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今話題のラックス新商品「ボタニフィーク」がTwitterでとったチャットボット施策とは?

 今の時代、企業目線の一方的な情報を提供するだけでは商品やサービスを選んでもらえない。そう考えるマーケターも少なくないだろう。ユニリーバから発売された新製品「ラックス プレミアム ボタニフィーク」では、自然な情報伝達と拡散による製品認知度の向上を意識したTwitter施策によって、開始から1ヶ月で10万件以上のキャンペーン参加数、約200万のポテンシャルインプレッションを獲得した。具体的にどのようなことをしたのだろうか?

開始1ヶ月で10万以上の参加数を獲得し、多くの会話を生んだキャンペーンの仕組みは?

 2017年8月にユニリーバから発売されたヘアケア製品「ラックス プレミアム ボタニフィーク」。発売されて間もないこの商品が、Twitter上で多くの会話を生み、話題となっている。

 その仕掛けは、Twitterの新しい広告フォーマットであるダイレクトメッセージカードと、DM APIを活用したチャットボットを組み合わせた『あなたの心の「ピュア」度は何%?』診断だ。

 「Q1:あなたは何かを探しています。それはなんでしょう?」から始まり、4つの質問に答えていくことで、心のピュア度を測りながら、自然な形で製品の特徴を理解することができるというものだ。

 「ダイレクトメッセージカード」は、Twitter利用者をタイムラインから、ダイレクトメッセージへ誘導するのに活用できる新しい広告フォーマット。ツイート内に画像や動画とともに複数のボタンが設置されており、いずれかの選択肢をタップするとダイレクトメッセージへ移動し、チャットボットが起動される仕組みになっている。今回のキャンペーンでは、この機能を活かし、診断テスト形式のコミュニケーションを行った。普通の診断テストであれば、次々に設問が表示されるだけだが、このキャンペーンではチャットボットを使い、画面上で会話しているようなイメージでテストが進む。

 結果、チャットボットとのやりとりと診断結果を通じて、利用者に、楽しみながら製品の特徴訴求と理解を促すことを可能にした。

 現在(2017年10月時点)、診断テストに参加したTwitter利用者の9割が診断を最後まで実施し、診断の結果をタイムライン上にツイートした割合は20%と非常に高く、約200万のポテンシャルインプレッション(Source: Crimson Hexagon)を獲得。多くのTwitter利用者の間で話題が広がり、高い効果が得られている。

 この取り組みの概要と成果について、ユニリーバ・ジャパン ブランドマネージャー 渋佐奈甫美氏、アサツーディ・ケイ プランナー 長谷川慧氏、アカウント・エグゼクティブ 進藤祥太氏に詳しい話を伺った。

一方的でない自然な情報拡散を考えるとTwitterだった

 ――この取り組みが生まれた経緯を教えてください。

渋佐:今回発売された「ラックス プレミアム ボタニフィーク」はオーガニック植物由来の高品質のヘアケア製品で、その名のとおりボタニカル商品の最高峰として、100%ピュアなアンデスローズヒップオイルを配合しています。

ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社 マーケティング ホーム&パーソナル ケア ラックス スキン&ヘア ブランドマネジャー渋佐奈甫美氏
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社 マーケティング ホーム&パーソナル ケア
ラックス スキン&ヘア ブランドマネジャー 渋佐奈甫美氏

 昨今、髪に優しいボタニカルのヘアケア商品が爆発的に普及しています。一方で、髪がきしむなどの理由で、購入したものの離脱している層も一定数存在します。そこでヘアケア分野で豊富な実績を持つラックスだからこそ提供可能な、“洗い上がりに納得できる高品質な商品”である優位性を効果的に訴求したいと考えました。

 単にブランドの広告としてメッセージを伝えるのではなく、自然な拡散で製品の特長を伝えたいとも考えており、そこに合致したのがTwitterでした。

10万以上の参加、9割が最後まで診断

 ――この企画のアイデアはいつごろ生まれたのですか。

長谷川:「Twitterを活用しよう」という構想を練ったのは6月です。元々私はメディアプランナーとしてプロモーションのプランニングをしているのですが、今回の企画では、アイデア出しから全体企画のご提案を行いました。まず、6月中に企画概要をTwitter社と詰め、7月に入ってから渋佐様に具体的な提案をさせていただき、8月中旬にコンテンツを入稿し、8月31日からキャンペーンをスタートしました。

株式会社アサツーディ・ケイ コミュニケーションチャネルプランニング本部 コミュニケーションチャネルプランニング局 第1グループ プランナー 長谷川慧氏
株式会社アサツーディ・ケイ コミュニケーションチャネルプランニング本部 コミュニケーションチャネルプランニング局 第1グループ プランナー 長谷川慧氏

 ――今回の施策の具体的な成果について教えてください。

長谷川:まず、キャンペーン開始後すぐ、Twitter利用者の方々の反応から手応えを感じました。そして、開始1ヶ月で10万件以上の診断コンテンツへの参加があったのですが、そのうち9割が最後まで診断を受け、診断の結果だけでなく診断をする過程も楽しんでくれたことがわかっています。

 加えて、キャンペーン参加者の方々がツイートしてくれたポテンシャルインプレッションは、累計約200万もの数になりました。これは他のキャンペーンと比べると、桁違いの数字です。また、今回のキャンペーンは、ボタニフィークの現品プレゼントキャンペーンも兼ねていたのですが、キャンペーンに当選された方々が「プレゼントが届いたよ」という写真付きツイートをしてくれたことも大きな成果だったと感じています。

チャットボットで双方向コミュニケーション

 ――キャンペーンの目的について、もう少し詳しくお伺いします。先ほど、「ブランドの広告としてメッセージを伝えるのではなく、自然な形で製品の特徴が拡散するような仕組みを目指した」という話がありましたが、その理由を教えてください。

渋佐:今回の商品は、ナチュラルなボタニカル製品の中でも、とりわけ品質にこだわったプレミアムランクの商品です。ですが、高品質さをCMで直球に伝えるだけでは、消費者の方の信頼は得られにくいと感じていました。特に本製品のターゲットは一方的な企業目線の情報をそのまま受け入れにくいことがあるようです。

 今回の取り組みにおいてはTwitterのチャットボットを使うことで、一方通行のコミュニケーションにならず、消費者の心理的なハードルを下げられたと考えています。

 また、高価格帯の商品を購入する際、知人の口コミが大きく影響します。そのため、診断のおもしろさが拡散する中で、知人の声を通じて高品質さを訴求できたらいいと考えました。

 ――商品の価格帯やコンセプトを考えると、メインターゲットは20代後半〜30代が中心になると思いますが、なぜ今回Twitterを採用したのでしょうか。

渋佐:確かにTwitterは、10代の利用者への影響力が強いイメージがありますが、実際には、元々の利用者の母数が4,500万MAUと非常に大きいため、ターゲット層に十分リーチできると考えました。また、ネットで話題になるニュースを見ると、Twitterから始まるケースがとても多い点も大きな理由です。

「ブランド」と「おもしろさや自虐ネタ」は両立できるのか?

 ――今回のTwitter活用は従来に比べ、どこが違うのでしょうか?

長谷川:Twitterの特徴として、「とにかく周囲に広めたい」と思ったことをツイートされる点があります。今回はその要素を取り入れたため、これまでと比べると、よりTwitter文脈に沿った企画になったと感じています。

進藤:私はアサツーディ・ケイの営業という立場から今回の企画に携わりましたが、企画当初から「ブランドが、どのような形で拡散されたら良いか」「拡散されやすいコンテンツは何か」を詰めて考えていった結果、今回のような成果につながったと考えています。

株式会社アサツーディ・ケイ ADKグローバル東京 アカウント・エグゼクティブ 進藤祥太氏
株式会社アサツーディ・ケイ ADKグローバル東京 アカウント・エグゼクティブ 進藤祥太氏

 広告の場合はどうしても「企業側が消費者の言葉を使い、メッセージを流す」というコンテンツになりがちですが、今回はむしろ「Twitter上で30代の女性が使っている言葉」という観点でコンテンツを立案しました。そこがうまく機能し、広告っぽくないけれど、いいたいことは伝わっている、という内容になったと思います。

渋佐:オーガニックな拡散が目的だったので、今話に出たように「広めたい」という気持ちに添う企画作りをしました。その一方で、広めたいと思わせる「おもしろさ」をブランドとしてどう表現できるか、ギリギリのところまで悩んだことも事実です。

 ――プレミアムなブランドとして、その判断は難しいところですよね。判断ラインは、どこにあったのでしょうか。

渋佐:ブランドのテレビCMの素材を活用することで、ビジュアル面の品質を担保しました。表現では「遊んだとしても、ただ一つ“100%ピュアはボタニフィーク”が残る仕組みに残す」ということを意識しました。

 こちらの狙いとしては、第一に「100%アンデス産オイル配合の高品質なシャンプー」というメッセージを外してはならない、ということを意識していたので、そこはきっちり詰めていきました。チーム全体で、当初からその目的を共有していたので、言葉や表現にはかなり気を遣いながら企画を練ることができ、遊びの中でも唯一残したい表現を強調できたと思います。

ハッシュタグを1つに絞った効果とは

 ――キャンペーン中、ユーザーからの反応はいかがでしたか。

進藤:チャットボットが、本当にうまくはまりました。ピュア度という少し自虐的な内容も含んだネタを提供することで、まわりの友達もツッコミなどの反応をしやすくなります。

 また、ハッシュタグの効果的な使い方についても意識しました。ハッシュタグは検索に使う用途と、言葉を拡散するための用途の2つの使い方がありますが、今回は後者の用途で使用することにしました。しかしTwitterの文字制限があるので、ハッシュタグを多くしすぎると、診断結果まで表示できません。いろいろ考えた結果、ハッシュタグは商品名の「#ボタニフィーク」に絞ることにしました。

渋佐:結果、これがうまく機能しました。一般の方も含め、製品に関するツイートに付くハッシュタグは「#ボタニフィーク」で統一され、認知度向上に大きく貢献しました。結果的に製品名で検索すると、診断テストの結果と共に商品の情報も出てくる、という情報ソースの一元化にもつながりました。

 ――診断系のコンテンツは、ブランドのメッセージよりも診断結果だけ拡散する可能性もありますよね?

渋佐:実はキャンペーンを始める前、最も懸念していたのがその点です。面白い診断を提供したいわけではありませんから。今回は「私のピュア度10%、でもこのシャンプーは100%アンデス産ピュアオイル配合(笑)」といったように、診断結果と私達のメッセージがうまく馴染んだと思っています。

会話から拡散までがシームレスにつながった好例

 ――今回のキャンペーンをどのように評価していますか?

渋佐:設定していた目標は2つあります。まず、「あまりリーチできなかった層にリーチしたい」ということでしたが、それはTwitterの広告でのリーチとコンテンツの拡散に加え、Twitter利用者同士の会話から生まれた約200万のポテンシャルインプレッションという形で達成しました。

 もう1つ、「高品質さの信頼度を持った訴求」についてですが、これについては、チャットボットのデータ分析で興味深いデータが出てきています。製品のことを知ったユーザーの行動を見ると「価格」をクリックするケースが多いことがわかったんです。

診断以外のメニューの行動もデータとしてチェックすることができる
診断以外のメニューの行動もデータとして蓄積することができる

 これは製品を知り、その品質を評価していただいたからこそ、購入意思をもって価格をチェックしたと考えられるので、さらに分析は必要ですが「達成できていないとはいえない」というところだと思っています。

 もう一歩踏み込んで、たとえばチャットボットとのやりとりを通じてECへ誘導するという形にできていれば、さらに別の成果も出ていたかもしれませんね。

 ――お話を聞いていて、今回の取り組みはTwitterのダイレクトメッセージカードを利用し、会話から情報拡散までがシームレスにつながったという新しさがポイントだと感じました。大きなブランドながら、こういった新しいことに挑戦できることは素晴らしいと思います。今回はありがとうございました。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/11/29 11:00 https://markezine.jp/article/detail/27267