運用で見えてきたプッシュ通知の開封率と店舗の関係
――アプリの導入で効果は出ていますか?
永野:全てがアプリの効果とはいえませんが、戸塚店では積極的にリアルタイム性の強いプッシュ配信を行っており、店舗の売上が平均で130%〜140%ほど向上しています。点で見たときには、11月の第4金曜日、いわゆるブラックフライデーの売上は200%を達成しました。
また、この店舗でメーカーさんに協力を頂き、化粧品のサンプルと引き換えができるクーポンの配布をアプリで行いました。20代から50代の女性にセグメントして配信を行ったところ、プッシュ通知の開封率が通常平均の約2倍という結果が出ました。加えて、クーポンの使用率も非常に高かったです。いわゆる、通信販売における2ステップ販売のリアル店舗バージョンの実績検証もできました。
店舗運営の改善の面でも知見の蓄積ができています。たとえば、10月にハロウィンの企画で複数回プッシュ通知をして、開封率の平均値で店舗ランキングを出してみました。すると安定した数値を取れている店舗には共通点がありました。その要因をひも解いていくと、ランキング上位の店舗は単純に情報を配信するだけではなく、お店でもお客様にリーチできるようなイベントや企画をきちんと運営していました。
本部が用意しなくても、店舗側がお客様のほうを向いて、イベントに落とし込んでいるわけです。そういった店舗をヒアリングして、その内容をシェアすることで店舗運営全体でも良いサイクルができればと思います。
DL施策に広告費はかけない
――アプリのダウンロード施策はどのようなことをしているのですか?
永野:2016年11月時点で約2万6,000ダウンロードですが、広告出稿などは一切行っていません。店内のパネルやPOP、店員の声かけでのご案内だけです。(広告を打たない理由は)店舗のためのアプリ、お店に来てもらうためのアプリですから、無闇にダウンロードしてもらってもあまり意味がないと考えたからです。完全にマンパワーですね(笑)。
ですが、私たちのような店舗を持っている企業が一丸となってオムニチャネルを推進するには、現場のマンパワーが重要だと考えています。店頭でスタッフが案内することで、消費者がアプリの利用に積極的だ、と実感が持てる。このつながりが理解できれば、システム化しても現場で受け入れてもらえます。
――その視点でいうと、アプリの導入によってユーザーの行動に変化はあったのでしょうか?
永野:たとえば、クーポンの利用率に大きな伸びがありました。これまでも、折り込みチラシやFacebookでクーポンを提供してきたのですが、利用率はとても低いものでした。折り込みチラシの場合は良くて0.5%、Facebookクーポンに至っては0.03%のときもありました。それが、アプリだと安定して約3%、アクティブな店舗だと10%以上と高い利用率です。受け入れていただいているということが、数字として出ていると考えています。
