レコメンドだけでは不十分。IoTで「買いたい」意思も把握
過去の購買履歴を分析し、商品をレコメンドするのは一般的なマーケティング手法であり、今でも広く使われている。しかし小路氏は、「それでは不十分だ」と語る。
「購入する前のお客様の思考、いわば『買いたい』という意思は、実店舗ではなかなか把握できませんでした。その点diipでは、『moptar』という動線分析のツールと連動し、実店舗上でどの商品に興味を抱き、売り場でどの程度時間を費やして、最終的に買ったのかどうかまで把握できるようになっています。それまでウェブサイト上でしかできなかったことが、実店舗でも可能になったのです」
diipが目指すところは、オンライン・オフラインを問わない「顧客の行動パターンの把握」であり、IoTも含めたビッグデータでそれを解析することだ。ウェブと実店舗、双方の行動パターンを把握できれば、「この人はウェブで買う傾向がある」や、「必ず実店舗で見てから購入する」といった「個人単位」でのマーケティングが実現するのである。
「それこそが我々の考えるオムニチャネルであり、実店舗の動線分析まで含めたマーケティングオートメーションの流れを作っているのは、まだ日本で当社しかないのではと思っています」
diipはその他にも、豊富なテンプレートからくる直感的でわかりやすい分析機能や、高度なキャンペーン管理機能、データ連携が容易になるコンバータ機能など、デジタルマーケティングに必要な多くの要素を備えており、それらの開発やサポートが純国産であることも大きな強みである。
組織を変えよ オムニチャネルマーケティング成功に必要な覚悟
大日本印刷では、印刷業などで培った知見、顧客とのリレーション、diipの豊富な機能などを軸に、デジタルマーケティング事業をさらに拡大していく予定だ。「DNPオムニチャネル対応データマネジメントプラットフォームdiip」としているサービス名称も、3月を目処に「DNPデジタルマーケティングプラットフォームdiip」と変更する予定もあるそうだ。
最後に、企業が「お客様起点」でのオムニチャネルなマーケティングを成功させる秘訣について聞いた。
「デジタルマーケティングの世界は、企業主体からお客様主体に考えかたを変える必要があります。たしかにパワーを要しますが、スマートフォンという地殻変動が起きている今、『たいへんだ』などと言っていられる状況ではありません。
お客様起点のマーケティングを実現するには、オンライン・オフライン問わず多様な情報が必要なわけですが、企業によっては、これらが各部門に分かれていることがありますよね。このデータはEC部門の範疇で、これはセキュリティの部門に話を通さないといけないなど。そこがすべて横串、一気通貫でなければ、デジタルマーケティングは成功しません」
小路氏は、長年のマーケティング支援で培った企業の上層部への人脈を活かし、diipの導入を考えているクライアントにも、まず「縦割り組織では、デジタルマーケティングは成功しない」、「組織を変える覚悟をしてください」と伝えているそうだ。顧客の嗜好を捉えるための企業側の変化は、もはや待ったなしの状況といえるのかもしれない。