ネガティブな口コミ、活かすために必要な姿勢とは?
とにかく炎上に敏感な日本企業では、思い切った企画を立てにくいことは容易に想像がつきます。しかし、その意味では、SNS上で盛り上がっているモノやコトに上手に乗っかり、積極的にユーザーとコミュニケーションを図るTwitterの“中の人”(アカウントの運用担当者)の姿勢は参考になると感じます。例えば、タニタやシャープなどの企業公式アカウントはTwitter上で話題のネタにフットワーク軽く参加し、そのツイート自体が話題化したり、まとめサイトやバイラルメディアなどを経由した情報拡散につながったりしています。
これらの企業アカウントは、時には実際に炎上するようなケースも見受けられますが、そのようなリスクを取りながらも日々情報発信することで、生活者のなかに着実にブランドへの愛着を育んでいます。このようなスタンスは、これからのブランドコミュニケーションやプロモーション施策の企画・設計にとってより重要になってくるでしょう。
SNSアカウントを持たない、というリスク
最後に、SNSアカウントを持つことに対する企業の姿勢についても言及したいと思います。私は、コミュニケーションディレクターとして、様々な企業やブランドに関わっています。その中で感じるのが、企業公式SNSアカウントを持つことに対する過剰なまでに保守的な姿勢です。誰もが知っているような著名ブランドであっても、いまだにSNSアカウントを持たないというケースも少なくありません。
マスやデジタルのメディアプランやクリエイティブには細部までこだわる企業であっても、SNSアカウントに関してはプロモーションごとにアカウントを閉じてしまい、生活者とのつながりをみすみす断ち切ってしまうような行動を取っていることも多いです。そして、そのような対応は往々にして「何があるかわからない」という漠然とした恐れから来ています。
しかし、SNSが生活者の情報収集や情報発信に欠かせないプラットフォームになりつつある現在、SNSを活用しないというスタンス自体が、むしろリスクとなってくるかもしれません。
スマートフォン、SNSの浸透により誰もが平等に情報発信できる時代が訪れ、情報発信力という意味ではもはや企業も個人もフラットな関係です。そうしたなか、企業と生活者に関わるコミュニケーションであっても、企業がハンドリングできない場所でより“リアル”なコミュニケーションが発生する事態が起こり始めています。
企業に関するリアルな情報に誰もがたどり着ける状況にあるなか、企業やブランドが伝えたいポジティブな情報だけを一方的に生活者に伝えることはもう不可能です。企業やブランドに対する「ネガティブな情報がある」ことを前提としながら、「自身も完璧ではない」ことを軽やかに伝えられる企業、ブランドのほうが生活者の共感を得られやすいのではないでしょうか。
