アプリ活用の現場を直撃
オンラインとオフラインをつなぎ、顧客に行動を促す「O2O」。言葉としては流行のピークを過ぎ、もはや当たり前の概念として定着している。一方で、「実践に落とし込み結果を出す」という視点では、取り組みを検討中または、試行錯誤の最中であるという企業も多いのではないだろうか?
全国に26店舗を展開する雑貨専門店R.O.Uは、2016年8月に紙のスタンプカードを廃止し、スマートフォンアプリ(以下、アプリ)の運用を開始した。今回、同社の永野一絵氏にアプリ活用の狙いや、現在の成果、見えてきた課題について詳しい話を聞いた。
店舗や地域に特化した情報の提供を
――御社のマーケティング戦略のなかで、スマートフォンアプリ(以下、アプリ)はどういった立ち位置にあるのでしょうか?
永野:店舗とお客様をつなげるツールとして、アプリを開発したいと考えました。ゆくゆくはロイヤルカスタマーを生み出すツールにしていきたい、という思いがあります。
R.O.Uは現在26店舗ありますが、店舗によって規模感が異なります。また、地域によってのお客様の属性が異なるので、各店舗に合わせた販促策を打つ必要があると強く感じていました。しかし、運営しているFacebookページやwebサイトでは全国一律の情報発信しかできません。これまでは地域に合わせた販促はチラシしかなかったのです。アプリを通して地域や店舗の特性を生かしたコミュニケーションを行い、関係性を強化していきたいと考えています。
そのため、アプリでは「お気に入り店舗」を登録できるようにしています。登録していただくと、優先的にその店舗の情報が通知されるようになります。店別にお気に入り数がどれだけ得られているかをKPIの1指標として運用しています。
――アプリを導入して、できることが増えたかと思います。大きな変化は何でしょうか?
永野:一番大きなところは、プッシュ配信ができる点ですね。お気に入り登録をしていただいた店舗の情報や、年齢や属性別のセグメント配信ができます。また、クーポン利用率や、来店スタンプによるチケット消費、プッシュ配信の開封率など、施策の結果をデータで見られるので、A/Bテストもできています。そこがもう、アナログと全然違いますね。
加えて、リアルタイム性も大きいです。チラシの場合は、情報を事前に仕込む必要がありました。今では、たとえばお昼の情報番組で紹介された商品を、その日のうちに紹介することが可能になりました。これまでのECでは当たり前にできていたことが、アプリを活用することによってリアルの店舗でも可能になりつつあります。
プッシュ配信のコンテンツ準備は、アプリのツールによって複雑さが異なるかと思います。私たちはGMO TECHの「GMO集客アップカプセル」というプラットフォームを使っていますが、それこそ、1時間以内にコンテンツを用意して配信といったことができていますね。
――プッシュ通知は月に何回ほど配信されていますか? また、通知用コンテンツの制作体制を教えてください。
永野:全体配信とセグメント配信をトータルすると1ヶ月あたり60本程度です。コンテンツ制作は私が全て担当していますが、ゆくゆくは店舗側にその機能をシフトしていくつもりです。ですから現在は、パターン化をするために試行錯誤をしている状況ですね。