「時間の奥行きを計算する」 長期ビジョンでのコンテンツ設計
なぜ、プルデンシャル生命保険は「生命保険ゼロ」のコンテンツを続けているのだろうか。
「元々弊社では、何千万、何億といった予算をかけて広告を打つという施策をしていません。そのためブランディングは、人脈を通じた訴求というのが従来のやり方でした。しかし、この時代で人脈だけ、というわけにもいきません。そこで、ネットを通じたブランディングを訴求してみようと注目したのが、Facebookの企業ページでした。Facebookでは、お金がかからず、拡散力があります。Facebookを通して、品のある世界観でブランディングを目指しました。
参考にしたのが、海外のある女性用の日用品を展開されている企業のサイトでした。そこでは、『年頃の女の子の悩み』を主なコンテンツにしてファンを作っていくという内容でした。そこでは一切、企業広告がでていないのです。(顧客となりうる)女性ファンが集まっていって、数年後にその商品が必要となった時に、お店で『あ、この会社知っている』というふうに、商品を選んでいくという戦略なのですね。

つまり、『時間の奥行きを計算しながら、ファンを作っていく手法』です。私は前職でリクルートに在籍し、広告業界に携わっており、そういう発想での訴求をするということが非常に記憶に残りました。弊社のブランディングを高めたいと思っていた頃に、Facebookなら弊社が目指すブランディングができるのではと思ったのです」
阪本さんは、大学卒業後にリクルートに入社し企画や人事に関わった後、プルデンシャル生命保険に転職した。ライフプランナーとして現場で活躍された後、現在は経営戦略に関わっている。
「先ほどもお話しましたが、弊社ではお金をかけた広告宣伝をしていません。私自身も必要ないと思っています。やるのであれば、ライフプランナーを信頼いただけるような形が良いと模索していた中で、Facebookに辿り着きました。企画を出した際は、ほぼ全員の役員が懐疑的でした(笑)。が、『やってみないとわからない』と説得しました」
「本当の保険」には、テレビCMは効かない
生命保険といえば、テレビCMを積極的に出す企業が多いが、なぜ同社は広告を出さないのだろうか。
「例えば、『自分のための保険』である入院保険や年金などは、宣伝を見て、自分のために加入される方もいるかもしれません。しかし、私たちが特に力を入れているのは、死亡保険です。ご自身が亡くなられて、遺された家族を守るためのものとしての保険です。『本当の生命保険』は、営業パーソンから説明を受けて、ご自身で深く納得してご契約いただくものなのです。入院保険などは、ご自分のために直接メリットがありますが、死亡保険は身内の方のために入るもの。ライフプランナーを信頼して頂いて加入いただき、その方が亡くなった後もサポートをするのが私たちの仕事です。5年、10年というスパンではなく、20年、30年といったスパンの商品なのです。そういう意味で、テレビでいくらCMを出してもご契約いただけるものではないし、力を入れるべきはCMではなく、ただ人材のみなのです」
あえて生命保険の商品を語らず、人物のストーリーを語りファンを集めていくことで、短期的なスパンで考えるならば、読者がライフプランナーと会った時、また同社からリクルートの声がかかった時などで、「最初のハードル」を低くすることができる。
「本サイトを閲覧されている方と、そうでない方とでは、やはり最初の敷居が変わります。『ああ、“日出ずる国の営業”の会社か』、ということで『会ってみよう』と思っていただけるのです」
Facebookページでは「商品を訴求するのではなく、あくまで間接的に、潜在意識にイメージや認知を高める」というマーケティングだ。では、なぜ同社の企業ページは4万いいね!を獲得するほどの人気になったのか。同社のコンテンツ作りの鉄則はどのような点にあるのだろうか。