国内初の試みで「365日先の航空券」を動的に配信
MZ:離脱前の画面に遷移できるのは、確かに「おもてなし」を感じる施策ですね。このような課題に対して、クリテオさんが貢献できると考えた点は何だったでしょうか?
小野:私たちが最も自信を持つ、得意の技術がレコメンドです。航空券の場合、他の商材と違うのは、膨大な情報量であること。路線、日時、座席のクラスなど様々な、大量の情報を一括管理して最適に処理し、さらにパーソナライズした状態でバナー表示しなければならない。今回、クリテオの技術力によってそれらを可能にして、「そのお客様が離脱前に検索していたページ」にダイレクトに遷移できるようにしました。
MZ:つまり、ユーザーエクスペリエンスとしての価値の提供が、ANAさんへの貢献につながったと。
小野:ANA様のサイトに一度訪れたユーザーは、いわば「ホットな見込み客」です。検索時はコンバージョン(航空券の購入)せず離脱したユーザーが、他のコンタクトポイントで「そう言えば、このチケットを探していたよね」と表示されれば、購買率は上がると考えました。
永山:我々は潤沢なマーケティング予算があるわけではなく、限られた予算のもとで、効率的に収益を上げる必要があります。クリテオさんであれば、配信度合いも絶妙にコントロールできるので、頻繁なプッシュ配信を控えながらおもてなしを実現できると考え、クリテオを導入しました。
MZ:導入にあたって、難しさを感じたことは何でしょうか。
永山:設定後の検索画面は、動的に生成されるページです。商品ごとに固定のURLがあるわけではなく、航空券は365日先までの予約が可能(※一部航路では355日先まで)で、諸条件がリアルタイムに変わるからです。当然マルチリンガルにも対応しなければなりませんでした。運賃データの連携に関しても大きな課題がありました。
ANAが掲載した広告例1。航空機と現地のイメージ写真を掲載している
小野:クライアントの独自環境をベースにした施策として、ANA様独自の環境によるデータベースに基づいた開発は、国内だと初です。必要に応じてクリテオの環境にカスタマイズしながら開発を進め、ローンチしました。本社のパリとも協議しながら、是が非でも成功させたいプロジェクトでした。
個人情報を使わず、リターゲティングができる
MZ:リターゲティングの精度が高くても、個人情報を膨大に保有する企業側は、データ連携の点でセンシティブに感じる場合が多そうです。その点はいかがですか?
小野:大前提として、クリテオのソリューションは一切個人情報を取り扱いません。これで、かなりの部分の不安感を解消できると思います。ANA様側のサイトには、我々が発行するタグを埋めていただきます。タグを通じて個人を特定するのではなく、どのページを見て何をクリックしたのかといった「行動履歴に関するデータ」を収集します。これらの情報に基づき開発されたクリテオのエンジンを通じて、実際に見てきた商品や、お客様の嗜好にあったおすすめの商品を表示します。
永山:当初、このプロジェクトを進めるにあたって社内のオーソライズをとっていくのが難しかったのは事実です。しかし、お客様が求める情報をバナーで表示するには、マーケティング施策上、非常に有益だということを伝えて理解を得ました。