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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2017 Autumn

デジタル広告市場の健全発展に向けて、今改めて考えるアドベリフィケーションが担う役割とは

ブランドと販促、広告に求めるものの違い

IBM山口:弊社ではコーポレートブランドのブランドリフトなどを目的にしたキャンペーンも実施しています。デジタルを使ったときには、コンバージョンも見ていますが、それよりも全体としてブランドリフトが起こったかどうかを重視しています。

 ブランドマーケターとしては、せっかく出している広告がそもそも見られてないということ自体が許せないわけですよ。一生懸命に作ったクリエイティブをお客様に届けたいと思ってメディアに載せているのに、実は見られていない。ブランドマーケターとしては残念でなりません。

 一方で、もちろんパフォーマンスマーケティング、いわゆる販促のKPIも見ているのですが、やはりマーケティング部門の中でもブランド広告チームの意識と、販促チームの意識は異なることも事実だと思います。

押久保:代理店の立場から見て、ブランドチームと販促チームの意識のギャップをどうお考えですか? デジタル広告の発展においては、問題になるかと思うのですが。

富田:ご担当者様によって、広告主様の部門によって、持たれている広告出稿に対するKPIが違います。電通も電通デジタルも、ブランド担当者に接触するケースもあれば、販促担当者に接触してソリューションを提供するケースもあります。お客様の社内で何が正しいのかについては、部門によって分かれているというのが現状です。

 私たちの務めは、広告によって、お客様の売上を向上させるために最大限の尽力をすることですが、クリックを起点としたPDCAだけでは、相反する方向に向かっているケースもあると、ソリューションを提供している側からも感じることはあります。

押久保:山口さん、ベンダーの立場ではいかがですか?

IAS山口:衝撃的だったエピソードがあります。元々デジタルではなくてマーケティング全体を見られている方が、「CPCなどのデータはもらうけれど、売上があがっていないような気がするから、デジタルはやめようと思っています」と仰っていたのです。

 CPCを見る方もブランディングを見る方もどちらも、何を見ていればいいのか? というところがあって、販促担当者で「CPCは正しい指標なのか」という疑問を持たれている方はたくさんいらっしゃいます。何を次の指標にすべきなのか? KPIにするべきなのか? という課題があると思っています。

クリック基点=ネット人口10%への最適化

押久保:では、改善に向けてどんなアクションをすればいいのでしょうか?

富田: 弊社では「People Driven Marketing(ピープルドリブンマーケティング)」というフレームワークを打ち出しています(同フレームワークはこちらの記事参照)。先ほど、IASの山口さんから「クリックだけを基点にして広告を回すともったいない」というお話がありました。そこを表している調査の一つかと思います。

 2009年にコムスコアから出された「ナチュラルボーンクリッカーズ」という調査によれば、「ある1ヶ月間において、ネットの広告をクリックした人は、ネット人口の10%にすぎない」そうです。

 つまり、クリックを基点として最適化しても、10%の中でしか最適化できていないわけです。クリックしていない90%に対してどうアプローチしていくべきなのかをしっかりと考えなければネット広告の広がりはないと思います。

押久保:デジタル広告の場合、クリック基点で見るのが常識でしたが、「その常識を疑ってみましょう」というところですよね。IBMの山口さんはいかがですか?

IBM山口:様々な手法があってもいいと思います。ただ企業のマーケターとして考えたときに重要なのは、セールスじゃなくてマーケティングをやっている意味は何か? ということ。

 既に存在するお客様ではなくて、新しい潜在顧客を見つけて、ビジネスにするのがマーケターの仕事です。そのためにブランディング的な活動もするし、販促的な活動もします。ただ、その中でターゲットにしているお客様、我々のサービスやソリューションなどを購入されるだろう方が本当に10%だけなのかといったら、絶対に違うと思います。

 そういう人たちに正しく広告メッセージをお渡しする、伝えるということを考えたときに、それは問題だと思います。今問題にしているアドフラウドとか、そもそも見られていないとか、意図してないようなアダルトサイトやヘイトスピーチのサイトに掲載されているとか。ブランドをネガティブにしているわけです。正しくマーケティング活動をしたいと思っているのに、そんな状態であるということは問題だと改めて感じますね。

押久保:IASの山口さんはいかがですか?

IAS山口:広告の本来のパフォーマンスを考えると、たとえばポジティブな面でのビューアビリティの使い方は、見えていないところをできるだけ少なくしていくというものだと思うんです。さらに、ユーザーがどれくらい見ていたのか、何回見ていたのかという数字を加味することによって、今後配信すべきユーザーかそうでないかがわかるはずです。リーチをどんどん広げていく配信を効率化していくという意味でも、そういったデータの使い方はあると思います。

 また、CPCを重視したキャンペーンの結果は、不正インプレッションが増える例が多く存在しているので、そういった“偽物”がどこなのかがわかるだけでも大きい。そういった意味で、一度計測をしていただくことが必要かと思っています。

次のページ
業界全体の問題にどう対応していくか

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この記事の著者

元永 知宏(モトナガ トモヒロ)

1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。『本田宗一郎 夢語録』、『羽生結弦語録』(ぴあ)などを編集。2016年10月に『期待はずれのドラフト1位』(岩波ジュニア新書)を上梓した。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/11/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/27420

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