クリエイティビティのあるインサイドセールス部隊のため、マルケトを導入
JMUGで多くの参加者が最も期待しているのが、先進ユーザーによる取り組みだ。
最初に登場したのは、HDE クラウド営業部 インサイドセールス&デジタルマーケティングマネージャー 水谷博明氏。講演タイトルを「Marketoが育むInsideSalesの『創造力』と『想像力』」とし、BtoB分野のインサイドセールスにおけるマルケトの活用ノウハウについて語った。
HDEは、メールセキュリティやメール配信システムなど、BtoB向けのIT・クラウドサービスを手がける企業だ。そのためターゲットとなるのも「セキュリティ意識が高いこと」「情報システム担当者が在籍すること」に加え、従業員数などの企業規模や、他社クラウドサービスの利用有無など、かなり限られた層になるという。
同社は、サービス開始から数年間は新規開拓を優先し、テレアポを取り営業活動を展開していた。だが客先に行くアウトバウンドセールスは売上目標を持っているため、どうしても案件化の確度が高い方を優先してしまう。この結果、一度アプローチしたものの放置されたリード件数が膨大になってしまった。もともとターゲット層が限定されるため、売上を伸ばすには手持ちのリードを掘り起こさなくてはならない。しかし、その仕組みもリソースもないという状況下において、「具体的に進めたのが、インサイドセールス部隊の新設とマルケトの導入です」(水谷氏)という。
新設したインサイドセールス部隊のミッションは、従来「気合い」と「根性」で培っていた営業スタイルから脱却し、クリエイティビティのある営業部隊を育成すること。そのためHDEでは、マルケトを「リードを生み出すツール」ではなく、あくまで営業活動支援の仕組みとして活用することにした。
アポ獲得率は3倍、商談化件数は従来の2.5倍に
HDEでは営業管理システムにSalesforce、名刺管理にSansanを利用しており、Salesforceとマルケトを連携させて顧客データを共有している。インサイド、アウトバウンドを問わず営業チームが利用しているのは基本的にSalesforceで、マルケトはその営業活動を支える仕組みとして、裏側で機能する仕組みとなっている。
「クリエイティビティのある営業を育成する仕組みには、次の4つの要件が必要だと考えました。すなわち、効率的に電話をかける『作業効率化』、アプローチの最適な時期を見きわめる『タイミング』、アプローチ先を見つけ出す『創造力(クリエイティビティ)』、そして電話相手のことを具体的にイメージする『想像力』です。これらを満たすツールとしてマルケトを選びました」(水谷氏)
現在マルケトは、Salesforceに格納された顧客データや営業活動状況のデータのほか、相手先の規模や決算時期、利用中のメールシステムなどあらゆるデータを共有している。これにより、「決算時期やシステム時期の切り替えタイミングが迫っている企業」に関するメールアラートを出してアプローチを促すほか、かつてアプローチした企業から自社サイトにアクセスがあった際にもアラートを出し、タイミングを逸しない仕組みを構築した。
また営業用メールに関しても、すぐさま相手先に送信できるようマルケトでテンプレートを作成し、Salesforceの画面から送信できるようにした。アプローチ先が尽きれば、企業規模や地域、決算時期などを指定し、自分の手でオリジナルリストを作ることもできる。
そして同社ならではのユニークな取り組みが、ブライトコーブの動画クラウドサービス「VIDEO CLOUD」との連携だ。これはリード獲得用の動画コンテンツを配信するもので、マルケトで作成したランディングページ上で動画を再生する。
「ホワイトペーパーや読み物系のWebコンテンツと異なり、動画はいつ、誰がどこまで視聴したかが分かります。そのため、当社製品に関する相手先の理解度を想像しやすくなり、電話営業の会話が弾むようになりました」(水谷氏)
これにより、アポ獲得率が従来の5%から15%へ大幅に向上。また商談化した件数も2.5倍となり、大きな効果が出た。何より、「これまで中途採用を行う場合IT業界出身者が条件でしたが、インサイドセールスチームを作りマルケトを導入したおかげで属人的な営業スタイルが減り、電話営業に強い異業種からの人材採用も行えるようになりました」(水谷氏)と、事業活動全般において大きな成果が出ていることを明かした。