授業形式で「今、やるべきこと」を理解する
まずご紹介するのは、グロービス経営大学院准教授の武井涼子氏が執筆した、『ここからはじめる実践マーケティング入門』です。
同書籍は、授業形式でマーケティングプランの設計、リサーチ、ブランディング、CRM、デジタルマーケティングの内容を解説するものになっています。各章を「○時間目」と記載しているのですが、まるで授業を受けているのに近い感覚で読み進めることができます。
例えば、3C分析やSTPを実際に行ってみる演習のコーナーがあり、その演習の解説も良く出そうな回答に対する答えを生徒が返している場面が描かれています。まるで自分以外にも生徒がいて、授業が進んでいくように話が進むので、比較的読みやすいかと思います。
また、「調査票を設計する際の5つのチェックポイント」や「ブランドの良いネーミング8つのポイント」「良いロゴ4つのポイント」といった今すぐに確認、活用できる内容が多く含まれています。マーケティングの実務に携わったばかりの方、またマーケティングを改めて勉強するという方におすすめです。
デジタルマーケティングの定義を再考するきっかけをくれる1冊
続いて紹介するのは、『デジタルマーケティングの教科書』です。同書はフィリップ・コトラーによって提唱されてきた、またMBAの講義で取り扱われてきたような従来型のマーケティングが、デジタル化によってどう進化するかが解説されています。
同書を読んでまず感じたのは、著者の牧田幸裕氏がデジタルマーケティングを現在の状況に合わせてきちんと再定義している点です。牧田氏は下記のように定義しています。
デジタルマーケティングとは、データドリブンでターゲット消費者へ製品やサービスを認知させ、消費者の購買前行動データに基づいて興味・関心・欲求を醸成し、購買データを取得する。購買データと購買後の消費者の評価データをもとに製品開発、サービス開発への示唆を得る。これらのデータを、ECチャネルとリアル店舗から取得し、同時に消費者に最適な購買体験を提供する、一連の活動をいう。これらの活動の目標は、消費者との関係性を深め、最終的に消費者のエージェント(代理人)になることである。
上記は長いですが、これまで様々な形で定義されてきたものに足りなかった点を埋め合わせています。「デジタルマーケティングとはなんですか?」と聞かれたときに、読者の皆さまも様々な定義を持っているかと思いますが、そのどれにも当てはまるのではないでしょうか。この定義が正しい、すべてというわけではありませんが、本書での再定義の仕方はマーケティングの今を捉えています。
また、第4章では広告代理店や外資系コンサルティング企業などマーケティングに関わるキープレイヤーの変遷、第5章ではデジタルマーケティングの浸透によって変わる組織など、マーケティングが進化することで、周辺がどのように変化しているのかも理解できます。そのため先ほど紹介した書籍より、マーケティングについて知る、理解するという側面が強い書籍となっています。
デジタルマーケティングとは何か改めて考えたいという方は読むことで気づきが得られるのではないでしょうか。
また、今回ご紹介した両書籍ともに、これまでずっと言われてきた従来のフレームワークや手法を重要視し、現在求められる手法に昇華して解説しています。最新のテクノロジーや手法に目が行ってしまいがち、という方もぜひ読んでみてはいかがでしょうか。