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MarkeZine Day 2025 Retail

SNS起点で生まれるマーケティングトレンド

ネガティブな口コミ、野放しにしてませんか? ピンチをチャンスに変えるSNS起点のコミュニケーション

3つの事例に学ぶ「ピンチをチャンスに変える」コミュニケーション

 ここからは、ネット上のネガティブな話題を自社の認知、好意形成にまでつなげた3つの事例をご紹介します。

おもしろ比較でブランドの好意度UP

 最初に挙げるのは、少し前にSNSを中心に世界中で大きな話題となったIKEAのバッグ「フラクタ」に関する事例です。

(http://www.acne.se/case/ikea-balenciaga 広告代理店「ACNE」サイトより)
訳:IKEA フラクタの見分け方。1)振るとカサカサ音がする。2)ホッケーの道具、レンガ、水まで運べる。
3)汚れたら庭のホースでキレイにできる。4)たった$0.99

 これは、ファッションブランドのバレンシアガが発表した日本円で20万円以上するバッグが、約100円のIKEAのショッパー「フラクタ」に激似だというSNS上の話題に迅速に応えて制作されました。フラクタがバレンシアガのバッグと比べて、いかに“ホンモノ”であるかを説明したユーモラスな内容です。

 およそ20万円のバッグが100円ほどのバッグに似ているという話題は、バレンシアガにとって決してプラスの話題ではありません。しかし、IKEAは、たった一枚のウィットに富んだクリエイティブで、相手を貶めることなく自身のブランドやバッグが持つ機能性や提供価値を鮮やかに再提示し、ブランドの好意度を向上させることに成功しました。

マイナス要素をものともしないリッツのリブランディング

 次に挙げるのは、昨年、AbemaTVで番組として放送され、ネット上で大きな話題をさらった「最後のリッツパーティー」です。

 2016年8月、ライセンス契約の終了により、ヤマザキナビスコによるリッツやオレオの製造、販売が終了となりました。このニュースを受けて「もうリッツパーティーが開けなくなる」などといったコメントがSNSで拡散されていました。

 そこに目をつけて開催されたのがAbemaTVの報道番組『AbemaPrime』での「最後のリッツパーティー」です。これは長年リッツのCMに出演してきた女優の沢口靖子さんをゲストに迎えた企画で、弦楽四重奏の生演奏と共に催された華やかなリッツパーティーの様子は、SNS上で大きな話題となりました。

 「ブランドの終了」というタイミングであっても、生活者が話題にしている要素を上手にピックアップし、生活者が喜ぶコンテクストで形にした好例です。パーティーの最後には、しっかりと後継品であるルヴァンの宣伝も入れ、これまで築いたリッツのブランドイメージや資産をうまく引き継ぐことで新ブランドの認知施策としても機能させています。

ネガティブなコメントに立ち向かったUNDER ARMOUR

 最後は、さらに遡りますが、SNS上のネガティブな口コミを美しいほどのブランディングコンテンツへと昇華した代表的な事例をご紹介します。米国のスポーツウェアブランドUNDER ARMOURによるムービーで、2015年の「カンヌライオンズ」のサイバー部門でグランプリを獲得した「I WILL WHAT I WANT」です。

 「I WILL WHAT I WANT」は、男性的なイメージがつきすぎていたUNDER ARMOURのリブランディングを図るためのキャンペーンとして2014年に開始されました。第1弾のムービーではバレリーナを起用し、彼女が踊る姿に重ねて「I WILL WHAT I WANT(なりたい自分になる)」というメッセージを発信し、好評を博していました。(第1弾のムービーはこちら)。

 しかし、その第2弾としてスーパーモデルのジゼル・ブンチェンを起用したところ、「彼女はただのモデル」「(アスリートではなく)フェイク」など、辛辣なコメントがSNS上にあふれる事態になってしまいました。しかし、そのような状況にも臆せず、むしろ真正面から向き合うことでUNDER ARMOURのメッセージを強く印象付ける形となったのが冒頭のムービーです。

 SNS上にあふれるネガティブなコメントが投影された室内でサンドバッグを一心に蹴り上げる彼女の姿が、まさに周囲の意見に惑わされることなく「なりたい自分になる」という同社のメッセージをより一層力強く生活者に届けています。

 このように、ブランドを取り巻く「ネガティブ」な情報や口コミに、ブランド自身が能動的にアプローチして、ポジティブな話題やメッセージへと転換しようとする試みは少しずつ増えています。

次のページ
ネガティブな口コミ、活かすために必要な姿勢とは?

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この記事の著者

大月 均(オオツキ ヒトシ)

 株式会社スパイスボックス コミュニケーションディレクター。マーケティング会社でのキャリアを経て、 2014年よりスパイスボックス。化粧品、ラグジュアリーブランド、通信、保険、カード、製薬、飲料など多方面のクライアントを担当。ソーシャルリスニングにもとづくプランニングやSNSを活用した統合コミュニケーション設計を得...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/08/30 10:00 https://markezine.jp/article/detail/26982

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