“数字”で評価しにくいのが広報
広報担当者の悩みとして常に挙げられるのが効果測定です。効果測定は指標(数字)によって行われますが、広報は広告とは異なり、活動効果を数値として把握することが非常に困難です。担当者が自身の活動結果を評価できないことに加え、上司からの明確な評価が得にくいことも問題です。
たとえば、Web上に広告出稿を行った場合は、クリック数やインプレッション数、流入数から離脱数、コンバージョン数まで詳細な数値を取得することできます。
広報の場合、Webメディアにプレスリリースを配信して、記事として取り上げてもらったとしても、その記事のPV数、セッション数は掲載元のWebメディアしか知ることができません。数字を取得するのが難しいことから、広報活動の効果について、曖昧に測られることが多くあります。
それでは、広報活動の効果はどうやって測ればいいのでしょうか。効果測定のパターンを四つ紹介します。
“広報のKPI”4つのパターン
実際に企業の広報担当者が行っている効果測定のタイプを見ていきましょう。
1.“質より量”掲載数重視タイプ
単純にWebメディア、新聞、雑誌、テレビ等に取り上げられた件数のみで効果を測定する方法です。もちろん、より多くのメディアに取り上げられたほうがより多くの人々にリーチできた“はず”だと考えられます。また、「掲載数」というわかりやすい数字を用いるので、目標進捗もわかりやすくなります。
しかし、同じ1記事であっても、どのメディアに取り上げられるかということで大きな違いがあるにも関わらず、“どんなメディアでも1件”として数えていくことで、メディアの知名度・記事の閲覧数からの影響力を効果測定に加味できないことが問題となります。
2.“量より質”ターゲットメディア重視タイプ
掲載されたい「ターゲットメディア」を決めて、それ以外の露出は評価しない方法です。このタイプの場合、かなり多くのケースにおいてターゲットメディアは“日経系”です。この効果測定方法の利点は、目的とするメディアをはっきりさせることにより、アプローチの手法も自ずと定まってくるところです。
一方で、実は影響力が大きいメディアからの効果を無視してしまい、ターゲットメディアのみを追い求める活動、また効果の評価が正しくない盲目的な広報活動になりがちなことがデメリットと言えます。
3.“量も質も、良いとこ取り”ランク付けタイプ
量と質の両方を考慮した効果測定方法です。広報計画を立てる時にまず、ターゲットとなるメディアを、掲載されたい順にABCのランク付けをします。プレスリリースを配信した後、Aに何件掲載されたのか、B・Cには何件掲載されたかをそれぞれ測定していきます。
メリットは、ターゲットメディアを正確に把握して施策を立てることができる点、また重要度の低いメディアでも記事掲載をきちんと評価できる点です。デメリットとしては、メディアごとのランク付けや「Aに何件載ったら成功か」というような定義が難しいことが挙げられます。
4.“広告だったら”で計算する広告換算値タイプ
広告換算とは、記事として掲載された際の露出成果や認知効果を、同じ枠を広告として購入した場合の広告費に換算し、その金額で評価するという手法です。
それぞれの記事が持つ認知力の違いを、明確な数値で表せるというメリットがある一方、数値の絶対数に意味はなく、「前回のプレスリリースに比べて広告換算値が上がった/下がった」というように相対的にしか評価できないことが難点です。
3と4は、どちらも質と量を考慮した効果測定です。私のお勧めは3と4を併せて活用することです。また、特に4においては短期的に効果の良し悪しが判断できないので、中長期的な目線で広報活動の効果を測り、PDCAを回していくのが良いでしょう。
また、「会社として、効果測定の方針を固めること」「ころころと変更しないこと」「会社が位置するステージによって、測定方法を見直す」ということも必要です。
ポイント:マーケターはマーケティング施策全体で効果測定を!
効果測定のタイプを四つ挙げましたが、個人的に、マーケターの方は「プレスリリースはマーケティングの一施策」と捉えて、プレスリリースを配信した効果だけを単独で評価しないことをお勧めします。プレスリリースはマーケティング施策を加速させる効果もありますが、他の施策と併用した時には単独の効果は測りづらいものです。あくまで複合的な施策の一つと捉えてマーケティング施策全体のKPIを求めるようにするのが良いでしょう。