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この発想は小売からは出てこない、「Amazon Go」をオイシックス奥谷氏&西井氏はどう見たか


 レジで会計をすることなく買い物ができるリアル店舗「Amazon Go」の動画が12月5日に公開され、大きな注目を集めました。「Amazon Dash Button」も日本に上陸。奥谷孝司氏と西井敏恭氏は、このイノベーションをどう受け止めたのでしょうか。

 12月7日、東京ビッグサイトで行われた「ダイレクト・マーケティング・フェア2016」(主催:日本流通産業新聞社)の2日目、朝一番のセミナーに、食品ECを展開するオイシックスのキーマンふたりが登壇した。

朝一番のセミナーに多くの参加者が集まった
朝一番のセミナーに多くの参加者が集まった

 西井敏恭氏は2014年、ドクターシーラボを経て自ら会社を設立し、CMOとしてオイシックスに参画。奥谷孝司氏は2015年、良品計画からオイシックスに移籍し、執行役員 統合マーケティング部 部長 COCOとして活躍している。2016年はどのような年だったのか。そして今、マーケターとして何を考えているのか。MarkeZine編集長 押久保 剛がモデレーターを務めたディスカッションの一部を紹介する。

オイシックスで取り組んできたこと

押久保 最初に非常に興味があるところなのですが、オムニチャネルのプロである奥谷さんと、ECのプロである西井さんが加わり、オイシックスに何がもたらされたのでしょうか。

奥谷 通販企業として課題が3つあります。まず、マーケティングが販促寄りになりがちなこと。ふたつめは、お客さんがはじめから見えてしまうのでブランディングを軽視しがちなところがある。最後は、どうしても獲得メインになるのでリテンションを避けがちになること。COCO(Chief Omni-Channel Officer)という肩書きですが、やっているのは統合マーケティングです。KPIがしっかりしていて、数字に強い左脳型の会社なので、良品計画のときとは逆に今は右脳なことをやっています。

奥谷 孝司(おくたに・たかし)氏 オイシックス株式会社 COCO( Chief Omni-Channel Officer)1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に2年出向しドイツ駐在。家具、雑貨関連の商品開発や貿易業務に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「World MUJI 企画」を運営。2005 年衣服雑貨部の衣料雑貨のカテゴリーマネージャー。現在定番商品の「足なり直角靴下」を開発、ヒット商品に。2010年WEB 事業部長。「MUJI passport」のプロデュースで14年日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会の第2回WebグランプリのWeb人部門でWeb人大賞を受賞。 2015 年10月よりオイシックス入社。
奥谷 孝司(おくたに・たかし)氏 オイシックス株式会社 COCO( Chief Omni-Channel Officer)
1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に2年出向しドイツ駐在。家具、雑貨関連の商品開発や貿易業務に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「World MUJI 企画」を運営。2005年衣服雑貨部の衣料雑貨のカテゴリーマネージャー。現在定番商品の「足なり直角靴下」を開発、ヒット商品に。2010年WEB 事業部長。「MUJI passport」のプロデュースで14年日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会の第2回Webグランプリ Web人部門でWeb人大賞を受賞。2015年10月、オイシックス入社。

そのひとつが今年立ち上げたオウンドメディア「VegeTable(べジテーブル)」です。オイシックスは会員にならないとウェブサイトの内部が見えないし、その良さは各家庭から広がっていかないので、オイシックスで何が起きているのかを伝えるために立ち上げました。まだ小さいメディアですが、せっかく作ったので、企業間でつながれるコンテンツプラットフォームを作ろうと思っています。今オイシックスの中で「時短」というキーワードで、それを実現しようとしているところです。そのほかにも動画レシピや、FacebookInstagramにも力を入れていますし、モデルの蛯原友里さんに「ビューティーベジタブルアンバサダー」に就任してもらったのも新しい取り組みです。

4月には、第二の創業ということでロゴが変わり、くまモンなどを手掛けているクリエイティブディレクターの水野学さんと一緒にやっています。僕はブランドの時代がもう一度くると思っているので、獲得だけやって先細るのではなくて、お客さんとともにブランドを作りたい。水野さんが作ってくれたロゴには、取り扱っている野菜がひとつひとつ描かれていますが、これが器となり、そこにみんなの想いが入りやすくなる。これをしっかり広めていきたいですね。

西井 僕は主に、ECでどういう打ち手をもって業績を作っていくかに注力しました。2014年は会員数を大幅に拡大しなければいけない時期として重要な1年でした。広告宣伝費も限られていたので、他社との相互集客やゲーミフィケーションを導入してLPでの離脱率を抑えたり、フォームの改善でページの遷移率アップを図りました。こうした積み重ねで、2年前と比べると、今では毎週の獲得のベースも倍以上に上がってきました。

また、2015年はスマホとPCの購買単価の差を縮めるために、スマホのUIに特化してテストを行い、細かい改善を繰り返してきました。オイシックスはテスト環境が整っているので、ユーザーの下一桁の番号でサイトを出し分けたりして行動を追っていった。また、アプリに関しても最初はすごく単価が安かったのですが、ここもサクサク表示できるように改善しました。しかし、サクサク動くってことは速攻キャンセルされるんですね(笑)。そんなことを繰り返しながらもデータを見ながらテストして、今ではもうPCの単価を超えるんじゃないかな。

西井 敏恭(にしい・としやす)氏 オイシックス株式会社 CMO 1975年生まれ。福井県出身。金沢大大学院を卒業後バックパッカーとなり、2年半をかけて世界を1周。自らのWebサイトにてアジア、南米、アフリカ各地で旅行記を更新。それが口コミで広がり話題となる。帰国後は2003年にEC企業に入社してWebマーケティングに取り組み、モバイルコンテンツ会社を経て2007 年にドクターシーラボ入社。eコマースグループ グループ長などを務め、2013 年末に退職。再び世界1周の旅を経て、warmthを立ち上げるとともに、2014 年8月オイシックス入社。
西井 敏恭(にしい・としやす)氏 オイシックス株式会社 CMO
1975年生まれ。福井県出身。金沢大大学院を卒業後バックパッカーとなり、2年半をかけて世界を1周。自らのWebサイトにてアジア、南米、アフリカ各地で旅行記を更新。口コミで広がり話題となる。帰国後は2003年にEC企業に入社してWebマーケティングに取り組み、モバイルコンテンツ会社を経て2007 年にドクターシーラボ入社。eコマースグループ グループ長などを務め、2013年末に退職。再び世界1周の旅を経て、warmthを立ち上げるとともに、2014年8月オイシックス入社。

広告については過去の経験から、この広告はいける/いけないという勘所がわかっていた。かつては、Instagramでの広告はCPAが上がってしまい、なかなか利益が出なかったけれど、奥谷さんがInstagramを活用するようになって、ここで始めたアンバサダープログラムと広告を掛け合わせることで、従来より広告効果もアップした。広告の手法も、ひとつだけでなく重ね合わせてできるようになってきました。

奥谷 だいぶこの領域も、クリエイティブの重要性に気づくようになってきましたね。西井さんが交通整理をすることで効率の良い集客が可能になり、集めて頭打ちになるところをクリエイティブでぐっと上げられるというのが証明できてくると、ウェブのクリエイティブにも注意が行くようになり、加速して数字がとれている。

西井 デジタルの広告に関して言うと、近年、リスティングのアカウント設計やFacebookのターゲティングの作り方ばかりがフォーカスされてきました。しかしその一方で、AIがどんどん進化している。FacebookやGoogleのAIは僕らより頭がいい(笑)。だから、最近は以前ほど細かい運用や設計をしなくても、類似配信など、ある程度まかせて出稿したほうが広告効率が良かったりしています。そのときの広告の効果を決めるのがクリエイティブ、オイシックスとほかの会社との違いを出していくにはクリエイティブしかないと僕は思っています。

もうひとつ、今はパーソナライズにも取り組んでいます。オイシックスでは、毎週自動で旬な野菜が入るようになっていますが、いらない野菜は消すことができる。でも、人参が嫌いな家庭の場合、毎回人参を消すのは面倒ですよね。そういうところも自動でお客さんが望むものが入っているようにしていきたい。たとえば、ショウガが嫌いなお子さんがいる場合、ショウガをはずすだけでなく、加工食品の中にショウガが入っていないかをチェックして買っているんですね。でもECだったら、あらかじめそういう商品は入れないでおくことができる。その人や家庭の好みを把握して適切な商品を入れるために、仮説を立てながらロジックを作ってやっていく。AI搭載というところまでは行っていませんが、視野には入れています。

奥谷 パーソナライズにはすごく期待しています。普通はサイトを回遊させてお客さんにカートの中に商品を入れてもらう。でもオイシックスではあらかじめ商品をかごの中に入れておいて、能動的にお客さんに「これでいいですよね」と尋ねる。真逆の発想です。それがフィットしていけばいくほど、サクサクと買い物が終わる。回遊させる意味がなくなっていくと思います。

西井 お買い物体験が変わるんじゃないか、と期待しています。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/12/14 12:38 https://markezine.jp/article/detail/25752

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