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イベントレポート

少子高齢化も追い風!?Omiai、with、Poiboyら恋の嵐起こすマッチングアプリのグロース戦略


退会アンケートのフリーアンサー分析から生まれた「休憩モード」

 次に石毛氏が語ったのは、「with」の改善において、限られたリソースを有効に活用するためにファネル分析で改善箇所を見つけていったプロセスだ。「Facebookログイン」「チュートリアル突破」「プロフィール入力」「いいね!送信」「マッチング」「課金」と進むファネルの流れのもと、母数が多い前半から順に改善していくよう努めたという。

 ログインからチュートリアル突破にかけては、特段問題はなかった。メンタリストDaiGo氏が監修しているという信頼感があるのと、チュートリアルで行う「診断」の結果に関心があるため、離脱するユーザーは少なかったのだ。

 むしろ、男女ともに「いいね」をあまり送信してくれない状況を打破することが重要だと考えられたので、「イベント」の開催を強化することにした。

 イベントの開催中は、「相手がデートに遅れてきたらどうする?」といったお題を出して、選択肢を選んでもらう。男性にはイベント中は無料で一定回数「いいね」できる権利が魅力的だし、女性は「診断」コンテンツが好きなので、「いいね」の総数が増加する。特に女性は、「この男性は◯◯なところで私と性格が似ている」という理由(口実)があると、「いいね」をしやすくなるという。

 次に、サービスの課題を発見するために、定量的な思考と定性的な思考の両方をバランスよく組み合わせることが大事だと石毛氏は続けた。

 「with」の開発陣はデータアナリストが企画に深く関わるチーム体制となっており、定量的思考によって施策の精度を維持できているが、定性的な要素によって尖った企画を打ち出すことも重視している。たとえば、退会アンケートやNPS(ネットプロモータースコア)アンケートの活用は有効で、CS(顧客満足)チームとの連携を強めているという。

 退会アンケートからは、女性退会率が改善せず横ばいだというかねてからの課題を解決するヒントが得られた。退会アンケートをみると、「タイプの男性がいない」などといった選択肢はあまり選ばれず、フリーアンサーが書き込める「その他」が多く選ばれていた。テキストを読み込むと、「婚活疲れ」を伺わせる内容が多いことに気づいたという。

 そこで開発チームは「すでに婚活疲れしている人に対して、ひたすらサービスを使ってもらうための施策を打ち続けるのは正しいのか?」と自問し、「休憩モード」を実装した。このモードを選択すると、異性には自分のプロフィールが表示されなくなり、継続的に様々な異性とやりとりをすることから解放される一方で、データは温存しておける。

 「休憩モード」の導入によって、女性で14.2%、男性で10.7%も退会率が改善したという。休憩モードを解除してもらえるかは課題として残っており、今後施策を練っていきたいと石毛氏は明かした。

 石毛氏は、サービスの成長を支えているのは、アプリや広告の「誠実なクリエイティブ」ではないかと考えている。誠実にユーザーに接するからこそ、アンケートなどでまじめな回答が返ってきて、改善につながるのだという。

KPIツリーとユーザーステップを活用しよう

 最後に登壇したのは、Reproの佐々木翼氏だ。テーマはマッチングアプリのデータ設計やイベントトラッキングについて。イベントトラッキングとはアプリの改善を目的としたユーザー行動の計測である。たとえば「ページ閲覧」「スクロール」「クリック」「ユーザー登録」「動画を◯◯%観た」などといった行動の計測が可能だ。

Repro株式会社 カスタマーグロースチームチームマネージャー 佐々木翼氏
Repro株式会社 カスタマーグロースチームチームマネージャー 佐々木翼氏

 アプリに対する可処分時間は増えているものの、日本人の1日あたりの平均アプリ利用数は6というデータもあり、アプリ間の競争は依然として厳しい。頭一つ抜けるために重要なのはアプリの改善を見据えたイベントトラッキングだという。

日本の1日あたり平均アプリ利用数は6と海外に比べても少ない
日本の1日あたり平均アプリ利用数は6と海外に比べても少ない

 有効なトラッキングとは「分析改善に使えるトラッキング」「セグメンテーションに使えるトラッキング」だ。分析改善に使うという観点では、トラッキングすることで何らかの打ち手につながるイベントを特定することが大事で、セグメントの観点では、過度なセグメントにならないよう粒度を意識することと、セグメントを切ることでKPIに影響が生じるようにすることがポイントだという。

 どんなイベントをトラッキングすべきかを知るためには、マーケティングの全体像をおさえることが必要だという。そのための具体的な手法が、KPIツリーであり、カスタマージャーニーだという。

 KPIツリーの例を挙げると、アプリのKGIが売上だとしたら、売上をMAUやWAUといった一定期間あたりのアクティブユーザー数と、ARPU(Average Revenue Per User、1ユーザーあたりの平均収益)の掛け合わせとして分解する。

 ARPUはPUR(Paid User Rate、課金ユーザー率)とARPPU(Average Revenue Per Paid User、課金している1ユーザーひとりあたりの平均収益)にさらに分解されるといった具合だ。

KPIツリーについてはReproのブログに詳細な説明があるのでそちらも参照されたい
KPIツリーについてはReproのブログに詳細な説明があるのでそちらも参照されたい

 続いてカスタマージャーニーだが、これは作るのが難しい。情報をしぼって考えるのが成功の早道だという。そこでReproとしておすすめするのが、カスタマージャーニーをアプリ中心に描く「ユーザーステップ」という手法だ。

 このKPIツリーとユーザーステップをすり合わせることで、改善点を明確にして施策の実行につなげることが重要だ。最後に佐々木氏は、こうした分析の根幹がイベント設計にあると説明し、「毎月20件アプリのイベント設計を行っておりノウハウがあるので、アプリで計測すべきイベントの設計に困っているデベロッパーはぜひ相談してほしい」と来場者に呼びかけた。

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この記事の著者

江川 守彦(編集部)(エガワ モリヒコ)

東京大学文学部を卒業後、総合広告代理店でマスメディアの媒体営業業務を経験し、出版社に転じて人文系の書籍編集に従事したのち、MarkeZine編集部に参画。2018年よりオーガナイザーとしてMarkeZine Dayの企画にも携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/11/06 11:08 https://markezine.jp/article/detail/27358

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