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日本の常識にとらわれない! 百度の検索データから探る「中国で成果を出すための3原則」

 5月29日から6月1日に行われたアドバタイジングウィーク・アジアの2日目、百度日本法人の和田彩美氏とヤフーの坪井伸展氏による「中国デジタルマーケティングで効果を出すための3原則」のセッションが行われた。両社は昨年11月に業務提携を発表し、ヤフーは百度広告を販売する日本総代理店となっている。訪日外国人客向けのインバウンド訴求や越境ECが注目される中、百度の膨大な検索データを活用したデジタルマーケティングのポイントが語られた。

中国のネット人口は日本の約7倍

和田:百度日本法人(以下、バイドゥ)の国際事業本部に所属する和田彩美と申します。本日は、ヤフーの坪井さんと一緒に「中国デジタルマーケティングで効果を出すための3原則」をテーマに講演をお届けします。坪井さんからも自己紹介と今日の意気込みをお願いします。

2人写真
左:バイドゥ株式会社 国際事業本部 検索事業部 事業部長 和田彩美氏
右:ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズカンパニー
検索広告事業本部 カテゴリーインサイト部 部長 坪井伸展氏

坪井:ヤフーのカテゴリ―インサイト部の坪井伸展です。実は、日本と中国マーケティングに関する考え方には共通する点が多いんです。本日はリスティング広告のサービス提供をしてきた立場から、中国デジタルマーケティングのヒントをお話ししたいと思います。

和田:はじめに、中国のネット市場について説明します。現在、中国の人口は約13億8,000万人。ネットの普及率が53%なので、ネット人口は約7.3億人です。

 その中で百度が提供する検索サービスは、ユーザー数は約6億とネット人口の8割以上をカバーし、1日の平均検索数は約60億回に上ります。検索の他にも、百度地図や旅行・ニュースなど多くのサービスがあり、Yahoo! JAPANのようなポータルサイトに近い展開をしています。

坪井:日本のネット人口は約1億人ですから、スケールが全然違いますね。それだけチャンスがあるということが、中国のマーケット規模から理解できると思います。

膨大な検索データからユーザーインサイトを読み取る

和田:では本題である「中国デジタルマーケティングで効果を出すための3原則」に話を移していきましょう。まずは、「原則1:ユーザーを知る」についてです。

坪井:ユーザーを知ることはビジネスの基本ですが、何もないところから中国のお客様や消費者のインサイトを知ることは難しいですよね。そこで、検索データを活用し、ユーザー像をつかむ方法を解説していきたいと思います。

和田:百度では、リアルタイムで検索されている急上昇ワードや1週間の検索ランキングを見ることができます。その他にもエンタメ・車などのカテゴリごと、ユーザーが住むエリア別など、様々な切り口で検索データを確認することができます。

坪井:たとえば、車カテゴリの検索ランキングを見ますと、2位と3位にホンダとトヨタが入っています。日本のメーカーやブランド名が、中国でも検索されていることがわかりますね。

和田:また、百度が提供している百度指数というマーケティングツールを使うと、ユーザーのインサイトを推測することができます。「日本旅行」というワードを入力して検索しました。

 すると、図のように「日本旅行」と一緒に検索しているキーワードを見ることができます。円の大きさが検索量を表していて、円の中心へ近づくにつれ相関性が強くなります。

坪井:「攻略」と「民宿」というキーワードがありますが、どのような意味でしょうか?

和田:中国語で「日本旅行攻略」は、「どれだけ効率的に日本旅行を楽しむか」を意味しています。「民宿」は、ブームになっている「民泊」のことです。つまり、「日本旅行」というキーワードを検索しているユーザーは、「効率よく日本旅行を楽しみたい」「ホテルではなく民泊を探している」というインサイトがわかります。

知っておきたい、中国の検索事情

和田:このインサイトを調べる際1つ気をつけたい点があります。それはスペースを入れずに検索するということです。日本では「日本 旅行 おすすめ」のように、各ワードの間にスペースを入れて検索をしますよね。しかし、中国ではスペースを入れません。「日本旅行攻略」と1つの文章のように検索します。これが、百度指数の検索クエリページに表示されるので、間違えないようにしたいですね。

坪井:中国は文章で検索をするんですね。では、百度のリスティング広告を運用する際も、日本で使っている検索ワードを中国語に翻訳しただけでは、あまり意味がないということですね。

和田:そうですね。まずはコアとなるキーワードを用意して、ユーザーが実際に検索しているキーワードは何かを検証すると、リスティング広告で購入すべきキーワードや展開すべきキャンペーンが見出せると思います。

坪井:続いて、検索データから消費のトレンドを考えてみましょう。消費トレンドは、予算配分や何をプロモーションするかを判断するのに大切な情報です。たとえば6月に入ると、「父の日」「浴衣」「お中元 早割」といった検索が日本では増えるという傾向があります。中国ではどういったトレンドがありますか?

和田:2017年の2月から過去2年間分の化粧品業界における検索推移を見てみますと、8月に検索数が増えています。これは中国の旧暦の七夕にあたりまして、男性が女性へプレゼントを贈るイベントがあるのです。つまり、プレゼントとして化粧品を選び検索をしているということが読み取れます。

 また、2016年10月に検索数が増えていますが、これは中国で放映された韓国ドラマの影響です。主人公が使っていた口紅が非常に人気となりまして、ちょうどクリスマスの限定カラーが発売になったことから、検索数が跳ねたのです。

坪井:検索データからユーザーのインサイトや消費トレンドが現れるのは中国も日本も同じということがわかります。ぜひ検索データを参考に、プランニングへつなげていただきたいと思います。

検索クエリデータの量を知り適切な配信ボリュームをつかむ

和田:続いては「原則2:ボリュームを知る」について解説します。

坪井:実際にプランニングをするときは、予算配分を考えますよね。そのために、マーケットの規模や検索クエリの量などのボリュームを知ることが重要になってきます。

和田:ビッグワードにあたる「日本旅行」は、完全一致でも年間450万回検索されています。

坪井:多くのユーザーが「日本旅行」について関心を持ち、検索しているということですが、その反面検索クエリのボリュームが大きすぎます。出稿プランを調整しないと、1日の予算が一瞬で消化されてしまうということになりかねません。

和田:適切に広告を配信するため、エリアごとにユーザーを見るという方法があります。たとえば、2016年の訪日外国人数は約2,400万人。そのうち、4分の1の600万人が中国本土から来ています。では、中国のどこからなのかを調べてみますと、北京と上海、広東省など5つの省を含めた沿岸部の7エリアが中国からの訪日者数の80%を占めているのです。

坪井:インバウンドのプロモーションならば、中国全土ではなく、このエリアに対して重点的に行えば良いということですね。

和田:次に検索する時間帯もチェックしてみましょう。PCでの検索量のピークは8時から10時です。これは、中国のビジネスパーソンが出社後に検索をしているのだろうという予測が立てられます。

坪井:やみくもに出稿して偶然出たインプレッションやコンバージョンのデータでは、次に活かすための検証がしづらくなります。地域・曜日・時間帯など検索データから検索クエリのボリュームをつかみ、適切な予算配分・配信ターゲットを判断するのがベストです。

百度リスティング広告、プランニングのコツは

坪井:最後は「原則3:コミュニケーションを知る」です。ユーザーと広告の接点を知るということですね。そのためには、KPIとKGIの設定が重要になります。

和田:ここで原則3を体現した、百度が支援した韓国の免税店のインバウンドキャンペーン事例を紹介します。

 広告キャンペーンを3つ立てていて、それぞれに違うKPIを設定しています。1つ目がブランド認知。中国で人気のあるタレントを使って、韓国の免税店のブランディングを行いました。2つ目が会員登録ですね。会員登録を促して、免税店の商品から欲しいものを事前予約できるようにしました。そして3つ目は越境ECです。ユーザーが帰国した後でも、免税店のサイトで購入してもらうという流れを作っています。

坪井:インバウンドマーケティングの中でもブランディング、来店促進、越境EC(会員獲得)3つのKPIを置いているということですね。インバウンドのKPIはクーポンのダウンロード数を置くことも多いのですが、新しいKPI設計の仕方で良い事例だと思います。

和田:ちなみに、坪井さんおすすめのプランニング方法はありますか? 中国はマーケット規模が大きい分、ブランドワードだけに絞ってキャンペーンを実行されるケースがあります。しかし、「結果がわからない・効果が上がらない」というフィードバックも多いのです。

坪井:たとえば、配信クエリのボリュームが大きいビッグワードやブランド関連ワードはエリアを絞り、商品名やブランド名など購入・獲得に近いワードの場合は、配信先のエリアを中国全土に広げてみるという方法です。インバウンドのプロモーションの場合なら、ビッグワードは先述したような訪日者数が多いエリアに絞り配信するのも良いかと思います。

 リスティング広告で潜在層に認知を広めていく。日本では考えられない手法ですが、認知は必ずしもディスプレイ広告で行う必要はないのです。日本での成功事例や思い込みから離れて、アイデアを持ってリスティング広告を運用することが大切です。

リスティング広告は認知目的でも使える

和田:あらためて3原則をまとめます。「原則1:ユーザーを知る」というのは、検索データからユーザーのインサイトや消費のトレンドを知るということ。続いて「原則2:ボリュームを知る」は、中国マーケットの規模を把握して、キャンペーンやご予算に適切なターゲティングを導きだすことです。

坪井:そして「原則3:コミュニケーションを知る」は、巨大な市場の中で、広告とユーザーの接点を考えるということですね。日本では、リスティング広告の目的を購入・獲得に置くことが多いです。しかし、中国の検索ボリュームを考えますと、リスティング広告を認知目的として活用することもできます。KPIやKGIを設定し、PDCAを回すことが大切なのです。

 マーケットが違ってもマーケターが行うことは同じです。中国には大きなビジネスチャンスが眠っているので、今後チャレンジしてもらえたら嬉しいです。

和田:東京オリンピックも控え、ますますインバウンドマーケティングは盛り上がっていくと思います。今後、中国でのデジタルマーケティングを展開する際には、ぜひ百度の検索データ、リスティング広告を活用いただきたいですね。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/06/22 10:00 https://markezine.jp/article/detail/26621