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「顧客の時代はAI搭載クラウド連携で勝負」─ Salesforce XChangeキーノート

 米セールスフォース・ドットコムは、リテールマーケター向けのイベント「Salesforce XChange」を開催した。2016年6月にデマンドウェアを買収後Salesforce Commerce Cloud(以下、コマースクラウド)が立ち上がってからもうすぐ1年。同イベントはデマンドウェアが開催していたイベントの後継イベントとなり、今年は約1,800名のブランド企業のEC担当者が来場。会場内には展示ブースはもちろん屋外でのネットワークキングパーティーなども催され、リテール分野におけるマーケティングの最新トレンドが共有される場となった。

 初日のスピーカーのトップバッターを務めたのはSalesforce Commerce Cloud CEOのジェフ・バーネット氏。モバイルの普及に加えAI、IoTの発展も見込まれる状況の中、生活者はテクノロジーに囲まれて日々を過ごすことが日常となった。企業はそういった現実を理解し時代に即した考え方や方法を取り入れ対応することが急務だ。同社は数年前から「The Age of the Customer(顧客の時代)」というメッセージを発信している。急速なスピードで変化する現状に対してバーネット氏は「自分はランナーだがランニング中もテクノロジーに囲まれているよ」と自身の生活体験を踏まえつつ次のように語った。

 「今まさにパラダイムシフトが起こっています。象徴的なのがモバイルファーストの時代になっていることでしょう。予想を超える変化に対して企業は迅速に対応し、時代に合わせた顧客との関係構築を行なっていかなければなりません。それを実現するためにはテクノロジーが不可欠です」

Salesforce Commerce Cloud CEO ジェフ・バーネット氏
Salesforce Commerce Cloud CEO ジェフ・バーネット氏

 コマースクラウド自体も時代の変化を見据えたアップデートが進められている。その中でも特に注目なのがセールスフォース・ドットコムが提供するAI「アインシュタイン」が、コマースクラウド含め各クラウドサービスにデフォルトで組み込まれていくことだ。さらに顧客接点の複雑化が進む中包括的なカスタマージャーニーを設計する手立てとして、顧客中心の考え方に立ちその上で各クラウドサービスを連携させる手法をバーネット氏は紹介。それによって部分的ではなく、包括的なカスタマージャーニーが設計できるというわけだ。

 アインシュタインや各クラウドサービスの連携については、バーネット氏からバトンタッチを受けた、米セールスフォース・ドットコム チーフプロダクトオフィサーのアレックス・デイヨン氏から全体像が語られた。同氏は各クラウドサービスが連携された図を「レインボークラウド」と表現し、連携することで包括的なカスタマージャーニーを描けることを強調した。

米セールスフォース・ドットコム チーフプロダクトオフィサー アレックス・デイヨン氏

米セールスフォース・ドットコム チーフプロダクトオフィサー アレックス・デイヨン氏

 「顧客接点が複雑化する中、包括的な視点からカスタマージャーニーを設計することが企業にとっての喫緊の課題です。この課題に対して弊社が提案する解決策は顧客視点に立ち各クラウドサービスを連携させることです。コマースクラウド、マーケティングクラウド、コミュニティクラウドなど各領域における最も優れたクラウドサービスを連携することで、部分的ではなく包括的な視点でのカスタマージャーニーの設計が可能となります」

 続けてデイヨン氏は「今年をイヤー・オブ・アインシュタインと位置づけている」と強調。顧客データとAIとセールスフォースのプラットフォームの掛け合わせは「世界で一番スマートなプラットフォーム」と胸を張った。コマースクラウドの新機能として発表されたプレディクティブソート(Predictive Sort)も、アインシュタインが搭載されたからこそできた機能。このような動きが各クラウドサービスでも推進されていくわけだ。

 このようにセールスフォース・ドットコムはサービスの拡充およびアップデートをスピーディーに進めているが、それを使う側はどのように活かしているのだろうか。いくつかのデモが紹介されたがその中からニューバランスの例を紹介しよう。

 デモではティムというニューヨークシティマラソンにエントリーした架空の男性をカスタマーとして設定。コマースクラウド、コミュニティクラウド、アップクラウド、マーケティングクラウドを用いて「マラソンランナージャーニー」を描いた。

 ニューバランスがニューヨークシティマラソンにスポンサードしているため、ニューヨークシティマラソンのサイト内に掲載されているバナークリックを行動の起点とし、ティムの行動に対してニューバランスがどのような体験を提供したかが具体的に紹介された。以下はティムの行動とその行動に対して提供された体験だ。

  1. バナーをクリックしニューバランスのECサイトの商品ページへ。商品ページではアインシュタインがコミュニティページをレコメンド。コミュニティページを閲覧
  2. コミュニティページ内でフットスキャンの存在を知りストアへ訪問。ストアで自分好みにランニングシューズをカスタマイズできるサービスを知り自分のPCで試す
  3. そのサービス内にバーチャルリアリティで工場の様子を体験できるアプリがあることを知り、ダウンロードし体験
  4. 気持ちが高まりそのままアプリ経由でランニングシューズを購入
  5. 購入後のサンキューメールで自分好みの時計がお薦めされ追加で購入
  6. 本番を迎え無事完走。ティムはハッシュタグをつけ完走したことをTwitterへ投稿
  7. ティムの投稿をニューバランスがハッシュタグから抽出。おめでとうのコメントを送る

 ポイントはティムの一連の行動に対して各クラウドサービスを連携させることで、各シーンごとの最適な体験提供が実現できている点だ。たとえば気持ちを高め購買させたら終了ではなく、本番後のティムの行動に対しハッシュタグから投稿を抽出し「おめでとう」のコメントを送りエンゲージメントを図るなど、包括的なカスタマージャーニーが描けている点がポイントとなる。

 さらにセールスフォース・ドットコムでは、各サービスを使いこなせるようになるための機会も提供している。「Trailhead(トレイルヘッド)」というラーニングサイトでは豊富な学習コンテンツを用意。先進的な活用を進める個人をTrailbrazer(先駆者)と呼んでいる。「今回もたくさんのTrailbrazerにご登壇いただいていますが、このサイトを通してもっとTrailbrazerを増やしていきます」(バーネット氏)

 午後のキーノートでは、米セールスフォース・ドットコム会長兼CEO マーク・ベニオフ氏とヴァージン・グループ創設者のリチャード・ブランソン氏のトークセッションが行われた。両氏からはジョークを交えつつ、社会課題に対するそれぞれの考えが明かされ会場を沸かせていた。

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MarkeZine(マーケジン)
2017/05/20 00:06 https://markezine.jp/article/detail/26515

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