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細分化したアカウント構造を再構築、YDNを最大限に活かす運用事例

 スマートフォン版Yahoo! JAPANトップページおよびスマートフォン用「Yahoo! JAPAN」アプリの刷新、それにともなう広告ソリューションのリニューアルと、近年まさにドラスティックな変革を続けているYahoo! JAPAN。今回は、アップデートが続いているYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)の最新活用事例として、セプテーニからゲストを招いた。自由度が利くようになったがゆえに細分化が進んでしまった広告運用に、同社は各コンサルティング部を横断でサポートする体制をとることで対応。不要な細分化を排除したことで、運用効率が大きく向上した。

矢継ぎ早のアップデートで自由度高まる

写真左から、ヤフー マーケティングソリューションズカンパニー ディスプレイ広告ユニット Yahoo!ディスプレイアドネットワーク サービスマネージャー 矢吹泰教氏 データ&サイエンスソリューション統括本部 サイエンス本部 リーダー 堀田 徹氏同本部 第一コンサルティング部 コンサルタント 倉友 粋(すい)氏 セプテーニ メディア本部 アカウントマネジメント部 シニアプロデューサー 住友亮介氏
写真左から、ヤフー 矢吹 泰教氏、堀田 徹氏
セプテーニ 倉友 粋(すい)氏、住友 亮介氏

MarkeZine編集部(以下MZ):矢継ぎ早にアップデートしているYahoo!ディスプレイアドネットワーク(以下、YDN)ですが、それを活用する広告代理店の運用も併せて進化していると聞きました。

 今回は、最新のYDNを使いこなして成果を上げられているセプテーニの住友さんと倉友さんに参加いただき、YDNサービスマネージャーの矢吹さん、データサイエンスに携わる堀田さんとともに、具体的な課題とその解決、効果をうかがいます。まず、住友さんと倉友さんの役割を教えていただけますか?

住友:アカウントマネジメント部という部署で、複数存在しているコンサルティング部門を横断してサポートしています。プラットフォームごとのアルゴリズムを分析し、セプテーニとしての運用を定義し、各コンサルタントがスムーズに運用できるよう仕組み化を行っています。

倉友:私は、YDNの運用を担当するコンサルタントです。実際にクライアントと対峙し、日々の運用を進めています。

MZ:YDNは急速に運用の幅が広がっていると思いますが、矢吹さんから現状と、機能が改善したからこそ見えてきたことなどをうかがえますか?

矢吹:YDNは、的確に細かく広告を運用できるようにという観点で機能改善を続けてきました。2016年8月にリリースした、サーチターゲティングのリーセンシーやフリークエンシーの細かい出し分けも、その一環です。ただ、自由度高く最適化できる反面、必要以上に細かい無意味なターゲティング設定を招くこともあり、結果として効率的な広告運用が難しくなってきたという側面もありました。

構造が細分化すると広告の正当評価が難しい

MZ:いろいろとカスタマイズできるようになったからこそ、運用しづらい面も出てきたんですね。アカウント構造が細分化すると、なぜ効果が上がりにくくなるのでしょうか?

堀田:YDNでは様々な機械学習のシステムを活用していますが、細分化することで最も影響を受けるのは、広告の品質を計算する部分です。広告の品質はクリック率と言い換えるとわかりやすいですね。

 広告の品質は、広告の掲載順位や掲載有無を決定する重要な要素になるのですが、これは機械学習のシステムが過去の配信データをもとに学習し、推定しています。機械学習のシステムはデータをたくさん与えるほどより賢く、より正確な品質を計算できるようになります。

 一方、ターゲットや期間を細分化していると、同じシチュエーションでのインプレッションが少なくなりデータが蓄積されないため、品質を正しく評価しづらいという側面もあります。この結果、本当は品質が高いにもかかわらず、正しい評価を受けられていない広告が多く発生していました。

MZ:データが蓄積されないから、機械学習のシステムが賢くならないということですか?

堀田:簡単に言えば、そうですね。そのため配信機会を損失したり、より高い入札価格でないと配信できないといったことが発生していました。

矢吹:たとえば100インプレッションで1クリックの実績と、100,000インプレッションで1,000クリックの実績ではどちらもCTRは1%です。前者はたまたまクリックされただけであり、本当のCTRを意味するとは言い切れません。統計的に有意な傾向を判別させるために、いかに早く十分な量のデータを蓄積させるかという点が重要になります。

 また、YDNのアカウント構造は上から4つあります。残高や請求管理をする「アカウント」、期間や日額予算を管理する「キャンペーン」、オーディエンスや配信面を定める「広告グループ」、クリエイティブをコントロールする「広告」というように役割がしっかり分かれています。

 しかし、性別ごとにキャンペーンを作るなど、役割を無視した構造設計をすることにより、無駄な細分化が助長され、学習データの細分化を招いてしまいます。そのため、なるべく先ほどご説明したように本来の役割にのっとったアカウント構造で運用をしていただきたいと思います。

ピンポイントな施策は可能だが管理が煩雑に

MZ:なるほど。広告を正しく評価できないと、広告主にどのような影響がありますか?

矢吹:効果が良くない広告であっても配信が抑制されない、あるいは効果が良い広告なのに広告が出にくいという状態を招いてしまうことがあります。正しい評価ができないことで、広告配信の機会損失を生むのと同時に、運用判断も誤ってしまいます。

MZ:YDNの構造が細分化したことで、実際に運用しているセプテーニでは、どういう状況になっていたのでしょうか?

倉友:YDNでは様々なターゲティングを掛け合わせることができるので、当社でも年齢・性別、サーチターゲティング、リターゲティングなどを駆使してあらゆるターゲットに網羅的に配信できる構造にしていました。

 その結果利点としては、たとえば「40代女性でこのページを経由したユーザー層だけにリターゲティングをかけたい」といったピンポイントな施策が可能になりました。一方で、確かにキャンペーン数が100以上に細分化し、その先の広告グループで掛け合わせると1万ものパターンを管理する状況になっていました。

 また、矢吹さんがおっしゃったように、最小粒度の広告の階層ですとインプレッションが少なくデータが蓄積されづらいため、広告グループを横断して、クリエイティブの良し悪しを判断している状況でした。

横断的な部署で運用における好例を全体に還元

MZ:各コンサルティング部を俯瞰しているという住友さんは、いかがですか?

住友:当社には多くのコンサルタントがいますが、自由度が高いことで効果が上がったケースもあった半面、打ち手のバリエーションが人によって異なる傾向が出てきてしまいました。これはYDNのアップデートだけに起因する話ではなく、ネット広告の潮流が純広告から運用型広告中心となり、各プラットフォームが競うように機能追加していることが大きな背景にあります。

MZ:確かに、いろいろな広告運用ができるようになると、それだけコンサルタントの経験や発想次第で成果が変わってきますね。

住友:はい。そのため自由度が高い中でも好例を捉えてすぐに横展開し、全体にうまく還元していきたいという考えがありました。

 その考えの元、YDNの機能を最大限に活かすために、ヤフーさんとの定期ミーティングの中で、改めてロジックやアルゴリズム、広告単位でのデータ蓄積の重要性などを教えていただきました。そして、アルゴリズムに沿ったアカウント再構築を行いました。

MZ:そこで自由度を活かして効果を上げた好例は拾い上げ、全体のサービス水準の向上に反映する、と。

住友:そうですね。そもそもの推奨運用もしっかりとアカウントマネジメント部で定義して、各コンサルタントへ展開し、セプテーニとしての正解を提示していこうと考えました。それが、広告代理店の武器になるのだろうと思っています。

意味のない細分化を削り、CPC抑制へ

住友:また、良い、悪いに関わらずなぜ起きたかをアルゴリズムを元にレビューすることで、コンサルタントも無限のABテストのような状態から抜け出せました。また、先ほど倉友が挙げたような細分化についても、ヤフーさんと話し合って、意味のない枝分かれを削りました。

倉友:実際には、CVRがほとんど変わらないのに粒度を分けてしまっていたケースもあったので、それらを大幅に排除して構造を再構築しました。

 たとえば1,000個近くあった広告グループを20分の1程度までまとめたところ、広告の粒度で速くインプレッションのデータが蓄積されるようになり、クリエイティブの良し悪しを迅速に判断し、PDCAの高速化につながりました。また、不要な細分化をなくしたことで、広告ごとに適切な入札を行えたため、CPCが低下する結果となりました。

堀田:セプテーニさんでは、YDNのロジックを理解した上で理想的な再構築を行っていただけたと思います。単に構造をまとめればCPCが下がるわけではなく、データが蓄積され適切に広告が評価されることで、その広告にとって適切な入札価格で配信できるようになったのだと思います。

アカウント構造再構築とコンバージョン最適化の両輪

MZ:ロジックを理解した上でのアカウント構造の再構築、さらに組織も再編したことで、成果が上がるようになったのですね。これら一連の対応を、ヤフーではどうご覧になっていますか?

矢吹:とてもありがたいですね。アカウント構造の再構築は、運用スタイルそのものを見直す必要があるため、そう簡単には決断しにくいことです。

 また、ただやみくもにまとめれば良いというものではなく、無意味な統合では効果を出すことはできません。推奨している構造と実運用では、どうしても一致しない部分が出てきます。我々の推奨している構造とその背景をしっかり理解いただき、実運用に合う形で運用いただけたことが良かったと思います。

MZ:では最後に皆さんから、今後の展望をうかがえますか?

住友:引き続きセプテーニとしての広告運用の正解を追求し、全体の水準を高めながら仕組み化にも取り組んで、当社の武器にしていきたいと思います。

倉友:いちコンサルタントとしては、新たな構造を活用しながらクライアントの意図を汲んだ運用に注力して、強みを出していきたいですね。

堀田:システム的には、今後はコンバージョン最適化の機能の精度をもっと高めて、自動入札の効果も引き上げたいと考えています。

矢吹:アカウント再構築だけでは効率化に限界があります。アカウント再構築によってしっかりと学習させて、その学習データに基づいて自動入札をさせることが最終ゴールだと考えています。現在、コンバージョン最適化機能の抜本的な改善を進めております。アルゴリズムの抜本改善と同時に、広告グループ単位の目標設定ができるようにする予定ですので、ぜひご期待いただければと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/03/29 18:42 https://markezine.jp/article/detail/26110