ方を変えるなどです。「世界一の広告効果を出す」ことを目標に取り組んでいるので、今後も協力して好例を生み出していきたいです。

クライアントニーズは検索を“より深く”する方向へ

MZ:では続いて、アイレップに企業事例をうかがいます。ご担当の業務から教えていただけますか?

左から、株式会社アイレップ 執行役員 第1メディアマネジメント本部 本部長 芝野徹也氏第2営業本部 第一営業局 局長 元良一裕氏第1エージェンシートレーディングデスク本部 第3エージェンシートレーディングデスクグループ ATD第2チーム チームマネージャー 長谷川雄大氏
左から、株式会社アイレップ 執行役員 第1メディアマネジメント本部 本部長 芝野徹也氏
第2営業本部 第1営業局 局長 元良一裕氏
第1エージェンシートレーディングデスク本部 第1エージェンシートレーディングデスクグループ
ATD第2チーム チームマネージャー 兼
広告運用トレーニング&ナレッジマネジメント本部 ナレッジマネジメントチーム 長谷川雄大氏

芝野:私はメディア本部の統括として、運用型広告のメディアと企業を全般的に担当しています。営業部門などにメディアのアップデートをブリッジして後方支援をしています。長谷川はその広告運用部門でプロジェクトマネージャーとしてクライアントに相対しつつ、広告運用に関するR&Dチームで日々ナレッジの開発・蓄積も担っています。元良は営業の一部門の責任者で、ヤフー商材を担当するメディアチームも兼務しています。

MZ:本題に入る前に、まずデジタルを牽引する検索連動型広告の活用状況などをお聞かせください。どういう位置づけになっているのでしょうか?

芝野:クライアントからの評価は引き続き高いですね。動画など新しい広告も出てきていますが、検索行動が起こった瞬間のユーザーを捉えられると再評価されている状況です。その上で、表現ももちろんですがユーザーの訪問履歴やエリア、時間帯など、システム側でカスタマイズしたいというニーズが増えています。端的に言えば“検索をより深くする”ニーズですね。

MZ:その中で、今回の拡大テキスト広告についてはどんな所感を持たれましたか?

元良:運用者として今動かせる変数は入札とクリエイティブですが、入札は自動化が進んでいるので、現場ではクリエイティブがメインになっています。表現する文字数が増えるのは、クリエイティブの幅が広がるので、腕の見せ所ですね。

表現の仕方そのものを見直すきっかけにも

MZ:では、施策を実施してみた感想はいかがでしょうか?

長谷川:企業によりますが、CTRがすごく上がりました。倍くらいの上がり幅です。テキストが増えて文章としても使いやすくなり、表現が具体的になったことが、効果の要因だろうと思っています。R&Dを担うチームも兼任しているので、タイトルと説明文の関係など、まだまだ研究の余地がありますね。運用の負荷も、以前と変わりなく進められます。

元良:表現の幅が広がったことは、そのままテストマーケティングの幅が広がったことに繋がります。文字数の制限が緩くなり、新たなチャレンジができていると感じています。

 一方で、コンバージョンが上がっているかというとまだそうでもないケースもあるので、クリエイティブによっては獲得ユーザーの質を下げてしまっている可能性もありそうです。そこは、的確なクリエイティブを生み出すという我々の課題で、さらにノウハウをためているところですね。

MZ:なるほど。具体的な企業事例をうかがえますか?

長谷川:たとえば人材業界C社では、ほとんどがスマートフォンユーザーなので、サービス導入した当初は特にスマートフォンでCTRが2倍以上、しかしCPCも15%増でした。現在はCTRは約3倍になりつつも、CPCは他の広告と変わらず、しかも広告の掲載順位は上昇しています。

 これはPDCAを回してチューニングを実施したことによるものですが、CTRが上昇した結果、媒体からの評価が高まったことがCPC低下に寄与していると考えられます。言葉の入れ替えや、自然検索で上位に出ているテキストを入れて試したりして媒体の仕様の理解を深める軸と、時間帯などによってユーザーが何を検索しているかなどのユーザー軸の二つで、最適解を探ります。

 その他、大手ECサイトの案件ではCTRが1.5倍向上する一方で、CPCは30%もアップしています。いずれの案件においても、試行錯誤しつつ絶え間ないチューニングをしていきたいですね。

芝野:情報量とプラットフォームの相性はもちろん、単に情報量が多ければ多いほどいいというわけではありません。たとえば、「俳句は短いけれど季語をフックにしていて、短歌はその決まりがない分、長いフォーマットの中で表現を工夫する……」みたいな違いでしょうか。今までの延長上ではなく、情報の選択や表現の仕方を見直す必要があるかもしれません。広い意味で広告表現を見直す時期に入ってきていると思っています。

KPIを可視化して、さらなる最適化を

MZ:文字量が増えたことで、なかなか奥深い効果の追求ができるんですね。今後もスポンサードサーチをはじめプロダクトのアップデートを重ねられると思いますが、最後にヤフーの齋藤さんから、広告サービスにおけるビジョンをお聞かせいただけますか?

齋藤:スマートフォン中心の世界で最適な広告を最適なユーザーに届けていくために、今ビジョンとして掲げているのは、KPI取得の改善です。今よりもっと有効性の高いKPIを可視化してわかりやすく、広告主の皆様がさらに最適な広告を出稿できるように促進していきます。

 また、現在β版として提供中のリターゲティング機能の正式ローンチも目指しています。今後も、ユーザーの変化やメディアの進化にあわせて、最適な広告を最適なユーザーへ配信する機能を拡充し、提供していきます。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/12/14 07:00 https://markezine.jp/article/detail/25649