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メディア業界全体の健全化へ アドフラウド対策ツールSpiderAFを導入したアイモバイルの取り組み

 悪意あるシステムなどによる広告詐欺、不正広告の総称であるアドフラウドは、企業のマーケティング活動を阻害するほか、メディアの信用にも影響を及ぼす。アドネットワークを運営するアイモバイルは、早くからアドフラウド対策に取り組み、昨年秋からAIを使った対策ツールSpiderAFを導入した。本記事では、アイモバイルの甲斐氏とSpiderAFを提供するPhybbitの大月氏に最新のアドフラウド対策について聞いた。

アドネットワーク事業者のアドフラウド対策とは?

MarkeZine編集部(以下、MZ):本日は、アイモバイルが取り組むアドフラウド対策について話をお伺いします。まずは、自己紹介からお願いします。

甲斐:アイモバイルが運営するスマートフォンとPCのアドネットワーク「i-mobile」の責任者をしております甲斐と申します。

 弊社アドネットワークは大手優良メディアさまの広告在庫を多く保有しており、バナー・ネイティブ広告で国内最大規模の配信在庫を保有しております。

 フィーチャーフォン時代からアドネットワークを運営していましたが、サービス開始当初から配信先メディアごとに広告効果を全て開示しているため透明性の高いアドネットワークとして、大手代理店・広告主さまにも安心してお取引いただけるのが強みです。

左:株式会社Phybbit(フィビット)代表取締役 大月聡子氏
株式会社アイモバイル 執行役員 アドプラットフォーム事業本部 アドネットワーク事業部 部長 甲斐康浩氏

MZ:続いて大月さん、お願いいたします。

大月:私はAIを活用したSpiderAFというアドフラウド対策ツールを提供しているPhybbit(フィビット)にて代表取締役を務める大月聡子です。同ツールは2016年夏にリリース後導入者数を増やしており、アイモバイルさんには、同年秋から導入いただいています。

ブランドセーフティやビューアビリティを脅かすアドフラウド

MZ:では、アドフラウドについて詳しく教えていただけますか。

甲斐:アドフラウドは、広告に対して不正なアクションを起こし不当な広告収入を得る行為のことをいいます。成果報酬や従量課金のビジネスモデルに多く見られ、広告表示やインストール、クリックという成果が発生するアクションを不正に起こしてしまうのです。

 わかりやすい例として、クリックファームやbotで大量にクリックを発生させるというケースがあります。アドフラウドの定義は広く、アイモバイルではビューアビリティの侵害もアドフラウドのひとつと考えています。

MZ:ビューアビリティは、「ユーザーに正しく広告が見えているか?」という視点ですよね。

甲斐:その通りです。アドフラウドの中には広告枠を重ねたり、ユーザーから広告が見えないような設定をしたりして、インプレッションや動画広告の再生回数だけを不当に稼ぐものもあります。

 また、ビューアビリティと同列で語られることの多いブランドセーフティとアドフラウドも関連性が高いです。ちなみにブランドセーフティとは、広告が安全で適切なサイトに掲載されているかという考え方です。

大月:アドフラウドのひとつに、スプーフィングという手口があります。これは、IPをなりすますことで本来掲載を意図していないサイトへ、広告が配信されてしまうというパターンです。たとえば、アドフラウドの観点から安全なサイトへ広告を配信しているつもりが、IPのなりすましで実際には反社会的なサイトに配信されていたというケースがあります。これでは、ブランドセーフティが守れません。

日本でも無視できない問題に

MZ:アドフラウド対策を考えるときに、ビューアビリティとブランドセーフティの視点も外せないということですね。つまり、メディアと広告主両社の課題であるということでしょうか。

甲斐:アドフラウドが注目されてきた理由のひとつに、米P&Gの最高ブランド責任者マーク・プリチャード氏のスピーチ(2017年1月の広告業界団体IABのカンファレンスにおける)があると思います。不正メディアや広告詐欺などデジタル広告の課題点に触れ、多くの支持を得ました。デジタル広告はテクノロジーの進化に合わせて成長してきました。市場が成熟したことにより、改めて広告のあり方について考えるタイミングなのかもしれません。

MZ:日本でも対策の必要性は高まりつつあるのでしょうか。

大月:そうですね、日本でも現在多くのアドフラウドが検知されています。現在弊社のSpiderAFで日本の起きているアドフラウドの状況を確認していますが、半数以上が日本のサイトで検知されているので、対策は間違いなく必要だと思います。

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広告主のKPIが変化し、健全な広告配信環境がマストに

MZ:そのほか、アドフラウド対策が注目されてきた理由にどんなことがあるのでしょうか。

甲斐:広告主さまのKPIに変化が出てきたからではないでしょうか。スマートフォン広告のアドネットワークが始まった2011年頃のKPIは、CPCやCPAが重要な指標でした。

 現在では、広告費用対効果であるROASを重視したいという声が増えています。

 また、ディスプレイ広告からリッチ広告・動画広告と広告のフォーマットの種類も変化しています。当たり前のことですが、広告は適切な広告面に正しく配信されなければいけません。そのためにも、不当請求や正しい効果が測れないことにつながるアドフラウドへの対策が本格的に求められてきていると思います。

MZ:アドフラウド対策をしているメディアやアドネットワークであるかどうかが、出稿先として選ばれる基準になってきているとも考えられますね。

巧妙化するアドフラウド。どうやって対策していく?

MZ:では、アイモバイルのアドフラウド対策について教えてください。

甲斐:アドフラウドやブランドセーフティの対策は、技術や営業、審査担当を含めた20名規模の体制で行っています。パートナーメディアのコンテンツを弊社基準で審査するだけでなく、外部機関によるパトロールも実施しておりブランドセーフティにつながる安全性の確保に努めています。

 またアイモバイルのアドネットワークは、インプレッション課金ではなくクリック課金です。そのため、表示されていない広告に対しての不当請求はございません。当然ですが、請求の発生するクリックに関しても自社独自基準でのアドフラウド対策を行っておりましたが、更にPhybbitさんのSpiderAFを導入し、機械(bot)によるクリックの水増しなどに対する対策を強化しています。

MZ:SpiderAFとはどのようなツールなのでしょうか。

大月:AIを活用した、アドフラウド検出ツールです。掲載された広告のデータをもとに、配信先のメディアをパトロールし、コンテンツモニタリングを行います。html情報やアクセスしたサーバー、ドメイン情報、端末・IPなどを分析してスコアリングをし、検出した現象がアドフラウドであるかを判断しています。

 SpiderAFの大きな特徴は、AIを使っていることです。巧妙化しているアドフラウドの情報を蓄積していくことで、エンジンが自ら学習をしていきます。

MZ:アドフラウドの巧妙化は進んでいるのでしょうか。

大月:先ほど説明をしましたスプーフィングの巧妙化はものすごく進んでいると思います。また悪質なbotの動きも複雑になってきています。たとえばアプリのインストール後、起動をすることで成果報酬をカウントする広告がありますよね。これに対し、広告のクリックからアプリのインストール、そして起動までbotが行っているというケースがありました。

 SpiderAFは、広告配信のデータ解析と得たデータをもとにアドフラウドのクラスタリング解析をしています。検出したアドフラウドが新しいものか既存のものかを判断し、学習していくことでエンジンの精度が上がっていきます。

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SpiderAFの導入で、作業の効率化・不正検知精度がアップ

MZ:少なくとも、人が目視では確認できない、予測ができないアドフラウドがある。それに対して、データ分析やAIを使うことで対応しているということですね。SpiderAFを導入したことで何が改善されましたか。

甲斐:まず、技術サイドの作業コストが下がり効率化ができました。アイモバイルは、フィーチャーフォン向けのアドネットワークを立ち上げた頃から、アドフラウドの対策を行っていますので知見があります。

 しかし以前よりも弊社提携メディア数が大きく増加したことや、アドフラウドのパターン増加や巧妙化により、社内のみのチェック体制では作業コストがかさんでいたのです。SpiderAFを導入することで、パートナーメディア内における不正の検知やパトロールがすべてシステマティックにできるようになりました。

 また社内の人的リソースのみに頼りますと、知識や経験の差で属人的な対応になってしまいます。そこをPhybbitさんと協力することで、SpiderAFを通じた作業フローを作ることができ、更に強固なアドフラウド対策ができるようになっています。

人の対応とSpiderAFの協力体制が、確実なアドフラウド対策へつながる

MZ:であれば、SpiderAFのみでもアドフラウド対策ができるということでしょうか。

大月:それには、人と機械の協力体制が求められます。SpiderAFではディープラーニングを用いてアドフラウドかどうかのスコアリングを行っていますが、機械でも気づけない新しいタイプのアドフラウドというものは存在します。そこは人が要素を判定することで、エンジンの精度を更に上げていくのです。

 またエンジンのブラッシュアップに、人によるフィードバックは非常に大切です。アイモバイルさんは、機械に任せられるところは任せ、人が関わるべきところは関わるという姿勢で取り組んでいらっしゃいます。

甲斐:両社で協力体制がとれていることが強みですね。弊社からスコアリングの設定や仕様の変更をお願いすることは多いのですが、すぐにご対応いただいています。SpiderAFのダッシュボードやレポートも見やすく、サポート体制が充実しているのもありがたいですね。

アドフラウド対策を、マーケティング業界全体で考えていきたい

MZ:では最後に、今後の展望についてお聞かせください。

大月:メディアさまのほかにも、CPIをKPIとする広告主さまからのお問い合わせが増えてまいりました。SpiderAFでは、自社の広告が正しく配信されているかについて、どのネットワークに対してもトラッキングすることが可能です。

 メディアさまと広告主さまで必要なデータ、お持ちの情報は違います。そのデータカスタマイズもお受けしていますし、お客さまと一所に進化させていけるのがSpiderAFです。アイモバイルさんをはじめ、業界全体のサポートができるように力を入れていきたいと思います。

甲斐:アドネットワークとして正しい広告効果を評価いただくためには、アドフラウドの対策、不正利用の防止が不可欠です。広告主さま、メディア・媒体運営者さまにとって公平で安心してご利用いただける環境構築を最重要ミッションとして取り組んでまいります。

 業界として、アドネットワークの品質向上や誤クリックを誘発するような広告掲載の規制も含め、これまで以上に広告の健全化について考えていく時期にきたのではないかなと考えています。まずは情報共有からでも、他社さまと連動して取り組んでいきたいと思います。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/09/25 10:00 https://markezine.jp/article/detail/27048