矢継ぎ早のアップデートで自由度高まる
MarkeZine編集部(以下MZ):矢継ぎ早にアップデートしているYahoo!ディスプレイアドネットワーク(以下、YDN)ですが、それを活用する広告代理店の運用も併せて進化していると聞きました。
今回は、最新のYDNを使いこなして成果を上げられているセプテーニの住友さんと倉友さんに参加いただき、YDNサービスマネージャーの矢吹さん、データサイエンスに携わる堀田さんとともに、具体的な課題とその解決、効果をうかがいます。まず、住友さんと倉友さんの役割を教えていただけますか?
住友:アカウントマネジメント部という部署で、複数存在しているコンサルティング部門を横断してサポートしています。プラットフォームごとのアルゴリズムを分析し、セプテーニとしての運用を定義し、各コンサルタントがスムーズに運用できるよう仕組み化を行っています。
倉友:私は、YDNの運用を担当するコンサルタントです。実際にクライアントと対峙し、日々の運用を進めています。
MZ:YDNは急速に運用の幅が広がっていると思いますが、矢吹さんから現状と、機能が改善したからこそ見えてきたことなどをうかがえますか?
矢吹:YDNは、的確に細かく広告を運用できるようにという観点で機能改善を続けてきました。2016年8月にリリースした、サーチターゲティングのリーセンシーやフリークエンシーの細かい出し分けも、その一環です。ただ、自由度高く最適化できる反面、必要以上に細かい無意味なターゲティング設定を招くこともあり、結果として効率的な広告運用が難しくなってきたという側面もありました。
構造が細分化すると広告の正当評価が難しい
MZ:いろいろとカスタマイズできるようになったからこそ、運用しづらい面も出てきたんですね。アカウント構造が細分化すると、なぜ効果が上がりにくくなるのでしょうか?
堀田:YDNでは様々な機械学習のシステムを活用していますが、細分化することで最も影響を受けるのは、広告の品質を計算する部分です。広告の品質はクリック率と言い換えるとわかりやすいですね。
広告の品質は、広告の掲載順位や掲載有無を決定する重要な要素になるのですが、これは機械学習のシステムが過去の配信データをもとに学習し、推定しています。機械学習のシステムはデータをたくさん与えるほどより賢く、より正確な品質を計算できるようになります。
一方、ターゲットや期間を細分化していると、同じシチュエーションでのインプレッションが少なくなりデータが蓄積されないため、品質を正しく評価しづらいという側面もあります。この結果、本当は品質が高いにもかかわらず、正しい評価を受けられていない広告が多く発生していました。
MZ:データが蓄積されないから、機械学習のシステムが賢くならないということですか?
堀田:簡単に言えば、そうですね。そのため配信機会を損失したり、より高い入札価格でないと配信できないといったことが発生していました。
矢吹:たとえば100インプレッションで1クリックの実績と、100,000インプレッションで1,000クリックの実績ではどちらもCTRは1%です。前者はたまたまクリックされただけであり、本当のCTRを意味するとは言い切れません。統計的に有意な傾向を判別させるために、いかに早く十分な量のデータを蓄積させるかという点が重要になります。
また、YDNのアカウント構造は上から4つあります。残高や請求管理をする「アカウント」、期間や日額予算を管理する「キャンペーン」、オーディエンスや配信面を定める「広告グループ」、クリエイティブをコントロールする「広告」というように役割がしっかり分かれています。
しかし、性別ごとにキャンペーンを作るなど、役割を無視した構造設計をすることにより、無駄な細分化が助長され、学習データの細分化を招いてしまいます。そのため、なるべく先ほどご説明したように本来の役割にのっとったアカウント構造で運用をしていただきたいと思います。